2020年12月15日火曜日

 野党連合政権でポストコロナ社会を切り拓こう


神戸女学院大学教授

石川康宏

 

 コロナ危機は現代の人間社会のさまざまな弱点や課題を浮き彫りにしました。いずれも多くの人の命を左右する深刻な問題で、少しでも早くそれらを解決し、感染の広がりと関連した経済被害を食い止めていかねばなりません。その解決に向けた努力は「個人の尊厳」を守る点で、社会進歩を大きく加速させる可能性を含んでいます。加速なしに問題を解決することはできない、そういう分岐点にいま私たちは立っています。

自然とのバランス、軍事費より社会権、バブルの制御 

 エイズやエボラ出血熱などと同じように、今回の新型コロナウイルスの流行も、人間が無分別に野生動物界に入り込んだ結果だと言われています。温暖化による氷河や凍土の溶解がそこに封じ込められていたウイルスを解き放っているとの指摘もあります。資本主義の飽くなき利潤追求が、人間と自然の両方を破壊し、両者の健全な関係の再建が社会改革の重要課題になるとカール・マルクスは『資本論』で述べています。これ以上の環境破壊を防ぎ、野生動物界とのあいだに適切な関係をつくっていくことは、人類の生存にますます緊急の課題となっています。マルクスの議論については『経済』1月号でも述べましたので、関心のある方はご覧ください。

アメリカでのコロナ感染による死者の数は、すでに第2次世界大戦での死者である29万人にならんでいます。大量の核兵器をふくむ世界最強の軍事力もコロナウイルスの前には、なす術がありません。急ぎ求められているのは、人間1人1人の命に焦点をあてた社会権の拡充です。アメリカを筆頭に年203兆円もつかわれている世界の軍事費を、医療・福祉・教育などに振り向けることができれば、どれだけ多くの命を救うことができるでしょう。そのためにも世界は話し合いによって紛争を解決する知恵を深めていかねばなりません。戦争とその準備である軍事演習は、CO2の大量排出を含む地球環境破壊という面からも、許されてよいものではありません。

世界のどこかに感染症が生れれば、今日のグローバルな社会ではあっと言う間に世界中に広がります。世界の誰かが生き残るには、世界の誰もが生き残れる社会をつくっていく他ありません。途上国にはコロナ危機による財政破綻や債務危機が起こりつつありますが、国際協力と支援の強化が必要です。

 世界経済は戦後最悪の景気後退に直面していますが、その中で、IMFが繰り返し警告するように、マネーゲームが米欧日の株価を引き上げ、バブルを拡大させています。景気回復をめざす各国の金融緩和に便乗し、一部の大企業や富裕層がマネーゲームにのめり込んでいるのです。リーマンショックに象徴された2008年のバブル崩壊と経済危機は、直後の日本に年越し派遣村を生み出しました。実体経済の最悪の縮小にバブルのしわ寄せが重なれば、その影響ははかり知れません。短期資金の大量の流出入を規制し、マネーゲームを抑制する「倫理」の強化が必要です。

 大きな課題ばかりですが、世界の市民は短い間に多くを考え、事態の打開に知性を発揮していくでしょう。私たち日本の市民も役割を果たしていかねばなりません。 

大資本による「新自由主義の経済学」の活用 

 貧富の格差が命の格差に直結していることは、アメリカの黒人の死亡率が白人の2.5倍になっているという人種差別の実態とあわせて大問題になりました。社会保障の自己責任化や医療費抑制による医療の逼迫も重大問題です。コロナ不況への対策が市民のくらしや国内の消費を維持するものになっていないなど、新自由主義の諸政策が事態打開の障害物となっています。

著名な歴史人口学者のエマニュエル・ドッドは、コロナ感染の第一波で死者数が多かった「フランスで起きたことのかなりの部分は、この30年にわたる政策の帰結」と告発しました。哲学者のマルクス・ガブリエルは資本主義に「倫理」が求められていると指摘します。いずれも人のくらしを尊重する社会の必要を説いてのことで、日本の現実にもそのままあてはまる指摘です。より健全な資本主義への資本主義のバージョンアップが求められています。

 新自由主義の経済学の代表的な論者は、フリードリヒ・ハイエク(1899年~1992年)とミルトン・フリードマン(1912年~2006年)で、その主張が大国の政治に活用されるようになったのは、イギリスのサッチャー政権(1979年から1990年)、アメリカのレーガン政権(1981年から1989年)の頃からでした。

