2020年4月23日木曜日

メルケル独首相の国民への訴え

 メルケル独首相が、318日にコロナウイルス対策について、国民に訴えた演説の中心点をご紹介します。ドイツ在住の林美佳子さんが翻訳しネット上で公開したものです。
「親愛なるドイツにお住いの皆様
コロナウイルスは現在わが国の生活を劇的に変化させています。私たちが考える日常や公的生活、社会的な付き合い―こうしたものすべてがかつてないほど試されています。
何百万人という方々が出勤できず、子どもたちは学校あるいはまた保育所に行けず、劇場や映画館やお店は閉まっています。
そして何よりも困難なことはおそらく、いつもなら当たり前の触れ合いがなくなっているということでしょう。もちろんこのような状況で私たちはみな、これからどうなるのか疑問や心配事でいっぱいです。
私は今日このような通常とは違った(TV演説という)方法で皆様に話しかけています。
それは、この状況で連邦首相としての私を、そして連邦政府の同僚たちを何が導いているのかを皆様にお伝えしたいからです。
開かれた民主主義に必要なことは、私たちが政治的決断を透明にし、説明すること、私たちの行動の根拠をできる限り示して、それを伝達することで、理解を得られるようにすることです。
もし、ドイツにお住まいの皆さんがこの課題を自分の課題として理解すれば、私たちはこれを乗り越えられると固く信じています。このため次のことを言わせてください。
事態は深刻です。
あなたも真剣に考えてください。
東西ドイツ統一以来、いいえ、第二次世界大戦以来、これほど市民による一致団結した行動が重要になるような事態がわが国に降りかかってきたことはありませんでした。
私はここで、現在のエピデミック(伝染病)の状況、連邦政府および各省庁がわが国のすべての人を守り、経済的、社会的、文化的な損害を押さえるための様々な措置を説明したいと思います。しかし、私は、あなたがた一人一人が必要とされている理由と、一人一人がどのような貢献をできるかについてもお伝えしたいと思います。・・・・・・(以下略)」。

新型コロナウイルス感染症にかかわる対策と人権規制をどう考えるべきか
        2020324日 東京革新懇代表世話人会 
 1ヶ月前に東京革新懇が出しました新型コロナウイルス感染に関する提言をご紹介します。

Ⅰ、大規模感染とたたかう基本的原則は、科学、人権と民主主義
 結核・ペスト・インフルエンザ等の感染症は、人類の歴史に大きな影響をもたらしてきた。今回の新型コロナウイルス感染症への対応は、人類社会として科学的、民主的にこれをどう克服するかということが問われる問題である。
安倍首相は、この間の対応―イベント自粛や学校の全国一斉休校の要請、隣国からの入国制限など―を「政治決断」として独断で出してきているが、科学的知見を踏まえず、法的な権限もあいまいなものであった。その中で、新型インフルエンザ等対策特別措置法の改定により「緊急事態宣言」を出せるように法的整備を行った。首相が「緊急事態宣言」を出せば、国民の基本的人権を広く制約することが可能となる重大な内容を持つが、発令要件が曖昧であり、専門家からの意見聴取も義務づけられていず、国会の承認も必要としていない。
国際的に多くの国で、緊急事態、非常事態が宣言され、私権が著しく制限される状況が生まれている一方、それらの多くの国で所得補償など人権擁護のための救済措置が取られている。
 私たちは、混乱に乗じて強権的な支配を強める安倍政権の問題を指摘しつつ、新コロナウイルス感染症に対する当面するいくつかの課題について考え方を明らかにしたい。それぞれの組織、現場での議論をお願いしたい。

Ⅱ、各課題における考え方
1、科学的知見に立脚した医療対策
徹底して科学的知見に立脚して医療対策を講じることが求められる。
    第一は感染者の早期発見である。感染検査を積極的に行う方針を明確にし、必要な体勢を早急に強化することが求められる。「医療体制の崩壊」を口実に検査を抑制する日本政府の対応は、感染の実態をつかめないまま感染拡大をまねき、また、感染対応の長期化をもたらす恐れがある。
    大胆で緊急な医療体制の強化が求められる。感染者に対する医療を安全に行うために、必要な医療機材の供給を強めること。重症者を受け入れるための入院ベットの確保と患者受け入れの準備を公立・公的病院を中心に強化すること。医療機関内での集団感染も起こり得ることも想定しての援助体制を確立するなどである。
    感染状況、感染時の対応、感染防御について、情報公開を徹底することにより、国民の間に信頼と安心感を形成する。
2、経済・くらし対策
201910月の消費税増税で1012月のGDP7.1%ダウンし日本経済に大ダメージを与えたところにコロナウイルス感染による経済の急激な縮小が加わり、経済・くらしは極めて深刻な事態に至っている。国民生活を守るために緊急の予算に裏付けされた大規模な「徳政」的対策の実施が求められる。
    消費税の0%ないし5%への減税。税、社会保険料、公共料金の猶予。
    債務の支払い猶予。無利子無担保の融資の実施。
    収入を失った人への所得保障。低所得者への現金支給。
    企業による解雇・リストラ・内定取り消、賃金切り下げを禁止する。それにともなう企業への支援措置。

3、社会的規制にかかわって
緊急事態等の社会的規制については、トップダウンの一方的強権的規制ではなく、緊急であっても議論を踏まえた民主的規制でなければならない。
    国による社会的な規制においては、必ず国会・野党、専門家の意見を聞いて行う。自治体の規制においても、議会・野党、専門家の意見を聞いて行う。
    可能な限り、国民・住民の意見を聞く。
    最大限、自治体・現場の自主性を尊重する。
    規制は必要最小限のものにする。
4、学校について
    学校の一律休校はやめ、自治体、学校の自主性に委ねる。
    学校の再開にあたっては安全対策を強め、医療関係者との連携態勢をつくる。
    休校期間中の学習回復、新年度の教育計画については、無理のないものとし、学校の弾力的な運用を尊重する。
5、文化対策等について
政府のイベント等の自粛要請により、イベント、集会、演奏・演劇等のほとんどが中止・延期となり、個人や零細経営のところが圧倒的であり、経営・くらしが危機的な状況となっている。
    興行の中止による芸術家・事業主の損害を全面的に補償する。
    被害を受けた文化団体への助成措置や減税措置を講ずる。文化庁予算を大きく拡充する。
    集会等の中止・延期の場合、支出済みの費用については補償する。
6、ヘイトや差別・排除の禁止
    特定の国や人々に対する差別を許さない(さいたま市で、朝鮮学校へのマスク配布排除、後に是正)。
    感染者や感染者がいた施設への差別・排除を行わないよう行政として対応する。
7、国際関係について
    WHOの体制強化を含め、新型コロナウイルス感染症封じ込めのための国際協調を強める。
    諸国と情報を共有し、ワクチン・治療薬の開発協力を行う。発展途上国等への人的・物的支援を強める。
    入国規制については、相手国との協議を踏まえる。

、運動にかかわって
1、新型インフルエンザ等対策特別措置法にもとづく緊急事態宣言の可能性があり、警戒が必要である。また、新型コロナウイルス感染症の蔓延を口実に改憲に結びつける自民党の動きは許しがたい。萎縮することなく、憲法と民主主義を守るたたかいとその構えを維持する。
2、基本的人権と民主主義の規制が様々な内容で出てくる可能性が有るもとで、行き過ぎた規制に対しては機敏に対応し、必要な撤回・修正を求める。           以上