2021年4月26日月曜日

 都議選迫る、今後の日本の未来も決める

「コロナ」対策徹底で安全安心の東京か、大企業と開発優先の継続か

                       東京自治問題研究所 石橋 映二


1.都議選結果の影響は大きく、全国的に広がる

2021年都議選は625日告示・74日投票です。

自治体議会選挙は、その結果が住民の多様な意見や要求の反映であり、その後の議会での議案審議での論点を明確にすることから、「住民の代表」といわれる由縁です。それには、議員構成の男女比の不均衡是正も重要課題です。

また、都議選結果は、都議会運営のみならず、その後の国政に大きな変化をもたらします。

さらに、今回の自公連携復活、立憲民主党と共産党の野党間候補者調整への都民の選択は、将来の行方も決めることとなります。

そのためには、都知事の「専決処分」の権限濫用を許さないという関係構築は、今般の「コロナ」禍対策の補正予算や条例新設・改正などの経過から、議会権能に係わる重要事項として改めて問われるべきです。

同時に今期議会で、各派協議を重ねられ、子どもの権利及び都の責務の明確化、実効性の担保の視点からの提起を幅広く取り入れた「条例」成立に寄与できたことも重要なことでした。

 

2.大規模開発・デジタル都庁構想まい進に歯止めを

1)「コロナ」対策の抜本的強化で、安全・安心を守る福祉重視の東京に転換を

昨春からの「新型コロナ」パンデミック(感染爆発)は、2ヵ月余の「緊急事態宣言」解除後も感染拡大が続き、2回目の「宣言」が出されました。さらに、その「宣言」解除直後に、「変異株」による4波が深刻化、「まん延防止等緊急措置」が発せられ、極めて深刻な事態を招いています。

「新型コロナ」禍は、まさに経済のグローバル化と国民のいのち・暮らしを軽視した新自由主義政策推進による社会の脆弱さを明らかにしました。いま、まず必要なのは、感染症対策の抜本的強化です。

小池都政の「未来の東京・3か年のアクションプラン」の『戦略0(ゼロ)』(別掲)では、「新型コロナ感染症に打ち克つ戦略」を掲げ、「『見えざる敵』である感染症に打ち克つ」とし、「東京ίCDC疾病予防センター)」を核とした3つの対策を掲げますが、極めて限定的で、大規模PCR検査を実施し、無症状感染者を把握したうえで、対策を打たないことには、とても「打ち克つ」とはいえません。

2021年度都予算では「直近の感染状況に応じて補正等の対策を迅速に講じる」とし、国交付金頼みの補正予算対応に委ねて、知事が都民に自粛を呼びかけるのみで、保健所機能の抜本的強化対策予算も、コロナ感染者を大量受け入れて、医師・看護師をはじめ関係者の疲弊が極まっている都立病院も僅かに医師1名、看護師8名増員です。

その一方、都立病院・公社病院の地方独立行政法人移行準備予算を合計39億円計上しています。

ところが、知事与党の「都民ファースト」や自民・公明等の各派は、都民からの「独法化中止」請願に対して、事もあろうに不採択としました。

また、国保、後期高齢者医療、介護保険の交付金や補助金増には冷たい政治が続きます。

さすがに、「コロナ」禍で困難に直面している方々に、緊急雇用対策「東京版ニューデール~TVA作戦」で、2万人を超える雇用創出など、生活弱者・雇用対策、「コロナ」禍の生活や暮らしへの対応、中小企業支援等が各局予算には組まれています。問題は、増え続ける対象者にどこまできめ細かな対応ができるかです。

 

2)「2020東京オリ・パラ大会」強行と「稼ぐ東京」・国家戦略特区に厳しい審判を

➀「コロナ」禍での2020東京オリ・パラ大会強行

2020東京オリンピック・パラリンピック関連予算は、大会経費、大会関係費、大会コロナ感染症対策、緊急対応費など合計2953億円を計上、更に大会関連経費、レガシー創出経費など総額は4028億円です。

累計の都負担は1兆4500億円で、このまま大会を強行すれば、これに留まる保証はありません。

オリンピック立候補ファイルの大会経費は、総額が8000億円(東京都・国などで4500億円、組織委員会が3500億円)ですが、既に総経費は3兆円以上に膨れ上がり、東京都の負担額は当初想定した約5倍です。

 「2020東京オリ・パラ大会」強行で感染拡大か、それとも、直ちに中止して、コロナ禍対策に集中化して感染を抑えるのかが問われています。

 

②政府・財界方針推進の都庁のDX・デジタル化

また、小池都政が212日に発表した「『未来の東京』戦略(案)」、「『未来の東京』戦略(案)~3か年のアクションプラン」、「シン・トセイー都政の構造改革QOSアップグレード戦略()」の3つの戦略を貫くのは、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進です。東京版Society5.0「スマート東京」に加え、「社会と都庁」の2つの構造改革を進めています。

また、「都政の構造改革」の7つのコア・プロジェクト①未来型オフィス実現②5つのレス徹底推進③ワンストップ・オンライン手続④オープンデータ徹底活用⑤スタートアップ・シビックテックとの協働推進⑥内部管理事務抜本見直し⑦組織・人材マネジメント変革は、美辞麗句で飾られていますが、その実態は「デジタル庁」・「デジタルサービス局」に象徴されるDX・デジタル化推進です。

