2023年12月12日火曜日

新春 2024年総会 市民と野党をつなぐ

           新  春  

東京革新懇 32回総会
24127(土)
東京労働会館7・ラパスホール
 JR大塚駅下車徒歩6分、丸ノ内線新大塚駅歩5分 
(開場午後030)
〇記念講演  午後1時~2

  伊波洋一さん 参議院議員(沖縄の風)

「戦場にさせない-沖縄からの『台湾有事』」

   〇総会 午後210分~5

 ※新春のつどい 午後515分~

東京革新懇代表世話人の奥田靖二さんの手品

 他に関係者による演奏など


【地域から政治を変える】

青梅・所沢市長選で自民が推す現職が大差で敗北。立川市長選では市民と野党の共闘候補が自民推薦を破り勝利。自民党政治に対するが批判が高まり、地域から政治を変える動きが広がっています。東京の各地からの報告です。

世田谷区

「市民と野党の共闘」づくり課題に、「市民と野党をつなぐ会」推進役

 市民連合めぐろ・せたがや共同代表  鈴木国夫

1、世田谷の市民運動の特徴は、仲良く全部繋がっていることである。「戦争させない!9条こわすな!世田谷連絡会」として連携しており、年2回の世田谷区民集会・ピースパレードを行っている。ガザへの侵攻に対しては、年末に統一宣伝行動を40名程で行った。

2、各種老舗団体がある中で「市民連合 めぐろ・せたがや」は、安保法制以来の新顔であるが、「何でも屋」としてフットワーク軽く動いている。政治を変えるための「市民と野党の共闘」づくりを中心課題としており、地元選出の国会議員や各党に働きかけを継続しているが、その時々の重要課題にも機敏に動いている。20234月の保坂区長の再選にも一定の役割を果たした。また最近は、各種の区議会陳情などで、区議さんとの交流も増えてきた。工事中の世田谷区庁舎の完成が2年近くも遅延するという大問題に対しても、疑念を持たれないよう第3者委員会設置を求める運動をリードし実現できた。

3、本丸は政権を替えることであり、そのための野党共闘である。これは、一つの地域運動で出来ることではないので、めぐせたは、東京の各地域組織を結ぶ連絡会である「市民と野党をつなぐ会@東京」の推進役としての活動を重視している。20238月には、立憲民主党東京都連、日本共産党東京都委員会との意見交換会(写真)を、全都各地の代表的な方々30名の参加で実現できた。また、202312月の市民連合による立憲野党の幹事長クラスへの要請行動(写真の三段目)に参加した市民の四分の一は世田谷メンバーであった。これからも視野は全国、世界に保ちつつ、地域で活動を広げていきたい.

 杉並区

衆院選勝利、岸本区長誕生、区議会を大きく変えた

   杉並革新懇事務局長 内藤利治

■2021年の衆議院選挙で、市民と野党の統一候補吉田はるみ氏を東京8区で当選させることが出来ました。30年間8区で議席を独占していた自民党の石原伸晃氏の比例復活も阻みました。また、投票率も全都で一番高い6103%を獲得しました。

  これは、「戦争法反対」の取り組みをすすめてきた市民団体「NOWAR杉並」が土台となって16年に「自由と平和のために行動する議員と市民の会@杉並」が発足、予定候補と市民が数回にわたり円卓会議を行い、共通政策と統一候補への合意文書が交わされました。残念ながら17年の衆議院選挙では、政党間の調整がつかず分裂選挙に、19年に「政治を変える8区の会」を結成し、活動を再開、候補者の一本化には中央の政党間の紆余屈折がありましたが最終的に吉田はるみ氏に決定したのは、公示のわずか4日前でした。

■衆議院選挙での勝利させた力で、22年の区長選をたたかおうと、「住民思いの区長をつくる会」が発足、市民レベルで女性の候補者捜しをはじめました。6月の区長選では、市民と野党の統一候補岸本さとこ氏が、現職3期務めた田中良氏(自民、公明推薦)を187票の僅差で破り初当選しました。投票率は前回より5%増の37.51%でした。 杉並では全く知名度のない候補者でしたが、市民選対を中心に選挙戦を展開。住民との対話を重視した区政を変える連続タウンミーティングを開催。ボランティアがプラスターをもって駅前に立つ「ひとり街宣」を、最終日には3万枚のチラシを一気にまくなど、市民がよく自分ごとの選挙として取り組みました。道路拡張、児童館廃止など住民の意見を聞かない区政に対する市民の怒り、反発が結集した結果です。

23年の杉並区議会議員選挙では、岸本聡子新区政を前進させるためにと、区長に賛同する候補者を一人でも多く当選させるため、投票率アップ作戦をさまざまな市民グループが展開しました。区内各駅での「選挙に行こう」ひとり街宣、告示前は区長自ら1週間夕方ひとり街宣。宣伝カーの運行、選挙割りなど多様な市民グループが取り組みました。また、新区長に賛同する候補者が党派を超え共同街宣も実施。結果、投票率が前回より4%以上アップし、自民現職7名、公明1名が落選、女性議員が前回15名から24名に、議会の過半数を占めました。新人も15名当選。区議会の景色が変わりました。政党・複数会派が8,一人会派が10の計18会派で構成。杉並の多様性、さまざまな市民運動が反映された議会構成になったといえます。