 これらの政権の主張は、①大資本や富裕層のますますの富裕化こそが、社会全体を豊かにするというトリクルダウン(おこぼれ経済)論、②特に金融や労働の分野で大資本による利潤追求の自由を拡大しようとする規制緩和・市場原理主義、③貨幣の供給量の増大が景気を上昇させるとするマネタリズム(貨幣数量説)、④貧富の格差に対する労働者・市民の不満をあらかじめ封じるための自己責任論や機会の平等論(結果の平等論でなく)などとなっています。

 こうした主張がこの時期に経済政策の前面に出てきたのに、物的な根拠がありました。

 出発点は、1960年代の世界的な高度経済成長により、アメリカの大資本を筆頭に貨幣資本の莫大な過剰が生れたことです。これがマネーゲームの拡大に向けた「金融の自由化」を進める衝動を生み、製造業の多国籍企業も自由に活動できる条件整備を世界各国に求めました。しかし、実現にはこれを正当化する論立てが必要です。その求めに合致するものとして大資本が採用したのが新自由主義の経済学でした。何らかの学問的優位にもとづくことではなく、時の大資本にとって使い勝手のよい内容だったからにすぎません。 

マネーゲームの自由と労働者保護の後退 

 論壇への「新自由主義」の登場は、これよりずいぶん前のことです。1938年のリップマン討論会や1947年のモンペルラン討論会にまで遡ります。彼らは「自由主義の危機」を叫びましたが、それは1929年の世界大恐慌以後に、アメリカのルーズベルト政権(1933年から1945年)が押し進めた一連のニューディール政策やその発展を前にしてのことでした。

ルーズベルト政権は、アメリカの労働者の4人に1人が失業するかつてない大恐慌(経済危機)を招いた投機の熱狂を繰り返さないために、銀行と証券の兼務を禁ずるグラス・スティーガル法(1933年)を成立させました。そしてテネシー川流域開発などでの大型公共事業と雇用の拡大、全国産業復興法(1933年)やワグナー法(1935年)による労働者の団結権、団体交渉権の承認、最低賃金制の制定、社会保障法(1935年)による失業保険、退職金、年金制度の創設などを進めました。

この資本主義の新しい発展に対し、個人の自由は価格メカニズムにもとづく市場が機能する市場経済なしに成り立たないと主張したのが「新自由主義」のとりわけ英米グループでした。国家が資本の活動を制限するのはけしからん、労働組合が経済に口を出すこと、ましてや労働者を保護する立法などあってはならないということです。しかし、それは市民多数の声にはなりませんでした。

転換が訪れたのは、福祉の一定の拡充をともないながら実現した戦後の高度経済成長が終わった時期です。1970年代のスタグフレーション(物価上昇と景気後退の併存)をきっかけに、大資本がそれまでの「ケインズ主義」政策(必ずしもケインズの学説にそってはいません)を批判し、新自由主義にもとづく資本主義の改変を叫び出したのです。そして1980年前後に先の諸政権が実現します。

その後、1989年からのソ連・東欧崩壊は、共産主義は死んだ=計画経済は死んだ、自由主義万歳=自由主義経済万歳というすり替えで、新自由主義を一段と強力に推進するきっかけとされました。アメリカ大資本の最大の標的は、ルーズベルト政権がもたらしたマネーゲームへの規制の撤廃と労働者保護立法の縮小でした。銀行と証券の兼務を禁じたグラス・スティーガル法は、グラム・リーチ・プライリー法(1999年)によって最終的に撤廃されます。日本では金融ビッグバンの名前で実施されました。非正規雇用が拡大させられ、1%と99%の貧富の格差が広がります。2008年のリーマンショックは、金融経済の領域の混乱(サブプライムローンの暴落)が実体経済を大混乱に陥れるという恐慌の新しい様相さえ生み出しました。今日のバブルの膨張はこうした改革の末に起こっています。 

「個人の尊厳」守る政権を 

「構造改革」やアベノミクスの名でアメリカを手本とし、アメリカに従属した新自由主義的改革を行なった日本は、わずかな人々の富裕化と引き換えに社会そのものを衰退させました。国連が発表する最新の幸福度ランキングで日本は世界で62位(過去最低)、世界経済フォーラムが発表するジェンダーギャップ指数では121位(過去最低)、IMFが発表する1人あたりGDPで第26位(2000年には2位だった)と、明らかに衰退途上の社会となっています。

