2024年5月31日金曜日

都知事選

         小池都知事の素顔

    

  都政問題研究家  
       末延渥史

 

いよいよ都知事選挙が目前に迫り、市民と野党の共闘の候補者として参議院議員の蓮舫氏が立候補を表明されました。心躍る思いです。

 

改憲・核武装論者

 いま、安倍・菅・岸田と続く暴走政権のもとで改憲、戦争をする国づくりの動きが加速され、東京でも米軍横田基地の自衛隊との一体的再編強化など、東京の安全と平和が脅かされようとしています。

 こうしたときに自治体の長が果たすべき役割は、かつて革新都政が「憲法の改悪に反対し、その平和的・民主的条項の完全実施」を政策課題として「東京から火薬の匂いをなくす」ことを掲げ、米軍横田基地や米軍王子キャンプなどの返還をはじめ核兵器全面禁止のとりくみなどに全力を尽くしたように、東京の平和と安全の実現に先頭に立って尽力することではないでしょうか。

 ところが、小池都知事はこの8年間、改憲や戦争をする国づくりに異義を唱えることも、抗議の声をあげることもしないばかりか、都民の切実な願いである米軍横田基地の撤去に背を向けつづけ、海外で奇襲作戦などの特殊任務にあたる危険なオスプレイの横田基地配備や横田基地によるPFAS汚染についても頬被りをして、対米従属の姿勢を明らかにしています。

 それには相応の理由があります。小池都知事は国会議員時代に改憲を掲げる日本会議の国会議員懇談会の副幹事長や副会長を歴任。安保法制(戦争法)の策定にあたっては安倍首相のもと自民党の「安全保障法制整備推進本部」の副本部長として安保法制を推進した人物だったからです。

 さらに、小池都知事は、2016年の都知事選挙の翌年におこなわれた総選挙にあたって、安倍首相が掲げる憲法9条改憲に呼応するかたちで、「希望の党」を立ち上げました。その選挙公報や公認希望者に対する政策協定書などで「憲法改正」「憲法9条を含め憲法改正の議論を進めます」などと明記した生粋の改憲論者に他なりません。

 また、唯一の核被爆国の首都の長であるにもかかわらず、小池都知事は自身の公式ホームページで「東京に米国の核ミサイルを」と主張するとともに、「核武装の選択肢は十分あり得る」(VOICE2003年3月号)などと核保有を主張しているのです。バリバリの改憲主義者、核武装論者を知事の座に座らせておくことはできません。

 本籍は自民党

  小池都知事は2016年の立候補にあたって無所属、支持政党なしで立候補。この選挙で強い都民要求となっていた2020東京オリンピックや築地中央卸売市場の豊洲移転の見直し、全面的情報開示などを掲げることで都議会自民党との対決ポーズをとりました。また、その1年後におこなわれた都議会議員選挙では、都民ファーストの会を立ち上げ、自身があたかも反自民の旗手であるかのように都民の前で振る舞いました。

 実際に、8年の間の小池都知事の都政運営は、都民の要求を反映した一部のパフォーマンスを除いては、消費税大増税、社会保障の連続改悪、雇用と生活破壊のアベノミクスに追随し、豊かな財政を湯水のように都市再生=東京大改造につぎ込む一方で、都民には新自由主義と自己責任を押しつけ、都民のための施策は冷たく退け、新型コロナ対策や物価高騰対策などは国の予算の枠内に止めるという都民置き去りの自民党政治の徹底に他なりませんでした。

 それもそのはずで小池都知事は自民党政権のもとで総務会長を務め、また、防衛大臣、環境大臣などの要職を歴任した人物です。また、2016年の都知事選挙にあたって、自民党国会議員であった小池都知事は自民党推薦で選挙に立候補することを要望。自民党本部をたずね推薦を要請しましたが、政党をわたり歩いた経歴が疎まれるとともに、自民党都連、都議会自民党の強力な反対を受けたことから、自民党からの立候補を断念。自民党員籍のまま、無所属・支持政党なしで立候補。「自民党と対峙」という劇場型選挙を演出することで都知事の座を得ました。