 岸本区政が誕生して1年半、さまざまな変化が生まれています。学校給食費の無償化、補聴器の購入費助成、パートナーシップ制度創設、区内中小企業への物価高騰対策支援、前区長が実施していた児童館、ゆうゆう館等の廃止計画見直し、施設のあり方を住民との対話で検討するなど、住民参加の予算など確実に区政は変わりました。自分たちの手で確実に政治を変えてきたという実感が広がっています。

  こうした到達点を築いてきた一つの要因は、3.11後の「原発NO!」の運動の中で若者を含めた新たな市民運動の広がりがあり、それが「戦争法反対」の運動(NOWAR杉並)へとつながり、また、都知事選挙や区長選挙での統一候補勝利に向けて共同の選挙を何回もたたかう経験を積み上げてきた結果です。そして、何よりも、15年以降の市民と野党の共闘の全国的な運動の中で、杉並なりに市民が軸になりながら、野党との共同を粘り強く広げ積み重ねてきたことにあります。

 今後は、私たちが手にした「住民自治杉並」をめざし、後援会組織である「ソシアルサトコズ」を軸に議会傍聴、街宣、学習会などを継続するとともに、区政問題での対話集会、参加型予算に区民が積極的に参画していくことが求められています。


中野区

 市民運動に新たな希望を持ちながら  

      中野区革新懇事務局長 江田 徹

 2015年、安保法制強行採決の危機感が高まるなか、憲法が壊される危機感を感じた人たちが、従来のいきさつを乗越えて共同しなければダメだと思った。そのためには日本国憲法を守り、平和と人権を大事にする個人も団体も一つになって協力し合うことが必要だと感じた。その思いは一部の人だけでなく、平和を求める人々の共通の願いでもあったのです。


同年7月、可能なかぎりの団体に呼びかけて、市民運動を大同団結させるための相談会が開かれ、「戦争反対! 憲法を守れ!」の共通した願いで共同し、区民にアピールすることで協力しあうことになりました。

その結果、「中野アピール実行委員会」(正式名称「安保法制《戦争法》を許さない中野アピール実行委員会」が結成され、毎週火曜日午後6時から中野駅頭で宣伝行動を開始しました。(強行採決後は「許さない」を「廃止をめざす」に変更)。翌年からは、第2週と4週に縮小しましたが、現在も継続して行なっています。

国会情勢に応じて、各政党の国会議員や都議・区議、学者・弁護士などにも参加を呼びかけて、街頭集会を行なってきました。

昨年、中野区は「憲法擁護・非核都市宣言」四十周年を迎えました。四十周年を記念して、3回のパレードを繰り返し、ロシアのウクライナ侵略に抗議し、即時停戦を求める訴えも行なってきました。

駅頭行動では、GAZAへの攻撃に抗議する集会を行い、平和へのアピールを繰り返してきました。

この活動を通じて団体の垣根が低くなり、それぞれの活動が見えるようになり、共闘が容易になりました。その結果、各種選挙でも共同し、共闘の効果で、勝利できるようになりました。

衆院選挙では選挙区名を付けた愛称(東京7区《渋谷・中野》―しぶなか市民連、今回は東京27区に変更になったので―にいなな!)で活動し、立憲の候補者・長妻昭氏の勝利に貢献しています。

2018年の区長選挙では「区民の声・中野」を結成し、野党統一候補として酒井直人氏を擁立しました。その結果、5選を目指した自公推薦の現職に勝利し、2022年に再選を果たしました。

都議選でも野党共闘と投票率アップ作戦に取り組み、定数削減の下で立憲の西沢けいた都議の当選を果たしました。

区議選では、「誰が何に反対したの?」というリーフを作成。区長の提案した議案や区民の陳情に反対した政党と議員名を一覧表にして駅頭や各戸配布をした。自分が投票した議員が区民要求に反対していることを知りビックリする人、一覧表を大事にバックに入れて持ち替える人がいて、効果の大きさを実感しました。

結果は自民党の現職3人と生活保護バッシングの現職を落選させました。議席増を目指した日本共産党の現職が共倒れになるという事態もありましたが、全体として区長を支える勢力が前進しています。

今年、自民党、公明党の議員が「学校給食を無償化せよ」と本会議で主張するなど、区民の要求との関係で議会に変化が生じていることを強く感じます。区民の声を聞きとり、それを区政に生かすことは民主主義の基本であり、それができるようになることが地方自治の基本だと思います。

この間の選挙を通じて、

○共闘すれば勝てる!