2020年12月8日の「追加経済対策」でも、菅内閣はGo To トラベルを2021年6月まで延長しながら、医療体制の強化、PCR検査の拡充、市民生活の直接支援にはまるで予算を振り向けません。根底にあるのは大資本の利益最優先、それによる政治屋・利権屋としての自身の儲けの最優先、その裏返しとしての「自己責任」の名での「個人の尊厳」の敵視です。もはや政権交代なしに、安心して生きることはできません。これについては、冨田宏治・上脇博之・石川康宏『いまこそ、野党連合政権を!』(日本機関紙出版センター、2020年)をご覧ください。

ポストコロナ社会は時がたてば自然にやってくるものではありません。コロナと効果的にたたかえる社会をめざす努力の先に、初めて見えてくるものです。その核心は、憲法を活かし、新自由主義の政治を転換する野党連合政権の樹立でしょう。大志を抱いて奮闘しましょう。

核兵器禁止条約を力に、2021年を廃絶の飛躍の年に! 

日本原水協事務局次長

土田弥生 

 2021122日、核兵器禁止条約は発効します。発効によって、禁止条約は国際法となり、核兵器は違法になります広島・長崎の原爆投下以来、被爆者や日本と世界の運動が求めてきた核兵器の禁止が実現するのです。この歴史的な日に、発効を祝い記念する行動が日本世界中で計画されています。この日を期して、「核兵器は違法なんだ!」と声を大にして言いたいと思います

 

禁止条約の力

 201777日、国連での交渉会議を経て、禁止条約が採択されました。この条約は、核兵器の製造、取得、保有、使用、威嚇、開発など、あらゆる活動を禁止しています

 核保有国や核の傘の国は、禁止条約が発効しても、それに加盟していないから拘束されないと言っています。確かに技術的にはそうですが、この国際法の誕生は、核兵器は違法であるとの規範を強め、政治的にも道義的にもすべての国の行動を縛るものです

それが証拠に、禁止条約の批准国が50カ国に達しようという時、米国政府は各国に手紙を出し、批准を取り下げるよう圧力をかけました。この条約の発効は保有国にとって脅威なのです

広島の被爆者セツコ・サーローさんが言ったように、まさに「核兵器の終わりの始まり」が始まるのです

 この条約122カ国の賛成で採択されました。その後、オーストリアなどを中心に「核兵器禁止条約」の決議が国連に提出されていますが、2020年の国連総会では、130カ国が賛成し採択されました。署名や批准の国が一つ一つ増えることによって、核兵器は世界に必要ないというメッセ―ジを明確に発しているのです。この多数派の流れ、核保有国や核の傘の国を包囲し、核兵器のない世界の実現へ押しとどめることができない大きな力になっています

 核兵器は人類の生存を脅かす脅威 

 現在、核兵器をめぐり、人類生存の危機に直面しています。その背景には、米トランプ政権が、単独行動主義を取り、地球温暖化に関するパリ協定からの離脱を皮切りに、中距離核戦力全廃(INF条約、イラン核合意などから離脱し、これまで国際社会が粘り強く築き上げてきた軍備管理・軍縮の枠組みというものが破壊されてきたことがあります。さらに、米ロ間、米中間での対立の激化、軍備競争の再燃は、冷戦の再来と言われています。

 禁止条約が採択された2017年当時は、北朝鮮の核兵器をめぐって、北朝鮮と米国が核兵器のやり取りも辞さずとの構えで、核戦争の瀬戸際まで緊張が高まりました。国連や世界の多数の国々、市民社会は、禁止条約を採択し、非核平和の方向に世界の舵を切ったのです 

核兵器の人道的結末イニシアチブ 

禁止条約の推進力となったのは、「核兵器の人道的結末」イニシアチブと呼ばれるものです。この動きは、2010NPT(核不拡散条約)再検討会議の最終文書での「核兵器のいかなる使用も壊滅的な人道的結果を引き起こすことに強い懸念を表明し」の言及を皮切りに、政府レベルで起こりました。2013年から14年、ノルウェー、メキシコ、オーストリアで政府主導の核兵器の人道的影響に関する国際会議が開かれ、以下のことが導き出されました

意図的であれ、事故であれ、いかなる核兵器の使用は、国境を越え、地球全体に壊滅的な影響を与える。人間の命や健康、環境、気候、食料、経済活動などに長期の取り返しのつかない影響を与える。そして、それを救済できる国家の能力も国際機関もない

 最後のオーストリアの会議で、これだけの非人道的な大量破壊兵器を禁止する法律がない、この法的ギャップを埋めようとの提起がなされこの流れで条約の交渉会議の開催、採択に至ったのです。

