2020年4月23日木曜日

メルケル独首相の国民への訴え

 メルケル独首相が、318日にコロナウイルス対策について、国民に訴えた演説の中心点をご紹介します。ドイツ在住の林美佳子さんが翻訳しネット上で公開したものです。
「親愛なるドイツにお住いの皆様
コロナウイルスは現在わが国の生活を劇的に変化させています。私たちが考える日常や公的生活、社会的な付き合い―こうしたものすべてがかつてないほど試されています。
何百万人という方々が出勤できず、子どもたちは学校あるいはまた保育所に行けず、劇場や映画館やお店は閉まっています。
そして何よりも困難なことはおそらく、いつもなら当たり前の触れ合いがなくなっているということでしょう。もちろんこのような状況で私たちはみな、これからどうなるのか疑問や心配事でいっぱいです。
私は今日このような通常とは違った(TV演説という)方法で皆様に話しかけています。
それは、この状況で連邦首相としての私を、そして連邦政府の同僚たちを何が導いているのかを皆様にお伝えしたいからです。
開かれた民主主義に必要なことは、私たちが政治的決断を透明にし、説明すること、私たちの行動の根拠をできる限り示して、それを伝達することで、理解を得られるようにすることです。
もし、ドイツにお住まいの皆さんがこの課題を自分の課題として理解すれば、私たちはこれを乗り越えられると固く信じています。このため次のことを言わせてください。
事態は深刻です。
あなたも真剣に考えてください。
東西ドイツ統一以来、いいえ、第二次世界大戦以来、これほど市民による一致団結した行動が重要になるような事態がわが国に降りかかってきたことはありませんでした。
私はここで、現在のエピデミック(伝染病)の状況、連邦政府および各省庁がわが国のすべての人を守り、経済的、社会的、文化的な損害を押さえるための様々な措置を説明したいと思います。しかし、私は、あなたがた一人一人が必要とされている理由と、一人一人がどのような貢献をできるかについてもお伝えしたいと思います。・・・・・・(以下略)」。

新型コロナウイルス感染症にかかわる対策と人権規制をどう考えるべきか
        2020324日 東京革新懇代表世話人会 
 1ヶ月前に東京革新懇が出しました新型コロナウイルス感染に関する提言をご紹介します。

Ⅰ、大規模感染とたたかう基本的原則は、科学、人権と民主主義
 結核・ペスト・インフルエンザ等の感染症は、人類の歴史に大きな影響をもたらしてきた。今回の新型コロナウイルス感染症への対応は、人類社会として科学的、民主的にこれをどう克服するかということが問われる問題である。
安倍首相は、この間の対応―イベント自粛や学校の全国一斉休校の要請、隣国からの入国制限など―を「政治決断」として独断で出してきているが、科学的知見を踏まえず、法的な権限もあいまいなものであった。その中で、新型インフルエンザ等対策特別措置法の改定により「緊急事態宣言」を出せるように法的整備を行った。首相が「緊急事態宣言」を出せば、国民の基本的人権を広く制約することが可能となる重大な内容を持つが、発令要件が曖昧であり、専門家からの意見聴取も義務づけられていず、国会の承認も必要としていない。
国際的に多くの国で、緊急事態、非常事態が宣言され、私権が著しく制限される状況が生まれている一方、それらの多くの国で所得補償など人権擁護のための救済措置が取られている。
 私たちは、混乱に乗じて強権的な支配を強める安倍政権の問題を指摘しつつ、新コロナウイルス感染症に対する当面するいくつかの課題について考え方を明らかにしたい。それぞれの組織、現場での議論をお願いしたい。

Ⅱ、各課題における考え方
1、科学的知見に立脚した医療対策
徹底して科学的知見に立脚して医療対策を講じることが求められる。
    第一は感染者の早期発見である。感染検査を積極的に行う方針を明確にし、必要な体勢を早急に強化することが求められる。「医療体制の崩壊」を口実に検査を抑制する日本政府の対応は、感染の実態をつかめないまま感染拡大をまねき、また、感染対応の長期化をもたらす恐れがある。
    大胆で緊急な医療体制の強化が求められる。感染者に対する医療を安全に行うために、必要な医療機材の供給を強めること。重症者を受け入れるための入院ベットの確保と患者受け入れの準備を公立・公的病院を中心に強化すること。医療機関内での集団感染も起こり得ることも想定しての援助体制を確立するなどである。
    感染状況、感染時の対応、感染防御について、情報公開を徹底することにより、国民の間に信頼と安心感を形成する。
2、経済・くらし対策
201910月の消費税増税で1012月のGDP7.1%ダウンし日本経済に大ダメージを与えたところにコロナウイルス感染による経済の急激な縮小が加わり、経済・くらしは極めて深刻な事態に至っている。国民生活を守るために緊急の予算に裏付けされた大規模な「徳政」的対策の実施が求められる。
    消費税の0%ないし5%への減税。税、社会保険料、公共料金の猶予。
    債務の支払い猶予。無利子無担保の融資の実施。
    収入を失った人への所得保障。低所得者への現金支給。
    企業による解雇・リストラ・内定取り消、賃金切り下げを禁止する。それにともなう企業への支援措置。