○政治の実態を伝えれば世論は変化する。ことを学びました。そして、行政も議会も

○区民に誠実であること。が大事なことだと思います。

 あわせて、1人ひとりの声を大事にすることが、組織を元気にすることも学ばされました。貴重な経験でした。

政治を変える闘いは、私たちの命と暮らしを守る闘いに直結していることが、だれの目に見えるようになっています。政治を変えることの重要さがだれにもわかるようになっています。    

 中野区革新懇は、「中野アピール」や「区民の声・中野」、「市民連合」などの運動の中で、事務局の一員として努力を重ねてきました。その経験を重ねることで、共同し、共闘することの大事さを自らのものとしてきました。他の団体や個人と共同することで、互いの信頼が深まり、学びあうことができました。それらは何事にも代えがたい貴重な経験であり、今後に生きる財産です。


立川市 

 立川の市長選挙と都議補選での勝利

      立川革新懇事務局長 糸永辰文

2023年行われた9月の立川市長選挙と10月の都議会議員補欠選挙定数2での勝利は、14年頃からの市民運動が継続的に展開してきたことがベースです。安倍政権が、集団的自衛権行使は憲法に違反しないと砂川闘争の最高裁判決を引用した戦争法への激しい怒りは全国民的な運動に高まり、国会に大勢が詰めかけました。採決当日は国会の外では徹夜で憲法守れ! 野党はがんばれ! 戦争NO!と国会内と外で連帯して頑張りました。しかし、15919日未明に強行採決された。志位委員長は「安保法制立」を廃止するために野党の選挙協力で政権交代して立憲主義を取り戻そうと訴えました。

立川では15年に市民会館大ホールで「砂川闘争60周年のつどい」を開催。その後17530日に「立川市民連合」を165人の呼びかけ人で結成。

立川での結成に向けて砂川闘争にかかわりの深い幅広い平和を求める個人と超党派(共産・社民・ネット・緑)で準備をしてきました。その後立憲民主が加わりました。

国政選挙1人区での市民と野党の共同は17年衆院選21区(社民 小糸健介氏)、19年立川市長選(無所属 酒井大史氏)257票で惜敗、20年都知事選挙(無所属 宇都宮健二氏)惜敗、21年都議会議員2人区(立憲 酒井大史氏)勝利、21年衆議院選21区(立憲 大河原まさ子)比例復活当選、239月立川市長選(無所属 酒井大史氏)当選、2310月都議会補欠選挙定数2(立憲 鈴木烈氏)当選しました。17年の衆院21区での闘いでは、立川市民連合としての政策作りと候補者決定はできませんでしたが、その後の国政選挙では政策フォーラムを超党派で繰り返して、最終的には一致できる政策と候補者の一本化が実現しました。市民に見える立川駅北口での超党派議員と市民などが発言するリレートークを17回重ねてきました。市長選挙でも候補者ありきではなく、政策優先で市民連合に参加する議員と市民で政策を作り上げて候補者へ要請しました。こうして協定・回答を受けて超党派の共同が実現するように努力してきました。

都議補選では、積み上げた政策に今日的課題PFAS汚染や立川駐屯地オスプレイ飛来・訓練反対、学校給食費無償化、補聴器購入補助、GLP昭島巨大物流センター開発問題、非正規労働者の正規化などを追加。立川では無名の鈴木烈候補者も政策作りに加わり、一致点を大事にしてスピーディーに進め短期間で市民に知らせる政策全戸ビラ・駅頭配布、立川駅北口デッキでのリレートークなどの見える取り組みができたのが勝利を引き寄せたと思います。

 立川革新懇は市民連合の活動を発展させるために努力する方針のもと、立川革新懇から市民連合の事務局へ4人が参加しています。立川市民連合は事務局6人で砂川闘争の当事者「伊達判決を生かす会」の島田さん、砂川闘争を先頭で闘った父をもつ自治労東京で三多摩平和運動センターの中心的な石野さんなども一緒に取り組んでいます。

立川市民連合には立憲野党所属の個人が設立当初から一緒なのでこれを大切にしながら運営しています。

来年は都知事選挙があり大きくまとまることを大事にしたいと思います。また衆議院小選挙区選挙は21区の区割りが立川市・日野市・八王子の一部になりましたので、その対応に追われたりしていますが「市民と野党の共同」の強化なしには政権交代と立憲主義の回復は実現しません。24年は大事な年になります。共同の輪を広げましょう。


青梅市 

72年に渡る自民市政転換、現職大差で破る

挙で変えよう市民連合おうめ代表 加藤弘吉

青梅市は、市発足以来72年渡り自民党系市長であり「継承と改革」を上げる現職と、「今、青梅が変わる時」を上げる新人の対決で、若い市長を選ぶという化学変化が起きたと捉えています。その要因として、人口減少で特に小学生が全市で1200人から半減し、不登校児童が激増し、逆に65歳以上の高齢者が多くなり将来の青梅市への不安が市民の中で高まり、投票意識行動に変化が起きて投票率も3%アップし9千票の大差がつきました。また、国政の自公政権の利権腐敗政治に嫌気がして、既存の政党では青梅は変えられないとの主権者の意識が芽生えたことだと思います。

