2026年9月30日水曜日

有原誠治さん(東京革新懇代表世話人)秋月平和賞受賞

 東京革新懇代表世話人 

有原誠治さん秋月平和賞受賞


 私は2005年にアニメーション映画『NAGASAKI1945アンゼラスの鐘』(以下『アンゼラスの鐘』)を監督。その原作が、秋月医師の「長崎原爆記」。残留放射線の凄まじい影響を描いた『アンゼラスの鐘』は、完成と同時に海外でも上映され反響を呼びました。被爆から80年目を迎えた昨年、長崎県映画センターは、県内すべての中学校に『アンゼラスの鐘』のDVDを贈る募金運動を呼びかけ、私もそのお手伝いをしました。そうしたことが、長崎県映画センターとともに、第17回秋月平和賞を受賞する栄誉に恵まれました。

 

大江京子さん講演「戦争も改憲も許さない!」

     戦争も改憲も許さない 

    市民の声で政治を変えよう


改憲問題対策法律家6団体連絡会事務局長

日弁連憲法対策本部委員 弁護士 大江京子さん

 

 

26年9月16日に、全労連会館で開催された憲法共同センター総会に於ける大江京子さんの講演の要旨をご紹介します。

 

憲法の平和主義を知ろう

平和は単なる理念ではなく、基本的人権として平和的人権を保障する非常に先進的で今でも古びていない。国家の安全保障から人間の安全保障にカジを切った。

日本国憲法前文は「日本国民は、①恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。

②われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位をしめたいと思う。

③われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」と記している。

 ①は、依拠するのは、国家・軍事力ではなく、諸国民の公正と信義であることを宣言し、世界中の平和を愛する市民と連帯し、戦争をやめさせるとの積極的平和主義を掲げている。そして、保持するのは市民の安全と生存であり、国家の安全ではない。

 ②は、憲法は構造的暴力を除去し、戦争のない平和な国際社会を創造するため、日本政府と市民に積極的な行動を求める。【積極的平和主義】

 ③は、自国のみが平和であればいいとは考えていない。平和の問題を単なる理念や国家の政策の問題とはせず、全世界の国民が等しく保障されるべき基本的人権「平和的生存権」としてとらえる。

 

徹底した非戦・非暴力平和主義

 国連憲章は、1945年6月26日に採択され、2条4項は「すべての加盟国は、…武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土又は政治的独立に対するものも、慎まなければならない」としているが、日本国憲法9条1項は「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段として、永久に放棄する」と記し、第2項で戦力不保持と交戦権を否認している。

 国連憲章採択後に広島・長崎の原爆投下があり、日本国民は、アジア太平洋戦争の痛烈な反省と唯一の戦争被爆国としての苛烈な体験に基づき、徹底した非暴力・非戦の平和主義を憲法で定めた。核戦争が人類の破滅を招くと世界に警鐘を鳴らすとともに、アジアの人民に対する非戦の誓いでもあった。「自衛」戦争も含め、軍事的オプションを排除し、「政府の行為によって、再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し」「憲法を確定する」している。

 

最高価値とする「個人の尊重」

 憲法13条「すべての国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」。人は生きているだけでかけがえのない価値を持っていることを認めて尊重しようとする原理だ。この原理はエゴイズムに反対する。他人を犠牲にして自分だけの利益を追求することは許されない。みなが幸せになる社会を憲法は指向する。個人を犠牲にする全体主義に反対することでもある。個人の尊厳が憲法の最高の価値であり、基本的人権の保障、幸福追求する権利を認めている。

 

表現の自由は民主制の基盤

 憲法21条は「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と記しているが、言論表現活動(知る権利を含む)によって、国民(主権者)が政治的意思決定に関与するという民主制の基盤を支える基本的人権である。

 「政治向き」の話をすると嫌われる。子どもに「政治的」なことを教えてはいけないと思わされていないか。他者との対話は、主権者としての当然の権利であり、個人の幸福を追求する権利であり、民主制の基盤である。署名での対話、街頭・戸別訪問での訴えは、他者に対する対話を求める民主主義の実践だ。孤立と分断を跳ね返し、人とつながる、対話することを恐れない。平和主義はまさに行動だ。

 

衆院憲法審査会の攻防

 今特別国会では、衆議院憲法審査会は、改憲派が9割を占め心配されたが、改憲派である自民、維新、国民の3党の意見が一致したのは任期延長改憲のみ。緊急政令・緊急財政措置、9条改憲、合区解消では足並みが揃わなかった。 

 緊急事態条項イメージ案をつくらせ、これを契機に一気に条文起草委員会の設置をねらったが不発に終わった。条文起草委員会の設置は、衆議院憲法審査会として憲法改正原案作成を決定したと同義であり、設置されてしまえば、憲法改正原案の国会提出までは一直線になる。 