3、社会的規制にかかわって
緊急事態等の社会的規制については、トップダウンの一方的強権的規制ではなく、緊急であっても議論を踏まえた民主的規制でなければならない。
    国による社会的な規制においては、必ず国会・野党、専門家の意見を聞いて行う。自治体の規制においても、議会・野党、専門家の意見を聞いて行う。
    可能な限り、国民・住民の意見を聞く。
    最大限、自治体・現場の自主性を尊重する。
    規制は必要最小限のものにする。
4、学校について
    学校の一律休校はやめ、自治体、学校の自主性に委ねる。
    学校の再開にあたっては安全対策を強め、医療関係者との連携態勢をつくる。
    休校期間中の学習回復、新年度の教育計画については、無理のないものとし、学校の弾力的な運用を尊重する。
5、文化対策等について
政府のイベント等の自粛要請により、イベント、集会、演奏・演劇等のほとんどが中止・延期となり、個人や零細経営のところが圧倒的であり、経営・くらしが危機的な状況となっている。
    興行の中止による芸術家・事業主の損害を全面的に補償する。
    被害を受けた文化団体への助成措置や減税措置を講ずる。文化庁予算を大きく拡充する。
    集会等の中止・延期の場合、支出済みの費用については補償する。
6、ヘイトや差別・排除の禁止
    特定の国や人々に対する差別を許さない(さいたま市で、朝鮮学校へのマスク配布排除、後に是正)。
    感染者や感染者がいた施設への差別・排除を行わないよう行政として対応する。
7、国際関係について
    WHOの体制強化を含め、新型コロナウイルス感染症封じ込めのための国際協調を強める。
    諸国と情報を共有し、ワクチン・治療薬の開発協力を行う。発展途上国等への人的・物的支援を強める。
    入国規制については、相手国との協議を踏まえる。

、運動にかかわって
1、新型インフルエンザ等対策特別措置法にもとづく緊急事態宣言の可能性があり、警戒が必要である。また、新型コロナウイルス感染症の蔓延を口実に改憲に結びつける自民党の動きは許しがたい。萎縮することなく、憲法と民主主義を守るたたかいとその構えを維持する。
2、基本的人権と民主主義の規制が様々な内容で出てくる可能性が有るもとで、行き過ぎた規制に対しては機敏に対応し、必要な撤回・修正を求める。           以上



2020年3月30日月曜日

小池都政とはなんであったか
東京を財界戦略「Society5.0」都市へ導く
       元東京都職員労働組合委員長 氏家祥夫
 
Society5.0が実現した世界一のデジタル都市東京」「官民連携プラットホーム」「スタートアップ都市東京」「IotAIでスマート東京の実現」「デジタルガバメント」「空飛ぶ車」「chojuが世界語に」「介護離職は死語に」「合計特殊出生率2.07は先進国最高水準に」・・・これは2040年を目標にした小池知事の「夢」と外国語が氾濫する「『未来の東京』戦略ビジョン」(東京戦略ビジョン)の標題の一部です。これが住民の福祉の増進を図ることを基本とする自治体東京都の長期計画になるというのでしょうか。
小池知事は昨年暮れの1227日、「東京戦略ビジョン」を発表し、その第1年度として2020年東京都予算を決定し、都知事選挙(75日投票)に向かおうとしています。 都民受けするパフォーマンスや発言、説明のつかない政策や政治的態度の転換を繰り返してきた 37ヶ月をふり返り、小池知事が東京都政をどこに導こうとしているのかを見てみます。
※Society5.0とは 
狩猟社会(Society1.0)、農耕社会(2.0)、工業社会(3.0)、情報社会(4.0)に次ぐ徹底したデジタル技術による第5の社会と規定。