一方、市民連合おうめとしての活動の一端を紹介します。2019年の前回市長選同様に市民と共闘できる候補者擁立を目指すも擁立できず、立候補を表明または検討している現職、新人を含む3人に公開質問状を出して、その回答を公開しました。その上で、市民連合おうめとしての政策要請6項目を決定して、独自チラシ(1万5千枚)を作成し、新聞折込、ポスティングを公示前に街宣活動を実施しました、同時に大勢待利明候補への自主応援の声明を西多摩の地元2紙へ掲載しました。そして、選挙期間中はチラシ配布、電話かけや投票へ行こう呼びかけも街宣、SNSでも実施しました。

苦労した点は、候補者は無所属でしたが都民ファーストの会と国民民主党が推薦を出したことで、会員の中で警戒感が渦巻き、大勢待候補と公示前に2回、当選後1回の意見交換会を実施して、今後も市民連合と意見交換会などを実施するなどを表明されたことで、今後も応援した立場として市議会傍聴などで市政監視を含めて市政への参加することを呼び掛けています。

 最後に25区として9市町村中5市町村で化学変化が起きているので、来年予定されている昭島市長選、都知事選、衆議院選へ繋がるように努力したい。


2023年11月4日土曜日

11.3 憲法大行動

 つなごう 憲法を生かす未来へ

11月3日、国会正門前に4000人

国会正門前
      
              国会正門前の舞台

        小池晃さんの訴え(動画)
福島瑞穂さんの訴え(動画)
          石川大我さんの訴え
            櫛淵まりさんの訴え
           高良鉄美さんの訴え

2023年10月30日月曜日

 「新しい戦前」にしないために 

神戸女学院大学名誉教授 
           石川康宏 

 107日の東京革新懇学習交流会での石川康宏さんの講演の要旨をご紹介します。

 

平和ひらく本当の道を語ろう

岸田政権は「戦争の準備」を急速に進めているが、そのことの危険性については極めて無自覚。しかし、危険性を指摘するだけではだめ。政府はそれを平和のためだと説明している。だから「本当の平和への道はこちらだ」としっかり対案を提示する必要がある。「危険だからブレーキ」というだけでなく「こちらこそ本当に平和を守る道」と魅力ある明るい道を示さねば。そこが「新しい戦前」をめぐる現在の分岐の焦点。対案を語る力を身につけよう。

 アメリカの戦略への実践的一体化へ

政府が大軍拡のアクセルを急に踏み込んだのは、202212月の「安保3文書」から。その背景にはアメリカの戦略が。アメリカは力でアジアを管理するのに、日本などとの共同の抑止が必要だと。そこで「3文書」はそのアメリカとの共同戦争をめざした「戦争法」(2015年)を前提に、実際に発動するための実践的な準備をするとしている。

政府は「反撃能力」とごまかすが、自衛隊制服組トップだった河野克俊・前統合幕僚長は、はっきり「攻撃力」と。さらに河野氏は自衛隊では「目標情報の把握や打撃効果の判定」能力が不十分だから、ミサイル発射はアメリカに頼らざるを得ないとも。どこを攻撃するかはアメリカ頼み。日米の軍事的一体化の実態は米軍の下請部隊になるということ。アメリカの統合防空ミサイル防衛(IAMD)の一環。アメリカはこれを「アメリカ本土とアメリカの国益」を守るものと説明している。日本の市民の命や安全は考慮の外。 

北京にまで届くミサイルを、軍需産業の暗躍も

ミサイルは1000㌔、2000㌔、3000㌔と射程距離の長いものを購入、開発するとしている。射程距離が1500㌔もあれば九州から北朝鮮の全域にミサイルが届く。2000㌔あれば沖縄や九州から中国の北京にまで届く。相手側からすれば「日本は防衛だけと言っていたのに、こちらにまで届く攻撃の準備ばかりしているではないか」「やられる前にやる準備を」と緊張と警戒心を高めさせる。それは非常に危険なこと。

政府はアメリカからトマホークを購入するが、生産しているのはレイセオンという軍需資本。アメリカのオースティン国防長官はレイセオンの取締役だった。前国防長官のエスパー氏はレイセオンの副社長だった。他方、この6月に政府は軍需産業支援法を成立させたが、この背後には日本の軍需産業の動きが。日本経団連には防衛産業委員会があり、その委員長は経団連副会長でもある三菱重工。軍需産業支援法は彼らの要望を丸呑みした軍需産業への利益保障法。日米ともに政府と軍需産業が深く結びついている。

レイセオンの売上高に占める軍需比率は65%(2021年)。日本最大の軍需資本である三菱重工業は売上収益に占める「航空・防衛・宇宙」の比率が15%(2023年度第1・四半期)、受注に占める比率で43%。平和産業としての発展を求めていかねばならない。 

すでに起こっている緊張のエスカレート

日本をとりまく安保環境が厳しいとして、日本政府は軍拡と米軍への従属的一体化だけを進めている。しかし軍拡は「敵」とみなされた相手の軍拡を引き出して、際限のない軍拡競争を導く。この夏818日に日米韓3ケ国首脳が軍事的連携の強化で合意したが、その翌日、北朝鮮はただちに海軍に戦術核を配備させると発表した。こちらが強気に出た時、相手も強気に出るなら決して軍事的優位は実現しない。逆に安保環境は悪化するばかりで、一向に平和や安全は見えてこない。