 このプロセスの中で、市民社会は重要な役割を果たしました。特に、被爆者は自らの被爆体験を語り、核兵器の非人道性を鋭く告発しました。国連や各国政府、世界の市民たちが協力して、禁止条約を作ったのです。

 新たなステージのたたかい 

核兵器禁止条約の発効、すなわち、核兵器が禁止されるもとで、廃絶に向けたたたかいは新たなステージに入ります。焦点は、核兵器に固執する核保有国と核の傘の国でのたたかいです。2020年の国連総会第一委員会や核兵器廃絶国際デー(926日)の国連ハイレベル会合では、「核抑止は安全保障を強化しない。この神話を遂に終わらせようではないか。核兵器が存在する限り、すべての国の平和と安全は絶えず脅かされる」とよびかけがなされました。核抑止力論とのたたかいです。核抑止という言葉を聞くと、何か難しい理論のようですが、これは「核兵器で平和と安全は守れない」ということを、いかに国民に広く知らせていくかということで打破できるものです

すでに、このたたかいは始まっていますNATO加盟国のうち20か国と日本韓国の22か国の元首相、元外相・防衛相らが自国の政治指導者にたいし、核兵器禁止条約への参加を訴える公開書簡を発表(921日)しました。NATO本部があるベルギーや米国の核兵器が配備されているドイツでは核兵器禁止条約を前向きにとらえ、「核の共有」政策の見直しなどの注目すべき動きが生まれています 

被爆国にあるまじき日本政府の態度 

 菅政権の核兵器禁止条約に対する態度は、安倍前政権そのもの、米国の「核の傘」依存一辺倒の被爆国にあるまじきものです

菅首相は、政権発足直後の所信表明演説で、核兵器禁止条約に一言も触れず、参議院の代表質問で、日本をとりまく「安全保障環境」の悪化を口実に、抑止力の維持・強化を強調し、核兵器禁止条約に「署名する考えはない」と背を向けました

一方で、「世界で唯一の戦争被爆国として核兵器廃絶をリードする」、非核国と核保有国間の「橋渡しをする」を看板にし、欺瞞的な態度をとっているのです 

日本決議にきびしい批判

政府は「核兵器のない世界に向けた共同行動の指針と未来志向の対話」と題する決議を2020年の国連総会に提出しましたそれに対して、非核国の政府だけではなく、核保有国、核依存国の政府からも批判を受け、その欺瞞的態度が破たんしています

この決議の国連第一委員会の採択状況は、賛成139、反対5、棄権33(昨年と比べて賛成国は9減。反対は4、棄権は7増)。会議では日本決議に対して、核兵器禁止条約への言及がない、NPT条約の合意内容の改ざんや弱まりがある圧倒的多数の国と市民社会の要求である「NPT核軍備撤廃の義務や合意履行」から「履行」が削除されていることについて、批判が相次ぎました。非同盟のリーダー国であるインドネシア、マレーシアなどが賛成から棄権、NATO加盟国のベルギー、ドイツ、カナダ、ノルウェー、オランダ、核保有国のフランスも賛成から棄権に回りました

国連総会の採択では、賛成150まで戻したものの、賛成国は激減し、共同提案国も半減、日本は信頼を失うばかりです。これが、被爆国でありながら、核保有国の代弁者になり下がった日本政府のぶざまな姿です被爆国日本への信頼を回復するためにも、今求められていることは、核兵器禁止条約を支持し参加することで 

日本政府は核兵器禁止条約に署名・批准を 

 日本原水協は1029日、日本政府に核兵器禁止条約への署名・批准を求める署名を提唱し、広範な共同呼びかけ人とともに、署名キャンペーンをスタートさせました。政府を禁止条約に参加させる圧倒的な世論を築くことが目的です。

この活動は、国際的にも国内的にも重要な意義を持つものです。核兵器廃絶国際キャンペーン(ICANのベアトリス・フィン事務局長は日本が核兵器禁止条約に加われば、「世界にとてつもない衝撃を与える。その決断は、核保有国の姿勢を擁護している他の国々が核兵器を拒絶する引き金になる」と、その国際的意義を述べています。

禁止条約に参加する日本の実現は、アメリカの核戦略に組み込まれた日本の安全保障政策を転換し、アジアの非核平和の確立にとって極めて重要です。

現在、南シナ海、東シナ海をめぐる米中対立、覇権争いは北東アジアをはじめアジア・太平洋全体に危険をもたらしています。日本はアメリカの対中戦略に加担し、軍事演習にも参加この流れの中で、菅政権は先制攻撃=「敵基地攻撃」体制をつくる大軍拡をすすめようとしているのです