特に、「オープンデータ徹底活用」は、個人情報保護の立場からの厳しい検証が求められます。

本格的に始動した「スマート東京」関連予算は、全局的に網羅され、電子都庁基盤の運用管理109億円をはじめ、学校関係だけで240億円余、さらに行政のデジタル化、起業・創業促進等々1兆円近くの巨額な都財政が注ぎ込まれています。

 

③「稼ぐ東京」、カジノ誘致を促進する国家戦略特区

DXは、ベイエリア(湾岸地域)や都心部などの国際金融都市づくり・都市再開発や子育て・教育・就労対策・高齢者・障がい者など都民生活に直接関連する全ての分野の施策に組み入れられています。

石原、猪瀬、舛添歴代知事と自公両党が進めた大規模開発・国際金融都市などの国家戦略特区路線を、「2020東京大会」を口実に、「稼ぐ東京」を旗じるしに一層推進する小池都政の計画となっています。特に、東京を上海、シンガポールを凌ぐ「アジア1位の国際金融センター」づくりの拠点化も謳われています。

「ベイエリアから世界最先端を取り戻す」として、規制緩和で、「世界の人を魅了する遊び場」として、統合型リゾート施設IR(カジノ)誘致が可能な計画となっており、特に、破綻必至なカジノ調査予算を8年連続で計上したことは大きな問題です。 

別掲 

   「未来の東京」戦略() 事業費一覧

(東京都庁ホームページより)  単位:億円

 

 

戦略名

2021年度

事業費

3ヵ年事業費

戦略0

感染症に打ち克つ戦略

283

戦略1

子供の笑顔のための戦略

1,437

4,315

戦略2

子供の「伸びる・育つ」応援戦略

929

2,811

戦略3

女性の活躍推進戦略

1,222

3,824

戦略4

長寿(Chōju)社会実現戦略

367

1,274

戦略5

誰もが輝く働き方実現戦略

227

550

戦略6

ダイバーシティ・共生社会戦略

358

1,076

戦略7

「住まい」と「地域」を大切にする戦略

999

3,151

戦略8

安全・安心なまちづくり戦略

5,477

16,888

戦略9

都市の機能をさらに高める戦略

4,322

15,162

戦略10

スマート東京・TOKYO Data Highway戦略

224

884

戦略11

スタートアップ都市・東京戦略

226

358

戦略12

稼ぐ東京・イノベーション戦略

684

1,759

戦略13

水と緑溢れる東京戦略

3,446

10,846

戦略14

ゼロエミッション東京戦略

1,589

4,645

戦略15

文化・エンターメント都市戦略

86

271

戦略16

スポーツフィールド東京戦略

177

472

戦略17

多摩・島しょ振興戦略

3,477

11,278

 

総計

13,888

43,372

④安全無視の外環道工事、街こわしの特定整備路線、空の安全など

昨秋に起きた外環道地下工事による調布市の陥没事故に住民は大きな不安を訴えています。また、住民追い出しと街こわしの品川や板橋などの特定整備路線も引き続く方向になっています。

また、インバウンドと国際金融都市・外国人活用の狙いで、都心を低空縦断する羽田新ルートの機能強化調査予算も含まれます。

また、都心上空の米軍ヘリ飛行、横田基地で危険なオスプレイの夜間飛行訓練の集中を指摘し、特殊作戦部隊拠点化の実態について知事の認識を質しましたが、正面からの答弁はありませんでした。米軍ヘリの都心超低空飛行は、ドイツやイタリア、イギリスでは国内法が適用される一方で、日本では、米軍がわが物顔で飛行しています。日米地位協定は改定が必要ですが、現行でも国内法を遵守する義務を負っており、住民の命と安全を脅かす飛行の中止と、基地の撤去を求めるべきです。

 

3)個人の尊厳と多様性を尊重する都議会と都政に

20146月都議会で、女性の妊娠・出産をめぐる都の支援体制を質問中の女性都議に、自民党都議が差別発言をしたことは、当時の海外メディアからも厳しい目が注がれました。

そんな事象があったにもかかわらず、いかなる差別の排除を謳っている「オリンピック憲章」のもとで成り立っている東京オリンピックの大会組織委員会の前会長が、「女性がいると話が長くなる」といった主旨の発言をし、女性蔑視だと批判を浴びました。当然、厳しい批判は世界各国からも集まりましたが、会長交代・女性会長就任などの当面の対処で収まるものではありません。抜本的な改善を求めねばなりません。

また、都立高校の「地毛証明書」などの厳格校則─その後、頭髪指導は改善を求める「通知」が出されましたが、「子どもは、あらゆる場面で権利の主体として尊重され…意見を尊重するとともに、子どもの最善の利益を実現することは、学校教育においても同様に重要」と教育長が答弁したことは画期的です。

国の小学校での35人学級の実現を5年かけての推進という変化を受けて、都の少人数学級実現への改善に向けては、これまでの立場を抜本的に改めて進めるべきです。

そのほか、性的マイノリティなど様々な課題での個人の尊厳と多様性を尊重するという民主社会のルールが当然のこととして普遍化している都議会と都政への転換が急務です。