北朝鮮の軍事費は現在の日本とほぼ同額だが、中国の軍事予算は日本の7倍弱で、そもそもGDP5倍に近い。とても軍拡競争のできる相手ではないことも重要な事実。 

日本全土が戦場の危険、市民は逃げまどうしかない

 万が一戦争がはじまればどうなるか。アメリカの戦略問題国際研究所というシンクタンクが「台湾有事」についてのシミュレーションを行なった。その結果、日米は何十もの艦船、何百もの航空機、何千もの兵士を失うと。何千もの若い自衛隊が死ぬ見込み。それをなんとか回避するのが政治の役割ではないか。しかし、自民党と公明党の岸田政権にその動きはない。

 戦場が広がれば、在日米軍基地、自衛隊基地のすべてが敵の攻撃目標となる。敵基地攻撃の長射程ミサイルは、まず鹿児島から台湾にいたる南西諸島に配備されるが、次の段階では富士山周辺に、その次の段階では北海道に配備の計画。つまり日本列島は全体がミサイル列島となり、したがって列島の全体が敵の攻撃目標になる。

浜田防衛大臣(当時)もわが国に被害が及びうると答弁した(202326日、衆院予算委員会)。北海道から沖縄まで全国の自衛隊基地を「強靱化」する予算が5年で4兆円すでにつけられている。わが家には強靱化予算は降りてこない。まず軍を守るため。

 市民は空からミサイルが降るなか逃げまどう。全国の原発のどれかが被弾すれば数百万の市民が数十㌔、数百㌔と避難しなければならなくなる。戦争が長引けばエネルギー自給率10%、食糧自給率が海外からの種子や肥料などの輸入が万が一継続したとしても38%のこの国では、暑さ寒さで人が死に、3人家族の2人は餓死していく。

これが「もし戦争になったら」のリアルな現実。軍拡でなんとかなると考える方がお花畑。戦争になれば日本は焼け野原。いかに戦争に起こさないかが目前の課題。 

東アジアで戦闘死者が激減、平和ひらくASEANの努力

このグラフは第二次世界大戦後2010年代までの世界の戦闘死者数を示したもの。第二次大戦直後、東アジアでは東南アジアの独立戦争、朝鮮戦争などで多くの死者。一時は落ち着くが、アメリカによるベトナム戦争の拡大で再び死者が増える。しかし、1975年にベトナム戦争が終わった後は、カンボジアとベトナムの戦争などを例外に、東アジアでの戦闘死者はきわめて少なくなっていく。その一方で、70年代の終わりから東アジア以外の地域での死者が増えていく。

東アジアでの死者の現象は偶然ではない。70年代以降の東アジアには、軍事力で平和を守るのでなく、互いの信頼と友好を深めることで平和を守ろうとする新しい取り組みが生まれていた。その主体はASEAN(東南アジア諸国連合)。アメリカによるベトナム侵略戦争の中、同じ東南アジアの国に米軍基地が置かれ、そこからベトナムへの爆撃機が飛んだ。軍事大国アメリカによる東南アジアの分断。二度と同じことがあってはならないと、75年アメリカが敗北すると、ASEAN各国は東南アジア友好協力条約(TAC)を結ぶ。互いの主権と領土を守る、内政には口出ししない、紛争は平和的に解決する、武力行使はしない、武力での威

“絶対に戦争しない”条約をあらゆる国によびかけて嚇もしないといういわば“絶対に戦争しない条約”。これが1976年のこと。 

その後、ASEANTACASEAN加盟国の条約にとどめず、ASEANとかかわりをもつすべての国に呼びかけた。現在の加盟国は10カ国。そのASEANが世界54の国とEUとのあいだにこの条約を結んできた。ASEANとは絶対戦争しない条約に、北朝鮮や中国も応じている。

東アジアにおける最後の正規軍同士の衝突は1988年の中国とベトナム。南沙諸島の島の領有権をめぐる衝突。その後、ベトナムは92年にTACに、95年にASEANに加わる。そうなると今度はASEANと中国の関係が微妙になりかねない。そこでASEANは中国を遠くに追いやることなく、逆に自らの外相会議に招いて「対話国」とした。積極的に相互の信頼を高める努力を開始した。その結果、2002年に島の領有権問題で敵対的行動はとらない、平和的解決をめざすという「南シナ海に関する関係国の行動宣言」で合意する。さらに03年にはTACを結んでいく。今日も特にアメリカとの軍事同盟国であるフィリピンとの間に、島や海域の領有をめぐる軋轢が起こっているが、それでも軍は出すことはできない。そうなればTACに反することになる。 

ASEANインド太平洋構想の大きな力

現在ASEANは信頼と友好にもとづく平和の共同体をアジア全域に広げる大志をもっている。アジアのすべての国が相互にTACのような条約を取り交わし、さらにアジアの外にもこれを広げることで戦争のないアジアをつくろうと。壮大な展望。そこへの重要な一歩がASEANインド太平洋構想(AOIP)。ASEANは国連でも2国間でもこれの推進を表明し、ASEAN以外の国に積極的によびかけている。