 ところが、知事当選後は、裏で安倍首相、盟友と言われる二階自民党幹事長などと密会。永田町に二階幹事長をたびたび訪ね、ことあるごとに密談を重ね、都政を動かしていたのです。

 こうした蜜月関係のもとで自民党との連係プレーや国言いなりの新型コロナ対策、社会保障の連続改悪、都立病院の独法化など東京における自民党政治の先行実施など自民党政治の水先案内役を務めてきたのです。

 独裁型政治手法 

 小池都知事の8年は住民の奉仕者としての使命を忘れ、傲慢、不遜な姿勢を際立たせた8年ということができます。

 この点についてNHKが2020年に実施したアンケート「なぜ東京都民は再び小池都知事を選んだのか ~1万人アンケートで見るホンネ」で「小池都知事が持ち合わせていないのは?」の問いに対して「弱者への共感」がトップで62%、「都民目線」も50%を占める結果が示され、小池都知事の都政運営に対するシビアな都民の目が示されています。

 そして、小池都知事は都政運営にあたって、選挙で秘書を務めた特別秘書や自身が東京都に招き入れた特別顧問、特別参与などを重用。石原都政にはじまるワンマン、側近・密室政治を展開しました。

 とりわけ、初当選直後には大阪維新の会政策特別顧問をつとめ橋本徹大阪知事のブレーンであった上山信一氏を東京都顧問・特別顧問にひきいれ、「都政改革本部」の統括責任者として重用しました。 2期目には、かつて東京都副知事を務めた人物を引き入れ側近政治を展開。その人物は元副知事の威光をかさに局長や担当部長などの頭越しに方針を押しつけるなど、庁内の組織ルール、民主的運営を蹂躙する都政運営を押しつけてきました。こうしたことに対して都民から批判の声があげられ、都議会からも「特別顧問を重用し、都職員が軽視されている」「意思決定過程が不明確」などと追及がおこなわれるに至りました

 また、前述の人事支配や新型コロナ対策での補正予算の専決処分(非常時など議会を開会できない場合などに認められる知事による予算の決定・執行)の乱発、自分にとって不都合な議会質問の答弁拒否など庁内民主主義と議会制民主主義を否定する独断、専横の都政運営が大手を振ってまかり通っています。「ここに至って議論することもはばかれる空気」「これまでの都政であれば検討過程でブレーキがかかってもおかしくない」「『なんでもあり』が年々、色濃くなっている」「都民の生活に寄りそうメッセージは弱い」「都民は何も白紙委任しているわけではない」(都政新報紙)など都庁内部から批判と告発の声があげられるに至っているのです。 

 新自由主義・市場原理の徹底

  日本における新自由主義とそれに基づく自己責任=自助・共助の展開は、1990年代に入ってからの経団連や経済同友会などの財界の提唱をうけて、国のレベルでは2000年におこなわれた「社会福祉基礎構造改革」、東京都の場合は1999年の都知事選挙で知事に就任した石原都知事のもとで策定された「東京構想2000」「都庁改革アクションプラン」によって具体化され、安倍・菅・岸田の歴代政権、石原、猪瀬、桝添、小池とつづく自民党都政のもとで力づくで国民・都民に押しつけられてきました。

 なかでも徹底した新自由主義者である小池都知事は、憲法が定める「健康で文化的な最低限度の生活」の実現、地方自治法が自治体の使命としている「住民の福祉の増進を図る」という自治体の長として有していなければならない理念・姿勢を欠落させおり、新型コロナ対策でも社会保障政策でも物価高騰対策でも徹底した「自助」努力による解決を求め、国の制度や法定制度を超える支援は冷たく拒みつづけるなど、公的責任を果たそうとはしていません。

 ポピュリスト小池百合子

  いま、世界で危険なポピュリズムが台頭し、人々が営々として築きあげてきた世界の秩序、平和が脅かされようとしています。

 一方、小池都知事は2回の都知事選挙や都議会議員選挙、国政選挙をつうじて、自民党政治との対峙を強く打ちだした劇場型選挙を演出するとともに、「都民が決める 都民と進める」「女性都知事」「環境」などあたかも自身が都民の味方であり、女性の代表であり、環境の先駆者かのように演出してきました。