 「情報公開」「3つのシティー」を打ち出し、巧みな世論誘導で都政を運営
 小池百合子氏は、20167月、「7つのゼロ」や「12のゼロ」を掲げ、都議会自民党を仮想敵に仕立ていつわりの「反自民」で都知事に当選しました。少数与党の中で情報公開を1丁目1番地に掲げ、都民ファーストで「セーフシティー」「ダイバーシティー」「スマートシティー」を打ち出し、築地市場の移転の延期、2020オリンピックの会場と経費の見直しなどを「小池劇場」と言われる巧みな世論誘導で都政運営を進め、都民の多数の支持を獲得していきました。
加えて、保育の待機児童解消や高校授業料の実質無償化、給付型奨学金の創設などを17年度予算に組み込み、全党一致の賛成を獲得しています。しかし医療、介護、雇用、福祉・社会保障の改悪に対する姿勢は、安倍内閣に追随する政策が多く見られました。さらに初めて発表した小池「実行プラン」(1612月)では、アベノミクスを礼賛、その成長エンジンを東京がはたすとして「成長戦略」プランを発表しています。小池知事の経済成長主義は当初から貫ぬかれています。東京一局集中を推進する「東京大改造」(大規模再開発とインフラ整備、オリンピック)は国家戦略特区を使って加速していきます。大規模プロジェクトは戦後最大の規模に膨れあがっていきます。

都政を踏み台に「希望の党」を結成、国政をねらうも完全な敗北に  
 小池知事は「希望の塾」を立ち上げ、177月の都議選で、「築地は守る、豊洲を活かす」と公約し「都民ファースト」が圧勝し都議会第一党に踊りでました。しかし、都議選で多数を占めると築地の移転問題は早々に豊洲移転を決め、理由を明らかにせず、都民と市場関係者を裏切りました。また、オリンピック施設や経費の節減も元のままに終始しています。179月には衆議院選挙に向けて突然「希望の党」を立ち上げ、立候補者に「現実的な安保体制の支持」「憲法改正を支持する」との政策協定書の署名提出を求めました。
 これまで表明されなかった小池知事の政治姿勢の正体が明らかになり、文藝春秋11月号には「私は本気で政権を奪う」を掲載、小池知事の本当の政治的ねらいが都政を踏み台にして国政への進出、政権奪取の野望だったことが明らかになったのでした。
  ところが、総選挙では「50議席」しか獲得できず完敗しました。
  しかし、その後も成長戦略に基づく「東京大改造」は規模を拡大して進められています。
  東京一局集中を加速させる「都市づくりグランドデザイン」を発表、東京外かく環状道路の推進、国家戦略特区事務所を都庁内に作り、東京の景観を一変させる大規模な都市再開発プロジェクトの巨大化と拡大、安倍成長路線と一体となった金融ビジネス拠点づくりにもと日銀副総裁を招聘し「国際金融都市東京」をスタートさせています。
19年度小池実行プラン」では、4カ年総事業費67千億円の内、インフラ整備とオリンピックと防災で67.5%を占め、福祉は17%にしか過ぎません。

安倍内閣と財界の路線「Society5.0」へ舵を切る小池都政
 総選挙で敗北後「都政に専念する」と表明しますが、2019年に入ると小池都政の基本路線を修正し大転換させていきます。19年第1回定例都議会では「東京の稼ぐ力を高めるためにはビッグデータやAIなど、第4次産業革命を牽引する民間イノベーションを後押しすることが欠かせません。…新たな社会、『Society5.0』を実現致します」と施政方針で打ち出しました。この前年の1811月、中西経団連会長はこれからの財界の命運をかけた財界戦略「Society5.0 for SDGs」を発表しましたが、これを受けたものでした。「Society5.0」の遅れを小池知事は都政として取り戻し、政治家として再浮上をねらっているとみなければなりません。矢継ぎ早に「Society5.0社会実装モデルのあり方検討会」「アドバイザリー会議」などを立ち上げ、経団連、経済同友会、東京商工会議所、に加え楽天の三木谷などの新財界「新経済連盟」からのメンバーを次々と呼び込んで、極めてつけは 元ヤフー会長の宮坂学氏を副知事に登用したことです。“総経済界”が結集し都政を財界の方向に転換させ、具体化させようとしています。その結果が1227日に小池知事が発表した2040年に向けた「東京戦略ビジョン」なのです。
  この間、小池都政は待機児ゼロ(実現していない)や私立高校授業料の無償化など、小池知事の関心が高い分野や支持をつなぎ止めるための政策化は取り組んでいるものの、子どもや都民の貧困、社会的格差、孤独死・餓死、路上生活者を救済する施策はほとんど見られず、いのちを守る砦としての都立・公社病院の地方独立行政法人化を進めるなど自治体の使命を果たしていません。加えて、特定整備路線の強行、羽田空港低空飛行の推進、カジノ誘致についても「検討」するとして否定していません。関東大震災朝鮮人犠牲者追悼の辞を拒否、CV-22オスプレイの横田基地への配備に中止を求めず、平和と憲法に背を向けています。