先ほど、818日の米日韓による軍事連携強化を紹介したが、この時の共同声明は中国を軍事的に包囲することを柱としながら、他方でASEANAOIPを積極的に推進すると書いている。3カ国は中国を排除して敵にまわす方針で、ASEANは中国を仲間にいれて信頼を高める方針。両者はまったく相反する。しかし、そう書かずにおれない現実的な力をASEANとこの路線はもっている。岸田首相も日米安保路線とAOIPの両方を推進するとしている。

もしAOIPの推進を本気で考えるなら、憲法9条の「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」を指針に、中国、北朝鮮、ロシア等との平和を拓くための対話をただちに始めるべき。これは9条をいかした外交の重要な柱。 

東アジアとヨーロッパの違い

世界最大の軍事同盟NATOをもつヨーロッパでは、1988年以降、正規軍同士の衝突が10回以上起こっている。東アジアにはこの地域の国同士の軍事同盟がない。あるのは米日、米韓、米比の同盟だけ。またヨーロッパには意見の相違をこえて対話と友好を進める組織が機能していない。ソ連崩壊後のロシアと欧米の関係づくりはいつもNATOが前面に立って行なってきた。軍事同盟は仮想敵をもつもので、NATOはソ連・ロシアを仮想敵とした。そういう組織では信頼と友好は深められない。それに対し東アジアにはすでに見たASEANの取り組みが。

NATOに習って軍拡ではなく、ASEANにならって合意と共同を進めることこそ平和への道。NATOは軍事力による戦争の抑止に失敗している。ASEANは戦争を起こさない東アジアづくりに貢献してきた。両者の実績が違う。この道こそ平和を拓く道。 

政治の方向を転換せねば

岸田政権は、安倍政権がつくった「防衛装備移転3原則」をさらに踏み越えて、イギリス・イタリアと共同開発する最新鋭戦闘機の輸出に道を開こうと。いわゆる殺傷武器の輸出解禁。日本が輸出した武器で人が殺される。武器が使われるほど軍需産業はもうかることになる。すでに日本の先端半導体がアメリカの武器製造に提供されているとの報道もある。日本の経済や社会が世界のどこかでの、あるいは日本自身の戦争に依存するものになってしまう。「死の商人」国家、「戦争待望」国家になる。そうしないための政治の方向転換が急務。

岸田政権の支持率は低く、それも安倍政権期と違って若い世代ほど低くなっている。遠からず実施される総選挙で、戦争国家の道を転換する立憲野党の政権づくりをめざす必要がある。最大の力は、平和を求める世論の強まり。平和めざす市民と野党の共闘を求める世論の強まり。革新懇はここで多いに力を発揮したい。

政治の主人公は1人1人の市民。指示まちでなく、誰にも気兼ねすることなく自由に声を。思うまま自由に活動を。全国をリードする東京革新懇の取り組みに期待。ともにがんばりましょう。

※以下は当日の動画です

                    動画 石川康宏講演①

動画 石川康宏講演②
           
動画 石川康宏講演③
動画 石川康宏講演④          

2023年10月2日月曜日

 暴走を続ける
岸田大軍拡政権に引導を渡そう


法政大学名誉教授  
東京革新懇代表世話人  

                                                   五十嵐 仁 

 代表世話人の五十嵐仁さんに寄稿していただきました。

 

空振りに終わった内閣改造 

 これほど評判の悪い内閣改造が、これまであったでしょうか。与党からも落胆の声が上がっているようです。「通常は『ご祝儀』を含めて改造で少しプラスになるものだが……。改造が評価されていない」と。

 毎日新聞の調査では26%あった内閣支持率が1ポイント下落して25%となり、過去最低に並んだと言います。ご祝儀どころか、罰金を取られたようなものです。いつまで続けてほしいかとの問いに「早くやめてほしい」との答えが51%で最多となっています。

 岸田首相は来年秋の総裁選挙に向けて、刷新感やイメージアップのために5人の女性閣僚を起用しました。しかし、麻生派会長の麻生太郎副総裁、茂木派会長の茂木敏充幹事長、安倍派幹部の松野博一官房長官ら「骨格」がそろって留任し、枝葉は変えても幹は変わらず同じ形に見えます。

女性5人の起用について、岸田首相は「女性ならではの感性や共感力の発揮に期待したい」と述べ、個々人の資質や専門性を評価したものではなかったことを吐露しています。副大臣と政務官54人の人事では派閥順送りの推薦をそのまま受け入れたため、初めて女性がゼロになって大きな批判を浴びました。

選挙対策委員長に小渕優子元経産相を起用したのも問題になっています。自身の政治団体をめぐる不明朗な会計処理が発覚し、秘書2人が有罪となって大臣を辞任した過去があるからです。このとき家宅捜索前にパソコンのデータを保存するハードディスクに電気ドリルで穴を開けたことが報じられ、「ドリル優子」などと呼ばれました。