アメリカの核兵器で日本と国民の平和と安全は守れません。この声を日本の隅々まで広げなければなりません。世論調査によると、国民の72%は、日本は禁止条約に参加するべきだと答えています。署名の共同呼びかけ人も、田中真紀子元外務大臣や音楽家の坂本龍一さんなど、幅広い著名人136人が応えてくれました。オンライン署名でも10日間で42000筆を超えるなど、大きな反響があります。

この署名にはアジアから見た意義もあります。アジアで禁止条約に反対している非核保有国は韓国と日本だけです。禁止条約への日本の参加は、北東アジア、ひいてはアジアの非核平和の確立にとって大きな貢献となりますアメリカのジャーナリストボブ・ウッドワード氏は、その著書で、「アメリカは北朝鮮が核攻撃してきた場合に80の核で報復する」とのシナリオを持っていたことを明らかにしました。

核兵器のない世界・非核平和のアジアの実現に真に貢献する日本を実現することは日本の運動に課せられた責務で 

2021年を飛躍の年に 

2021年には、コロナで延期されたNPT再検討会議が開かれます。核兵器禁止条約の発効を受け、第一回締約国会議も開催される予定です。禁止条約を力に、核廃絶の飛躍の年にしようではありませんか。

2020年11月17日火曜日

11.3 国会正門前行動

 平和といのちと人権を!11.3大行動

総がかり行動に3000人

高田健さんの開会あいさつ
福島瑞穂社民党代表があいさつ
立憲民主党女性議員があいさつ          
山下芳生共産党副委員長・参議院議員あいさつ
          
高良鉄美沖縄の風参議院議員あいさつ
          
清水雅彦日体大教授スピーチ
         
学問の自由守れ の集会での吉岡忍日本ペンクラブ会長
軍事研究反対への攻撃、毅然とした態度を示そう         


          
         





2020年10月30日金曜日

学術会議への人事介入の本質

人事介入事件の本質

東京革新懇代表世話人 法政大学名誉教授 五十嵐 仁

 

 菅義偉首相による日本学術会議推薦会員の任命拒否について、五十嵐仁法政大学名誉教授に談話を寄せていただきました。 

日本学術会議人事への政治介入が大きな怒りを呼び起こしました。それは自民党や安倍政治の問題点が象徴的に示されているからです。いわば、〝悪政の結節点〟でこの問題が発生したことになります。

 6人の任命拒否は憲法23条が公的な学術機関の政治からの自立を保障する学問の自由と、法律によって定められている「学術会議の推薦に基づいて首相が任命する」という規定に反する違憲で違法なファッショ的暴挙にほかなりません。6人を誰かが勝手に除外し、元のリストは「見ていない」という今回のやり方は、「任命は形式的」で「首相が任命する」といういずれの規定にも反しています。拒否の理由を説明し、直ちに撤回して6人を任命するべきです。

 教育と大学、学術への攻撃 

 今回のような介入がなぜ日本学術会議に対してなされたのでしょうか。以前から自民党は学術会議を何とかしたいと考え、目の敵にしていたからです。戦争への反省や自律的な活動を行うというあり方を変質させ、政府の御用機関に変えたいという目論見は設立当初から一貫していました。自民党による学術会議についてのプロジェクトチームの設置は、この狙いをよく示しています。

 それがなぜ6人の排除という形になったのでしょうか。安保法(戦争法)や「共謀罪」などに批判的な方だったからです。憲法解釈の変更や安保法の制定などによって戦争できる国づくりが進む一方で、学者・研究者が反対運動において大きな役割を果たすようになってきました。これを快く思わない政権側が「一罰百戒」を意図して介入したと思われます。

 それがなぜ学術の分野に対してなされたのでしょうか。教育と大学の管理・統制強化の一環だからです。自民党による日教組敵視や教科書記述への介入、安倍前首相による教育改革や教育再生会議などによる道徳の教科化や愛国心教育の強化、国立大学の法人化や全大学人自治への攻撃などによって教育は変質し、大学の自治と学問の自由は掘り崩されてきました。今回の人事介入も、この流れを引き継いでいます。

 これらの目的達成のためになぜ人事介入という方法が取られたのでしょうか。安倍前政権の下で常套手段として多用されてきたからです。日銀総裁や最高裁長官、NHK会長と経営委員、内閣法制局長官、内閣人事局の設置、検察庁人事、メディア関与など、不都合な人を追い出して都合の良い人に変えるやり方は一般化してきました。今回は杉田和博官房副長官などが「忖度」して事前にチェックし、6人の名前を外した可能性が濃厚です。このようなやり方に慣れきってしまったために、それが持つ問題の重大性に気がつかなかったのではないでしょうか。