 「東京戦略ビジョン」の描く「スマート都市東京」は都民をどこへ導くか
 「東京戦略ビジョン」は、①2040年代の東京ビジョン、②2030年の戦略、③推進プロジェクトの3部構成になっています。その「目指す未来の姿」では、地上や地下だけでなく空飛ぶ車の空中利用、ロボットやAIの活用でテレワーク・副業・復業・フリーランスの働き方が広く浸透し、「超超高齢社会を迎える東京が介護ロボットを実装することにより世界のモデルになる、気候変動には新技術の開発が地球規模の課題の解決につながる、先端技術の組み合わせでイノベーションが生まれ世界をリードする東京を実現することが可能に……2040年代は人が輝き、楽しい東京、美しい東京、のバラ色の東京が描かれています。
  その基本戦略中の基本が「AIIOTその基盤となる5Gネットワークの積極的活用で都市全体がスマート化しスマート東京を実現する」ことであり、都庁は「民間企業等、多様な主体と協働して政策を推し進めるデジタルガバメントになる」というものです。 
 安倍内閣と財界のSociety5.0の戦略とは何でしょうか。経団連の方針は、この間の世界経済からの立ち後れを挽回し、日本資本主義の命運をかけた新たな成長戦略、構造改革の推進、自由で開かれた交際秩序を目指す戦略としてSociety5.0 for SDGsを打ち出したのです。
  Society5.0が目指す「スマート社会」というのは、「必要なモノ・サービスを必要な人に必要なときに提供しあらゆる人が質の高いサービスが受けられ、年齢、性別、地域、言語の違いを超えて快適に暮らすことができる社会」と宣伝されています。
 しかし、「スマート社会」は膨大な情報を収集する企業や行政組織、関連機器、ICT装置で取引するシステム構築などハードな装置と、運用ソフトがあって動くものです。 これらの装置や運用ソフトを活用する主体は、グローバルに経営する巨大IT企業や金融資本でなければ機能しないでしょう。結局これらの主体が、政府や自治体を取り込んで新たな成長・稼ぎをたたき出す社会が「スマート社会」とならざるをえません。
  小池知事は、知事就任以来、ことある毎に東京の成長戦略を強調し、東京がそのエンジンにならなければならない。「稼ぐ力」「世界一の東京」を目指してきました。その根底には、財界と同じ日本経済の危機感を共有しているからです。
「東京戦略ビジョン」には、住民のいのち・暮らし、福祉の増進という地方自治体の使命に基づく課題・長期計画は全くありません。子ども、長寿、女性の分野は課題として出されていますが、Society5.0時代を担う人材育成であり、世界語にする「Cyoju」であったり、医療や障害者は安全安心のまちづくりの中に括られ、合計特殊出生率2.072040年に達成するなどは、全く達成方針すらなく、それこそ「夢」でしかありません。
 「スマート社会」を取り上げるならば、デジタル化による雇用の喪失やデータの囲い込みによる格差の拡大、人権やプライバシーのない超監視社会の到来などにどのように対処し規制すべきか、都民の人権や雇用、格差をどう解消していくのかが東京都の本来の役割でないでしょうか。小池都政が描く東京の「未来」は、地方自治の「解体・大改造」であり、巨大企業と金融資本の下請け共同体に成りさがる道であることはまちがいありません。
  今回の都知事選挙は東京都政の曲がり角の選挙です。財界と安倍のSociety5.0の推進の都政を許すのか、市民と野党の共闘で、誰も置き去りにしない都民のための福祉と平和の都政を築くかの重要な選挙です。

2020年3月19日木曜日

3月19日 総がかり行動

議員会館前に600人、立憲野党連帯挨拶
官邸の検察人事介入糾弾!自衛隊は中東沖から撤退!特措法の緊急事態宣言使うな!安倍9条改憲発議NO!
検事長定年延長、特措法で緊急事態宣言するな、財務省職員自殺は佐川元理財局長と安倍首相の責任等々が話されました。
社民党福島瑞穂議員の連帯あいさつ
共産党藤野保史議員の連帯挨拶