 しかし、この8年の小池都知事の言動は真逆のものであり、ポピュリズム政治そのものであったことを指摘しなければなりません。

 都政におけるポピュリズムの台頭について、一橋大学の伊藤直也氏は石原都知事を分析した論文のなかで、「現代ポピュリズムの諸特徴」として、①敵の創出と無党派層の支持獲得、②メディアの利用、③新保守主義的性格と新自由主義的性格、④民主主義的プロセスの迂回を指摘しています。このまま小池都知事の政治姿勢・都政運営に当てはまるのではないでしょうか。 

 「都道府県の議会選だと、議員は選挙区の2~3割の得票で当選できます。だから当選可能性を高めるには、商工会議所やJA、労働組合など、部分利益の代表者として振る舞うのが一番合理的です。反対に、首長が選出されるのは小選挙区制ですから、浮動票を取り込まないと既成政党の候補者には勝てない。票が集中していて既得権益で固まっていないところ、すなわち都市部のホワイトカラーの支持を集めないとなりません。だから、議会や既得権益を非難すれば、当選可能性が高まります。自分の政治的意見がどうであろうと、当選を至上目的にしてそこから逆算すると、首長候補者はポピュリスト的な言動や政策を訴えることが合理的になっていきます」

 「政治社会的立場には保守的で、経済的には保護主義的です。既成政党が政治的、経済的な危機に対応できない中で、その隙間を埋めたのがポピュリスト勢力」

(吉田徹北海道大学教授、The Asahi Simbun Global 2018.09.06 

財界ファースト、都民置き去り

 いま、東京では石原都政が〃集中は是〃といって財界要求に応えて都政に持ちこんだ「都市再生」による同時多発的な超高層ビル群による大規模再開発が、「世界で一番ビジネスのしやすい国際都市」(舛添要一都知事)、「アジアナンバーワンの国際金融都市」「稼げる都市」(小池百合子都知事)などの名目で、「東京大改造計画」にバージョンアップされ爆速で推進されています。

 このようなほんのひとにぎりの大企業・多国籍企業と富裕層のための都市づくり、彼らが豊かになればその滴がしたたり落ちてくると言う〃トリクルダウン〃の発想にもとづく政治のもとで、東京における貧困の増大と格差の拡大はとどまるところを知らず、都民生活は困窮の度をふかめているのです。

 実際に小池都政のもとで大規模再開発や外環道、特定整備路線などの道路建設には湯水のように税金がつぎ込まれる一方、少人数学級や都営住宅の新規大量建設、多摩地域の保健所増設、国保、後期高齢者医療、介護のなどの社会保障負担軽減には冷たく背をむけつづけているのです。

 「都民ファースト」どころか「財界ファースト 都民置き去り」の都政と言わなければなりません。

 市民と野党の共闘で都政転換を

  いま、都知事選挙に向けて都内各地、各団体で市民と野党の共闘のとりくみが急速にひろがっています。

 はじまりは2016年の都知事選挙につづいて、2019年9月、浜矩子さん、五十嵐仁さん、永山利和さんの呼びかけで「都政を考える夕べ」が開催され、おおくの都民をはじめ各地域で市民運動にとり組まれている方々、労働団体の代表の方、弁護士や研究者の方々の賛同を得て、「市民と野党の共闘の実現で都政転換」をめざす呼びかけ人会議が結成されことです。

  この「市民と野党の共闘」は結実し、翌年の都知事選挙で宇都宮健児さんを共闘の候補として闘うことができ、その後の都議会議員選挙、衆議院議員選挙で着実な前進を勝ちとることができました。また、各地の首長の選挙においても協力・共同がひろがり、杉並区、中野区などで「市民と野党の共闘」の区長・市長が誕生。今年4月にたたかわれた衆議院第15区補欠選挙では酒井なつみさんが市民と野党の共闘で勝利しました。 また、1月24には「 どうなる東京 変えよう東京! 2024キックオフ」集会がひらかれ、この集会を契機に、市民と野党の共闘による「候補者選対会議」の設置と都知事選挙候補者の擁立、知事選挙準備のとりくみが力強くすすめられてきました。

 市民と野党の共闘で、自民党と一心同体の小池都政に代わる都民が主人公の都政を今度こそを実現しようではありませんか。

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