  民主主義と学術の危機 

 今回の人事介入は戦争する国づくりと軍事研究への加担という点で平和を脅かし、異論の排除という点で民主主義に反し、学問の自由を阻害して学術研究の発展を脅かすことになります。恐るべき言論弾圧事件であり、菅首相は意に沿わないものを理由無く切る冷酷な地金を露わにしました。

 菅政権はやりすぎたのではないでしょうか。民主主義社会であってはならない暴挙によって「虎の尾」を踏んだことを思い知らさなければなりません。このような権力の関与を許せば、言論や表現、教育や大学への介入はさらに露骨となり、民主主義と学術研究は息の根を止められてしまうでしょうから。

 

2020年10月19日月曜日

10月19日 学術会議問題宣伝

菅首相は日本学術会議への人事介入やめよ

全国・東京革新懇が新宿西口で宣伝       

 全国革新懇と東京革新懇は 10月19 日、新宿駅西口で菅首相によ る日本学術会議への 人事介入に抗議する 合同街頭宣伝をおこ ないました。

 東京の地域革新懇、賛同団体 などから 24 人が参加、署名、チラシ配布しました。 雨のなかでしたが、「学問の自由を脅かされることは、表現や心の自由を奪う」 と語る演劇関係者ら7人から署名が集まりました。 代表世話人各氏がマイクを握りました。

  「学問の自由を奪う今回の行為は菅首相の強権政治の本性を明らかにした。 安倍政治を最悪政治と言ってきたが、下には下があるものだ」(法政大学名誉 教授・五十嵐仁さん) 

 「菅内閣の危険性を浮き彫りにした。国民の意見を聞かず、自助を押し付ける 政治に青年の未来を託せない。野党連合で政治をかえよう」(民青同盟委員長・ 小山農さん) 

 「コロナ再拡大のなか、PCR検査の拡充もせず、専門家の意見も聞かずGOT Oキャンペーン。学術会議問題で抗議が広がると学術会議のあり方にすり変える。 こんな政治を一刻も早く終わらせよう」(全労連前議長・小田川義和さん)

 「菅首相は国会を開かず、国民の意見を聞かない。コロナ禍で公助こそ大事 というのが世界の常識。自助の社会をつくったのは、ヒトラーだ」(立正大学名誉 教授・金子勝さん)

  「この事件を聞き、1933 年の滝川事件を思い出した。学問の道の真ん中で業績をあげてこられた加藤陽子先生や保守主義の人である宇野重規先生が任命拒否されている。理由が明らかにされていない。それが独裁政治のテクニックで す。こんな横暴なことはやめさせましょう」(翻訳家・池田香代子さん) …全国革新懇「革新の風Faxニュース80号」より…

     


2020年9月29日火曜日

東京革新懇学習交流会木下ちがや講演

 安倍政権の終わりから、新しい政治へ

政治学者 明治学院大学国際平和研究所研究員木下ちがや

安倍政権が終わり、新立憲民主党が誕生しました。これは民主党への逆戻りではなく、重要なのは、反共主義、新自由主義と決別したことです。この間、労働政治学者であり革新懇の世話人をされていた故清水慎三さんに思いをはせ、著作を何度も読み返し、清水さんならどう判断するかを考えながら情勢をみていました。革新懇は、統一戦線を追求し、1980年代、90年代、2000年代、2010年代、2020年は第5期です。野党共闘でこの流れがいま結実しつつあります。

なぜ菅総理なのか 

 なぜ菅総理なのか。菅さんは安倍政権の継承と言っています。私は昨年出版した本の中で、安倍はもう終わりに入っていると見ていました。政権は目標がなければ続かない。安倍さんは改憲、北方領土返還などを目標としていたがすべて失敗していました。改憲についていえば立憲民主党が野党第一党になったことでもう改憲は不可能になっていたのです。2018年に総裁選で3選しあと1期やることになりましたが、レームダック状態でした。じゃあ次は誰がやるのか。昨年春の改元のとき、やたら菅官房長官が目立ち、菅が総裁候補に浮上していました。内閣改造では菅さんの子分の菅原一秀、河井克行が入閣しました。ところが昨年末、立て続けにスキャンダルが発覚し、かれらは辞任に追い込まれます。これは自民党内部からのリークでした。麻生副総理が菅を絶対に総理にしないと動いたのです。近年の自民党の総理総裁は二世議員ばかりです。たたき上げはせいぜい幹事長止まり。麻生さんはプリンスの岸田を次期総理に据えたかった。かつて叩き上げの野中広務が総理総裁になりそうになったのを潰されたのは周知のとおりです。あくまで血統がいい人間でなければトップに立てないというのが自民党です。ですから、菅さんは一旦総理候補から滑り落ちました。今年初頭のコロナ対策は、菅さんは関与できず、今井補佐官らが対応していました。本来なら官房長官がやるべき仕事ですが干されたのです。