立憲民主党森山浩之議員の連帯挨拶

福山真劫さんの主催者挨拶

3000万署名提出もおこなわれました。
オープニングで真実は沈まないのうた
海渡弁護士も訴え、閉会挨拶は小田川全労連議長でした。

2020年3月2日月曜日

日本経済の30年とはなんであったか
企業収益の激増と世界でも特異な経済・賃金の停滞
125日東京革新懇総会における山家悠紀夫さんの記念講演の要旨をご紹介します。
 世界と日本の30
 1990年は、世界でも日本でも画期となる境目だ。ベルリンの壁が壊れたのが1989年。ドイツが統一したのが1990年。ソ連邦が崩壊したのが1991年。中国では天安門事件が89年にあり、23年経済が混乱状態でその後高度成長を遂げた。
 90年代、社会主義経済圏が消滅し、資本主義化の道を歩み始めた。中国もどんどん資本主義的方向へ行って躍進始めた。資本主義経済という一つの体制になっていった。
経済政策で見ると、新自由主義経済政策が各国で取られた時代だ。一つの柱は政府の役割を小さくする、もう一つは規制を緩和する。昔の資本主義時代に戻った。資本主義諸国が、社会主義との闘争で勝利したと誤解した。本当に勝利したのは修正資本主義、資本主義の性格をかなり薄めた資本主義だった。まずいことをやれば革命が起こって社会主義になると資本主義を修正してきた。労働者の人権も認め、福祉的政策も取った。社会主義の脅威がなくなり、革命も起こらないから大丈夫と何でもありの経済になった。新自由主義経済が跋扈したのが90年代以降、今もそうだ。 
日本経済の30年-企業利益激増、賃金停滞
 日本は、株のバブルがはじけたのが90年、土地のバブルがはじけたのが91年。消費税がはじまるのが89年、それ以降の30年はだいたい平成の時代と重なっている。
新自由主義とは言っていないが、日本的言い方で構造改革の時代。日本経済はあまりパッとしない時代で成長率が非常に低くなっている。極端に落ち込んだリーマンショックを例外とすると、毎年の成長率は高くとも2%、時にマイナス成長という時代が続いた。失われた30年と言われる時代になっている。
その時代の特徴は、消費税が1989年の導入時の税収3兆円あまりから、2020年には21兆円になろうとしている。7倍ぐらい。税率3%から10%へ、2020年度では国税で一番多いのが消費税。歴代内閣は、消費税を上げ貧しい人からお金を取り立てて、たくさん稼いだ人、たくさん稼いだ企業に減税した不健全な財政がいまだに続いている。
 二つ目の特徴は、企業がたいへん儲かるようになった。図1は日本の企業の利益をグラフにしたもの。1990年はバブルの恩恵で年間38兆円。バブルが破裂して景気が落ち込み、リーマンショックで2009年が最近の底で年間利益は32兆円。そこから毎年増え、統計で最新の2017年は83兆円。バブル景気の90年の38兆円から83兆円に増えている。企業はたいへん儲かるようになった。
一方で賃金が上がらなくなった。図2で働いた人の平均賃金を見ると、90年は年収425万円、ピークが97年の467万円。それ以降は下降し、リーマンショックの2009年で406万円、少しずつもどしているが2017433万円、30年前からほとんど増えてない。物価上昇を考えればむしろ落ちている。 
他の先進諸国との賃金、経済成長の比較
3は、1997年を100とした主要先進国の賃金の動きをOECDがまとめたもの。日本だけが賃金水準で下がっている。他の国はみんな上がっている。
4は各国の経済成長率。日本だけほとんど停滞の経済、他の先進諸国は拡大している。消費はGDP6割近いウェートを占めている。日本の長期停滞の原因は、賃金が上がらないから物を買えず消費が増えない。賃金が停滞したことで経済も停滞した。他の国は賃金が上がってプラス成長になっている。 
景気・賃金停滞の要因-構造改革
景気の停滞の根底にあるのが構造改革政策だ。図5は、横軸は企業の利益で右に行くほど増えている。縦軸は賃金で上に行くほど上がっている。景気が底のときを100として、賃金と企業収益がどう動いたかの労働白書のグラフ。1997年の橋本内閣の構造改革以前の景気の回復期の賃金と利益の動きは、景気が良くなるに従って、企業は儲かりだして線は横に向かい、賃金も上がるようになり線は上に向かう。線は右斜め上に向かう。ところが、橋本内閣が改革を始めて以降、景気が良くなり企業が儲かり線は右に向かうが賃金は一向に上がらない。線はほとんど右横に向かう。景気が良くなっても賃金が上がらない経済の構造となった。