 改憲派の強行を阻んだ最大要因は、国会外の改憲反対・戦争反対の声、全国に広がったペンライトデモであった。

緊急事態条項とは、戦争・内乱・恐慌・大規模災害など非常事態において、国家権力が憲法秩序を一時停止して非常措置の権限を国家機関(首相、政府)に与えるものである。自民と維新は、①国会議員の任期延長、②緊急政令、③緊急財政処分の3つを憲法に創設せよと主張している。

 日本国憲法は緊急事態条項をあえて設けなかった。憲法制定が議論された第90回帝国議会で金森徳次郎国務大臣は「民主政治を徹底させて国民の権利を十分擁護する為には、政府一存で行う緊急事態条項は認めるべきではない。緊急事態条項の余地を残せば、(中略)それを口実に、民主主義・立憲主義憲法が破壊せられる虞れ絶無とは断言しがたい」と答弁している。

 国会議員任期延長改憲については、自民党は「いよいよ条文案を詰める段階に入っている」。維新は「直ちに条文起草委員会を設置すべき」。国民民主党は「国会議員の任期延長と合区問題に限って条文起草を急ぐべき」としている。

 

自衛隊明記の改憲案の意味

 2018年の自民党の自衛隊明記の改憲案は、憲法9条1項2項を維持しながら、「前項の規定は、(中略)自衛の措置をとることを妨げず、(中略)自衛隊を保持する」としており、集団的自衛権を含む海外派兵を可能にし、首相に統帥権を与え、憲法で自衛隊の任務や権限を縛らないものとなる。平和主義憲法の構造が根本的に変わってしまい、「軍事の論理」「軍事機密」が「個人の尊重」「基本的人権の保障」よりも優先する国へと変わる危険性を持つことになる。

 

高市政権の戦争する国づくりにどう立ち向かうか

〇攻撃を受ける危険があるのか、冷静な議論こそ必要だ。

〇中国が日本を侵略するのか?中国が台湾攻撃の確率は?台湾有事は日本有事か?

〇朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争、今年の米イラン戦争でも、日本が戦争当事国にならなかったのは9条があったからだ。

〇政府は戦争が始まった後のことを説明しない。仮に日本が先にミサイルを発射すれば、相手国も日本の米軍基地・自衛隊基地に一斉に反撃する。原発60基、破壊されれば壊滅的被害。それ以前に経済封鎖で餓死の危険がある。

〇軍事力増強は周辺諸国との緊張を高めるだけだ。軍事費増強の余裕があるのか。財政破綻になるのではないか。

〇日本政府はアメリカ頼み。アメリカは中国と戦争する気はない。日本はアメリカの下請けとして中国とたたかうはめに。アメリカの戦略だ。

〇兵器の近代化、無人兵器、AI兵器、サイバー攻撃、宇宙開発と、軍拡競争は際限のない「脅威」の拡大再生産となり、核戦争をおびき寄せる。

 

戦争できる国で安全になるのか

 世界平和指数(GPI)は、国際シンクタンクの経済平和研究所が発表する国・地域ごとの平和度を数値化した指標。大きく「社会の安全と治安」「継続中の国内および国際的な紛争」「軍事化」の3領域。

 2025年版のGPIでは、アメリカの平和度は世界で163ヵ国中128番目(来年大きく順位を下げる)。日本は、2012年の5位から軍事化で12位。1位アイスランド、2位アイルランド、3位ニュージーランド、4位オ―ストリア、5位スイス。中国98位、北朝鮮149位、イスラエル155位、シリア157位、ウクライナ162位、ロシア最下位163位。

 

軍拡より暮らしと命

 安倍政権では、軍事予算急増の一方で社会保障は4兆3000億円減。2022年の安保3文書で防衛費5年で43兆円GDP比2%に。2025年概算要求では防衛省は前年比7.4%増の8兆4700億円(2024年度補正予算8200億円、米国兵器ローン8兆4300億円加え実際は合計17兆7000億円)。2026年度予算では9兆円を越え、兵器ローンを加えると17兆円。

 F35戦闘機147機購入(1.7兆円)。待機児童88万6000人分(1.4兆円)。大学授業料無償化1.8兆円、児童手当高校までの延長(1兆円)、小中学校給食無償化(4386億円)、年金受給者全員に年間12万円追加(4兆8612億円)、公的保険医療の自己負担分をゼロに(5兆1837億円)。

 

憲法の非暴力平和主義を政府に求める

 日本が今やるべきは、イスラエルによるパレスチナ人民ジェノサイド、イスラエル・アメリカが始めたイラン戦争をただちにやめさせ平和の構築と復興に力を尽くすことだ。

 アジアでは、中国、韓国、北朝鮮、東南アジア諸国らと平和のために信頼関係を築いて、東アジアで絶対に戦争させないための地域の枠組みを作ること。そのためにも、日本が過去の植民地支配と侵略戦争の過ちを認め真摯な反省と謝罪をすることが不可欠だ。