ところが5月に入ると検察庁法改正問題が浮上しました。黒川検事正を検事総長に就任させ、安倍政権のスキャンダルを封じ込める役割をやらせることがねらわれましたが、国民の反対世論が高まり法改正ができませんでした。しかも黒川さんは賭け麻雀報道で失脚。そして窮余の策として菅さんがふたたび後継として浮上したのです。安倍さんを守れるのは菅さんしかいないということです。ある意味、検察庁法改正を国民が阻止したことで、菅政権が生まれたという歴史の皮肉ともいえます。つまり菅政権の使命は、安倍政権の負の遺産を守ることにあるわけです。 

究極の劣化を示した自民党総裁選 

菅総理誕生の流れは電撃的でした。二階幹事長が何としても菅に継がせると動き、あっという間に他の派閥が追随しました。そもそも安倍政権が長期安定支配できたのは、二階幹事長が党内を支配し、菅官房長官が官僚組織を支配し、麻生副総理が財務省を押さえていたから。この鉄の三角支配があったから安倍政権を安定させることができた。この三角形の上に乗っていた安倍さんをのぞく政権ができあがったのです。自民党の今回の総裁選は派閥の復活ではありません。以前の派閥は大名みたいなもので、総裁を獲得するために競い合い、党内闘争も激しかった。今回は、二階さんが決めたら他派閥は抵抗できない。党内民主主義も完全に劣化しました。政党は生き物であり、新しい人材が引き継がないと衰退します。安倍政権は後継をつくらないことで安定してきたわけですが、こうして自民党は自己刷新能力を失ったのです。では、菅政権はどのようなものか。菅さんには党内基盤はなく、完全に二階幹事長に党を支配された政権になりました。安倍さんは理念的な政治家だった。だから保守派やネット右翼をひきつけることができました。しかし菅さんは憲法改正に関心が薄い、特に理念のない政治家です。菅さんは安倍政権というよりも、小泉政権の新自由主義を継承していくと思われます。安倍政権は、小泉政権の新自由主義が反貧困の運動をもたらし、民主党政権を誕生させたことをよく踏まえていました。だからそれを許さないために新自由主義色を極力出さないようにしていた。しかし菅政権は新自由主義に基軸に据えることになるでしょう。菅政権に安倍政権のような鉄壁の支配出来るとは思えません。菅と麻生の対立など、鉄の三角形の均衡は早晩崩れていくでしょう。こうした敵の支配の崩れに対して野党がどう対峙していくか問われるのです。 

野党共闘の完成 

 去年、立憲民主党、国民民主党、社民党が野党共同会派をつくりました。立憲民主党、国民民主党、共産党、社民党の政調共同で議論しながら進めていく体制ができました。桜を見る会の問題では、共産党の資料を共有し、国会闘争の中でも共闘が発展した。今年に入り、立憲民主党、国民民主党、社民党の合同があと一歩のところまでいきましたが、玉木代表が翻意し、合意内容を潰して頓挫しました。しかし通常国会が終わり、再び合流しようとの動きになりました。ここで大事だったのは連合の動きです。6月に枝野代表が新自由主義批判を基調とした「命とくらしを守る政治」を発表しました。しかもそれをしんぶん赤旗が異例の紹介をした。さらに連合が、立憲民主党、国民民主党と会合し、「命とくらしを守っていく」との理念を打ちだしました。これは新自由主義批判を理念に据え、共産党、野党合同新党、連合がゆるやかに協働していくという流れができたということです。立憲、国民の合同については、福山幹事長と平野幹事長が両党の統一の方針を練り上げ合意したが、最終局面で玉木が突然分党を宣言しました。この背景に何があったのか。それを明らかにしたのが産経新聞社の月刊誌「正論」に掲載された岡崎敏弘国民民主党参議院事務部長の論文でした。民社党職員出身の岡崎氏は、参議院民主党事務局長として、参議院民主党に強い影響力を行使してきました。岡崎氏らは、両党が合流したら居場所がなくなることを恐れ、玉木代表に分党を仕掛けさせたのです。岡崎氏は、反共で党を支配してきました。岡崎氏と玉木代表は分党することで強引に粘れば、結局連合は妥協するとタカをくくっていたと思われます。しかし連合は屈しませんでした。結局、連合は一枚岩で新立憲民主党を支持する姿勢を貫きました。反共と新自由主義からの脱却がついになされようとしているのです。 