 このように、岸田内閣の改造は不発に終わっています。自分の都合ばかり優先した内向きの人事だったからです。マイナンバーカードやマイナ保険証の強要、福島第1原発の汚染水の放出、事実上の消費増税となるインボイスの導入、県民の声を無視して強行している沖縄の辺野古新基地建設など、国民の声の無視も目に余ります。支持率が上がらないのも当然でしょう。

 特にマイナカードをめぐっては、別人の公金受取口座を誤登録して個人情報が漏洩した問題で、デジタル庁と国税庁が政府の個人情報保護委員会から行政指導されました。健康保険証の医療情報とのひもつけミスも8400件以上確認されています。トラブルは底なしで、制度の欠陥は明らかです。国民への強要を止め、保険証の廃止を撤回するべきでしょう。 

前のめりになっている改憲・大軍拡 

これほどひどい発言が、これまであったでしょうか。憲法違反の軍事と戦争への前のめりもこれまでになくひどいものです。自民党の麻生副総裁は台湾を訪問し、有事の際には実際に「戦う覚悟」が抑止力になると講演しました。戦争や武力の行使だけではなく武力による威嚇も「放棄」した憲法9条を持つ日本の与党幹部として、断じて許されない発言です。

先の内閣改造でも、改憲・軍拡の推進に向けての布陣が鮮明になっています。これまで自民党の憲法改正実現本部事務総長代行を務め、安保3文書の取りまとめや殺傷兵器の輸出を主張してきた木原実氏を防衛相に起用し、自民党の憲法改正実現本部事務総長や衆院憲法審査会で与党筆頭理事として改憲の旗を振ってきた新藤義孝氏を入閣させました。改憲タカ派の高市早苗経済安全保障担当相と萩生田光一政調会長も留任しています。

来年度予算の概算要求でも防衛費の突出は顕著で、今年度を1兆円も上回る7.7兆円に達しました。安倍政権時代の1.5倍にもなる額です。防衛予算は2020年に文部科学省の予算を上回り、来年度予算では1兆8000億円もの差がついています。教育より軍事を優先する岸田政権の姿勢を象徴する異次元の大軍拡予算になりました。

しかも、額を明示しない「事項要求」が多用され、さらに増えることは確実です。全国の自衛隊施設の強靭化、陸海空3自衛隊の統合的な運用のための統合司令部創設、日米融合の統合防空ミサイル防衛(IAMD)の本格的な強化のため予算なども計上されています。実際に戦える自衛隊に向けて着々と手が打たれているというわけです。

外交面では、8月の日米韓首脳会談で首脳・外相・防衛相・防衛担当者による会談を毎年定期開催することが合意され、3か国の軍事同盟体制の強化が図られました。岸田首相の北大西洋条約機構(NATO)への急接近、日米韓による「ミニNATO化」、イギリスなどNATO加盟国はじめオーストラリアやインドなどクワッド加盟国との軍事協力も進んでいます。

改憲・大軍拡を阻止して憲法の平和原則を守る課題は、日本の安全を守るうえで急務になっています。同時にそれは、日本周辺の緊張を緩和して安全保障環境を改善するために不可欠の課題でもあります。岸田大軍拡の内容や実態を学び、保守層や無党派層を含め、戦争だけはだめだという人々を幅広く結集することが今ほど大切になっているときはありません。 

混乱と危機に瀕する国民生活 

これほど酷い混乱と危機が、これまで国民生活を脅かしたことがあったでしょうか。物価高の大波が押し寄せて国民の生活と営業を直撃しています。それでなくとも、コロナ禍による外出制限や行動抑制によって国民生活は大きな困難にさらされ、経済は大打撃をこうむってきました。

世界も同様で、100以上の国や地域では消費税を引き下げて生活を支える措置をとっています。しかし、岸田政権は税金を下げるどころか、10月からは事実上の消費増税となるインボイス制度を導入しようとしています。個人事業主やフリーランス、零細企業は大きな打撃を受け、廃業や倒産が続出するのではないでしょうか。

このような困難に拍車をかけているのがアベノミクスの失敗です。インフレになれば物が買われるから景気が良くなるというリフレーション理論や、富める者が富めば貧しい人にもおこぼれが回るというトリクルダウン理論は幻にすぎませんでした。日銀による異次元の金融緩和で円安が進行し、ウクライナ戦争による物資不足とも相まってガソリンなど生活必需品の価格高騰が止まりません。

福島第1原発の汚染水放出に対して中国は日本の水産物の輸入を全面的に禁止する対抗措置を取りました。岸田政権が「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」という約束を破り、福島の漁業者の了解だけでなく中国に対する根回しもせずに一方的に放出を強行した結果です。「風評」被害対策だけでなく、このような「実害」に対しても解決のための外交努力が欠かせません。

このようななかで日本の国力は低下し続け、国内総生産(GDP)でドイツに抜かれて第4位になろうとしています。1人当たりではすでに27位と過去最低で、国際競争力では35位という有様です。実質賃金は低迷し、税金と社会保険料の負担は増すばかりで、貧困率は15.4%とG7加盟国で最悪になりました。