 重要なのは、反省と謝罪が口先でないことを示す、歴史修正主義は許さない、敵国攻撃兵器は持たない、武器輸出も解禁しない、中国との戦争を想定した軍事演習もやめる。中国とは、日中両国は「すべての紛争を平和的手段により解決し、武力又は武力による威嚇に訴えない」「アジア・太平洋地域において覇権を求めるべきでなく、覇権を確立しようとする他のいかなる国あるいは国の集団にも反対する」とした日中共同声明や日中平和友好条約に立ち返り、真摯な協議を開始することだ。

 

市民が路上から声を上げ政治を変える

 憲法の非暴力平和主義の実践を今こそ日本政府に求めなければならない。私たちは戦争も戦争のための改憲も望まない。現在、衆議院で改憲派が9割以上を占め、民意を反映していない。好き勝手にはさせない。決めるのは私たちだ。改憲反対の声が大きくなれば、改憲派は発議できない。2016年以降、市民と立憲野党の共闘の力で断念させてきた。

 今、国会内で私たちの代表は極少数。だから、市民が路上から声を上げて国会を変えるしかない。

 世界中に広がる反戦平和の声、全国に広がる「戦争反対」「改憲反対」のペンライトデモに私たちも呼応し、署名運動にも参加して、一人スタディングなど、あらゆる場所・方法で、主権者として意思を

示そう。                          

文責:東京革新懇事務局

2026年9月1日火曜日

入官庁の際立つ理不尽さ

      入管庁の際立つ理不尽さ 

     日本政府の身勝手な願望


 首都圏移住労働者ユニオン書記長  本多ミヨ子さん

 

入管庁の極めて理不尽なガイドラインについて、移住者労働者ユニオンの本多さんに寄稿していただきました。

 

「日本が急激におかしくなってきた」。外国人支援にかかわる人たちが一様に感じていることである。

昨年の参議院選挙を前にSNSで多くのデマがふりまかれ、さらに今年の衆議院選挙で外国人排外を公約に掲げた政党が多くの議席を占めた。

政府はここぞとばかり「国民の安心・安全のために」として「不法滞在者ゼロプラン」を発表、日本人と結婚した非正規滞在者や難民申請者を多数強制送還した。

この後、出入国在留管理庁(以下入管庁)の外国人に対するガイドラインが大きく変わってきた。最初に出してきたのが在留資格更新料の大幅引き上げである。これまで一律6千円だった更新料を更新期間ごとに分け3か月以下で1万円、5年更新では7万5000円にするという。永住許可に至ってはなんと20万円、家族の場合はその人数分だけ手数料がかかるので、5人家族なら、今まで5万円だった手数料が今年10月以降は100万円かかる(表参照)。

日本人対象なら絶対やらないこんな大幅な引き上げがなぜできるのか。選挙権を持たず反対の声を上げられない外国人だから何をしてもいいと考えているとしか思えない。

さらに深刻なのが外国料理店や雑貨店などを経営している事業主だ。現在500万円の資本金要件を一挙に3000万円に引き上げると公表された。経過期間が3年間あるとはいえ、入管庁が「事業主の9割は500万円ぎりぎりで経営している」と自ら認めている状況の中で、3年後に3000万円の資本金を貯めることができる事業主がどれだけいるのだろうか。資本金不足で在留資格の更新が出来ず、店を閉めざるを得ない事業主が続出することは間違いないと思われる。

まだある。8月4日、入管庁が公表した「永住許可に関するガイドライン」の改定案の内容は、これまでの許可基準のハードルを一気にあげ、永住を抑制するものだった。

現在の法律上の許可要件は①素行が善良であること、②独立の生計を営める資産又は技能を有すること、③その者の永住が日本国の利益に合すると認められることの3点だが、改定案では②の独立生計要件を「年収が日本人世帯の平均を上回ること」としている。2025年の厚生労

働省調査によると、全世帯の平均所得額は約575万円で、現在の独立生計要件の実務上の目安とされる300万円を大きく上回っている。

このガイドラインが公表された直後、日本医療労働組合総連合(医労連)の幹部の方から「介護労働者は平均所得額に満たない人が圧倒的に多く、これが施行されると介護職場で働いている外国人は絶対に永住資格が取れないことになる。安定的に長く日本にいてくれることが日本のためにもなるのに、入管庁は何を考えているのか」と電話が入った。まさに同感である。

他方在留資格「特定技能」や「育成就労」の労働者は増

加させる方針だ。つまりこれら一連の施策は、若い時だけ働いてその後は速やかに帰国してほしい、一部の裕福な外国人しか定住化は許さないとの身勝手な願望をはっきり示している。

少子高齢化が進み人口減少期に入った日本は現に多くの外国人によって支えられている。共生社会をめざす施策こそ必要である時に、真逆の政策を無理に押し通す日本、このままでは、外国人に選ばれない国になっていくことは必然であり、日本社会の衰退もまた必然である。一連の施策は撤回されるべきである。