都知事選が野党の命運を決めた 

 こうした野党共闘の流れを決定づけたのは都知事選でした。山本太郎は「空中戦」の有名人票で60万ぐらいは取ります。しかし宇都宮候補の得票とは中身が違います。昨年、共産党系候補を野党共同で擁立した高知県知事選と同じく、都知事選は左派系の宇都宮候補でも全野党が全力を尽くして応援しました。同時におこなわれた都議補選でも、統一候補を擁立しどんどん共同の輪が広がりました。都知事選は得票以上に大きな遺産をもたらしたのです。

 他方れいわ新撰組は、都知事選でボロボロになりました。れいわを支持している人の大半は野党共闘を望んでいる。だから山本太郎が出馬したことに怒りました。都知事選に出馬し、孤立を深めたからです。

 こうしてついに、総選挙にむけて「自公対民共」の一対一の関係ができあがりつつあります。この「一対一」の国民にわかりやすい構図が示されることで、投票率が確実にあがります。しかも新自由主義対反新自由主義という争点も明確です。かくして、野党共闘ははじめての本格的な共闘による総選挙に臨むことになるのです。 

新しい価値観が問われる総選挙 

今度の総選挙は史上初の野党共闘選挙です。「命とくらしを守る」との明確な争点もあります。2015年の戦争法とのたたかいで出来た野党共闘は、「立憲主義を守れ」が一致点でした。しかしいま思い出すべきは、2008年の年越し派遣村の運動です。あの運動では命と暮らしの問題で、連合、全労連、全労協、そして共産党も民主党も一緒に共同しました。実は15年の野党共闘以前から、共闘の萌芽はめばえていたのです。その原点に回帰する必要があります。今回市民連合の立憲野党への要望書が出されましたが、ここでも命と暮らしを守る政治が共通政策として出されています。これまでの野党共闘は数あわせでしたが、これからは理念を共有し、結集し、勝利していくのです。今年暮れに向けてコロナ禍による困難がいっそう広がる気配があります。このような状況下で菅政権の新自由主義的論調が国民に受け入れられるとは思えません。菅政権は自己責任、規制緩和を打ち出し、野党の新自由主義批判と対決点は鮮明です。野党の「命とくらしを守る」たたかいの発展は、社会主義、社会民主主義の歴史と伝統に根ざし、未来を創造していくたたかいです。11月に大統領選挙がおこなわれるアメリカでも同じ争点がたたかわれるでしょう。

 革新懇は長年統一戦線をつくろうと努力を重ねてきましたが、ついにここまで来ました。2大ブロックの完成により投票率も上がります。次の総選挙で与野党伯仲に持ち込み、雰囲気を変えていきましょう。自民党しかみえていなかった国民に野党連合の姿を明らかにしましょう。事実この間、野党についてのメディアの報道は着実に増えてきています。100議席を超えると、メディアもライバルとして報じるようになるからです。

 安倍政権の78ヶ月は時間かせぎでした。課題はがれきのように積み上がっています。そして新しい政治の構築は自民党にはできません。市民と野党の共闘で新しい政治を構築していきましょう。

 

東京4区 市民連合おおたの会結成

議員、予定候補、政党代表の皆さん

 911日、「市民と立憲野党で政治を変えるんだ!!」「市民連合おおたの会」の結成総会。詩人、弁護士、医師、税理士、元大学教授、ママの会、元NPO法人理事長、元教育委員8氏が呼びかけ。中野晃一上智大教授が記念講演。「安倍政治を継承する菅候補(内閣)が早期に総選挙とする可能性が高い」「市民と野党の共闘を更に強めよう」と訴え。海部幸造弁護士(大田弁護士9条の会)が、経過報告と『市民連合おおたの会』の申し合わせ提案。井戸まさえ立民4区総支部長、谷川智行共産4区予定候補、山内社民大田支部支部長、伊藤光隆新社大田総支部書記長、北澤純子区議、野呂恵子大田緑の党区議から連帯する挨拶と市民と野党の共闘を進める決意が述べられました。野本春吉大田革新懇事務局長から政策づくり、候補者の1本化、などが提起され、確認。参加者78人。