これからも収入は増えず、軍拡のための大増税や少子化対策を名目とした社会保険料の引き上げが予定されています。これらを合わせた国民負担率は50%に近づいており、江戸時代の「五公五民」に逆戻りしそうです。

食料自給率も38%にすぎずエネルギー自給率は12%、物価の高騰で食の窮乏化が深刻になっています。民間のフードバンクで命をつなぎ、子ども食堂に頼るのは子どもだけではありません。食料支援に学生や若者が列をなしています。衣食住などの生活必需品が満たされない絶対的貧困が再び頭をもたげ始めました、

これからの日本は「物の豊かさ」ではなく「心の豊かさ」を求める時代に変わっていくと主張された時もありました。もはや絶対的貧困は解決され、これからの問題は相対的貧困だと言われていた時もありました。そんな時代が懐かしくなるような、深刻な貧しさが私たちの前に立ち現れつつあります。 

時代逆行の人権と民主主義の蹂躙 

 これほど恥ずかしいことが、これまであったでしょうか。5月に広島で開かれた先進国首脳会議(G7)の直前、日本以外の6か国とEUの駐日大使から性的少数者(LGBTQの人権を守るための法整備を促す書簡が届けられたからです。通常国会では理解増進法が成立しましたが、「不当な差別はあってはならない」などと修正され、「差別増進法」に歪められてしまいました。

 7月には国連の人権理事会作業部会の調査団が派遣され、ジャニーズ事務所をめぐる少年タレントに対する性加害が取り上げられて注目されました。しかし、調査内容はそれにとどまらず、女性、性的少数者、障害者、アイヌなどの先住民族、被差別部落、労働組合、難民や技能実習生など200項目に及んでいます。これだけ幅広い分野で、人権侵害の疑いがあるというわけです。

 通常国会で成立した改定難民認定法も難民の人権を侵害する内容でした。ジェンダー格差の点でも日本は146か国125位で、政治分野では138位にまで低下しています。平等実現には政治の意思が重要ですが、その分野でこそ女性の地位が決定的に低いという点に大きな問題があります。

 報道の自由度でも日本は26位でG7参加国では最低です。テレビ放送については放送法の解釈変更によってメディア支配を強めようとしていた総務省の内部文書が明らかになりましたが、高市元総務相はうやむやにしてしまいました。マスメディアの権力への監視や政権への批判力も弱体化し失われる一方です。

 岸田首相は折に触れて「法の支配」や「自由で開かれたインド太平洋」「先進国との価値観の共有」などと繰り返しています。しかし、法の土台である憲法をないがしろにし、少数者の人権や報道の自由を踏みにじっているのが実態です。他の先進国と価値観を共有せず、時代の流れに逆行しているのが岸田政権の姿なのです。

 今年の9月1日は関東大震災から100年で朝鮮人などに対する虐殺事件からも100年を迎えました。小池百合子東京都知事は今年も虐殺犠牲者に対する追悼文の送付を見送り、松野官房長官は記録が「政府内に見当たらない」と発言しています。歴史の事実を直視せず、加害の歴史への責任を回避しようとする点でも、他の先進国とは異質で時代逆行の恥ずかしい姿だというしかありません。

 岩手と立川の教訓に学ぼう 

 日本は政治でも経済・社会の面でも、先進国ではなくなりつつあります。政治改革・行財政改革・構造改革など、あらゆる改革が失敗続きだったからです。これからも、平和で豊かな希望の持てる国づくりは期待できません。岸田政権の下で、政治を変えなければ生きてゆけないギリギリの崖っぷちへと、私たちは追い込まれてしまいました。

政治を変えてこのような苦境を打開する唯一の道は、市民と野党の共闘にしかありません。それはいかに困難でも、そこにしか出口がないのであれば、それを目指すしかないのです。最近行われた岩手県知事選と立川市長選は、このよう教訓と展望を示しています。

岩手県知事選で当選した達増拓也知事は、立憲民主を基礎に国民民主や共産、社民などの県民連合が大きな力になったと述べています。立川市長選でも元立憲民主党都議の酒井候補が約1600票差で当選しました。その結果、世田谷・中野・杉並・武蔵野・小平・多摩・立川など東京西部で野党共闘の非自民首長が誕生しています。

今年の秋には岸田政権を追い込んで解散・総選挙を勝ち取ることが必要です。来年7月には東京都知事選もあります。これらを見据えた市民と野党の共闘を草の根から再構築するために、地域や職場での共同と連携に向けての努力が欠かせません。

立憲民主の支持団体である連合には、イデオロギー的な偏見を捨てて共闘を認め、政治や選挙については立憲民主の自主性に任せて余計な口出しをしないという節度ある対応を期待したいと思います。働く人々の利益実現や働くルールの確立を目指すという点では、全労連や共産党との大きな違いはないのですから。

「新しい戦前」が懸念されている昨今ですが、戦前にも「反資本主義、反共産主義、反ファシズム」という「三反主義」を掲げて共産党を排除し、大政翼賛会に合流して侵略戦争に協力した無産政党がありました。社会大衆党です。立憲民主や国民民主にはこう言いたいと思います。このような戦前の過ちを、二度と繰り返すなと。