構造改革で労働者派遣が緩和されどんどん利用できるようになった。景気が良くなり人手が必要になると、非正規の低賃金の人を雇う。賃金停滞の一番大きい要因だ。
企業の経営の面でも合併までの規制が緩和され、うかうかすると合併されてしまう。経営者も最大限儲かる状況にしなければならない。社会的雰囲気も変わった。企業は株主のために存在し、儲かることをいいことだとなった。そういう流れの中で、儲かっている企業が首切りをする。企業は儲けるための手段として非正規の雇用を活用した。 
構造改革の大失敗
最初の大失敗は橋本内閣の失敗。バブルが崩壊し91年から93年にかけて長期の不景気が続いた。景気を良くするために日本経済の構造を変えなければとの考え出てきた。私はバブルの反動、ほっておけばそのうち良くなると楽観的に見ていた。橋本内閣が構造改革を打ち出した。公共事業を大幅に削減。所得税減税もやめた。消費税を3%から5%に引き上げ。健康保険2割負担に引き上げた。96年から景気は少し良くなる傾向だったが構造改革で悪化。折悪しくアジア通貨危機、金融危機も影響した。
景気が悪くなり、結果として選挙で負けて橋本内閣は退陣し小渕内閣が誕生した。景気を良くすると、公共事業を大幅に増やし、構造改革とまったく逆の政策を取ることにした。小渕内閣のもとで日本経済は何とかよみがえった。
これで構造改革が終わったかと言えばそうではない。小渕さんは病気で亡くなった。経済戦略会議に竹中平蔵さんがメンバーで入っていて、「日本経済は、構造改革をやらなければ本当に良くならない」と構造改革を進めた。その後、やってきたのがリーマンショック。日本がもっていたサブプライムローンは少なかったが、賃金が上がらないもとで輸出依存の経済が打撃を受け、景気が落ち込んだ。
規制緩和が裏目に出て、派遣労働者が首になり寒い中路頭に迷い、年越し派遣村が出来、ボランティアや労働組合が助け出した。小泉改革のつけだ。構造改革はだめだなと言われ、それもあって「くらし第一」の鳩山民主党政権が登場。よくなるかと思ったら、民主党政権は大失敗。消費税を引き上げ、社会保障制度を悪い方向に変える政策を出した。民主党政権がつぶれて、第2次安倍内閣が誕生。第3の矢は成長戦略で企業が儲かるように変える構造改革だ。それが今に至っている。アベノミクスになったが3度目の大失敗だ。自分が掲げた目標がまったく達成されていない。
もう一つは、人々の暮らしが一段と厳しくなっている。安倍内閣のもとで2018年に6年前と比べ消費がまったく増えていない。消費税5%上がった分貧しくなっている。特に厳しくなっているのは低所得の人々だ。エンゲル係数が相当上がり、保健医療費と教育費が圧迫されている。日本経済の先行きは、安倍内閣を変えない限り真っ暗だ。 
日本経済と暮らしをよくするために
日本経済と暮らしをよくするためには、1つは賃金を上げる。最賃1500円、アメリカですら時給15ドルが一般的な動きとなっている。大幅賃上げで労働条件を良くすれば、日本経済は結果として良くなる。日本は、暮らしを良くすればそれにつれて経済も良くなる非常に恵まれた環境にある。そういう環境を活かしていないのが安倍内閣だ。
2番目に社会保障制度を良くする。日本は、国内にお金が余っている。世界一の金余り国だ。たくさんお金を貯め込んでいる大企業などから、税金、社会保険料で集める。それで社会保障は充分に良くすることが出来る。政府さえやる気があれば出来る。
消費税を8%、10%に上げてから景気は悪くなった。これからますますひどい状況に入り、暮らしももっと悪い状況になっていく。いまやることは、まず消費税を5%に戻す。2014年以前に戻せば、その分景気のひどい状況はなくなる。人々の懐に多少のゆとりが出てきて、景気も暮らしもなんとかなる。
その後に、じっくり腰を据えて、賃金をきちんと上げていく、社会保障を良くしていく政策を考えるということが、何をしなければの結論となる