2025年1月31日金曜日

東京革新懇第33回総会

東京革新懇第33回総会開催 

自民党政治を打破し、国民本位の政治への道を開こう 

125日ラパスホールで東京革新懇第33回総会を71人の参加で開催。国民の批判が噴出してきている自民党政治に、要求運動と市民と野党の共闘を強め、都議選、参院選で痛打を与え、国民本位の政治の道を開こうと熱気溢れた討論が行われました。 

記念講演-杉並の政治変化

 杉並革新懇代表世話人の小関啓子さんが「『市民と野党の共闘』で政治は足元から変わる」と題して記念講演。大変好評でした。詳細は4月号で紹介します。 

開会挨拶


井澤智代表世話人「昨年は都知事選、総選挙があり市民と野党の共闘が改めて試された。総選挙では、自民党の裏金、統一協会問題、物価高騰への無為無策に国民の審判が下った。波はあるが、東京では市民と野党の共闘を守りぬいてきた。都議選、参議院で、思いを託せる人を議会に沢山送り込もう。東京革新懇の大いなる前進の年にしよう」。


政党挨拶 

鈴木庸介立憲民主党衆議院議員「自民党政治で大丈夫か。これほど予算が膨らんだのも日本の給料がこれだけ下がったのも企業団体献金が最大の理由のひとつだ。理念が一致するところも沢山あるので、共闘はしっかり前に進めていきたい。都議選では、3人区以下で調整を進めていく。反自民勢力を増やすためにどうするかを考え、都議選、参院選をたたかっていきたい」。 

山添拓日本共産党参議院議員「衆院で少数与党となり、予算案の動向、国民、維新が自民党政治の延命に手を貸すのか問われる。石破首相が所信表明演説、物価高で賃金、年金の目減り。展望をしめせず自民党政治の深刻な行き詰まりがある。根底に企業団体献金があり、
3月末に向け世論で迫ろう。トランプ政権問題、日米運命共同体で行けるはずはない。革新懇の3目標が求められる情勢だ」 

全国革新懇挨拶 

小田川義和全国革新懇事務室長「自公の過半数割れ。冨田宏治関西学院大教授は『自民党は溶解の課程に入った』と評している。自民党政治から転換する絶好のチャンスだ。昨年の全国交流会で、二重の取組を提起した。企業団体献金禁止、選択的夫婦別姓などの速やかな実現など、市民たたかいを大きくしていく。革新懇が要求運動の要として運動をつなげ、政治に実現を迫っていく。運動を軸に市民と野党の共闘を発展させ、『さよなら自民党』の運動につなげていく。自民党政治の行き詰まりの大本に2つの問題。異常なまでのアメリカ追随の軍事経済政策で、市民の暮らしを圧迫。トランプ政権はさらなる大軍拡のおしつけとなり、安保とくらしを語る大きな条件が出来る。もう一つは大企業本位の問題。昨日は国会開会日行動、選択的夫婦別姓を今国会で実現しようと盛り上がった。政治を変える一点として実現めざし運動強めよう」

 総会議案提起

 今井文夫事務局長「自民党政治は徹底した大企業優遇政治。消費税導入し総額539兆円、すべて企業と金持ちの減税に消えた。社会保障は全面的改悪。派遣労働テコに非正規労働者が4割、実質賃金も大幅低下。『生活苦しい』が過去最高に。米軍の軍事戦略に前のめりで呼応。米軍は同盟国抜きに中国とたたかえないとしており、日本の加担は戦争の危機高め、甚大な被害をもたらす。共闘強化し都議選に勝利、それを足場に参院選等で自民政治を打ち破ろう。敗戦・被爆80年。東京平和祈念館建設、核兵器禁止条約批准求め運動広げよう」。

閉会挨拶 

丸山重威代表世話人「トランプはけしからんとなっているが、何が問題かはっきりさせることが重要だ。
DIA(多様性・公平性・包括性)、SDGsの否定であり持続できない。少数与党となり、出来ることをやらせることだ。核兵器禁止条約や地位協定の改定、各党異論がない。如何に前に進めるか、参院選など攻めいきたい」。





地域・職場、団体の発言

松元忠篤(東久留米革新懇)

 戦後80年、被爆80年、安保法制強行10年との節目の年。節目の年には国民の意思が現れる可能性高い。出足早く取り組もうと19日には9条の会と一緒に23人で宣伝署名。123日には反核平和実行委員会、戦争はイヤ!声をあげよう実行委員会と一緒に24人の参加で「箔兵器禁止条約を批准せよ」の宣伝署名。新しい横断幕やチラシも準備。革新懇は4年前の夏から市民連合と協力し毎木曜夕方定例宣伝署名。革新懇会員も増えつつあり今年は100名をめざす


丁 弘之(府中革新懇) 

 府中革新懇の活動の特徴は、一つは運動を軸に共闘の架け橋とリスペクトを据え、それを軸にニュースを発行。発行部数2300部。個人会員、34の団体、19の労組に配布。個人会員には全国、東京、三多摩、府中革新懇の4点セット配布、革新懇運動の大きな力。編集では広く市民・団体に登場してもらい、市民運動を支えることをめざす。もう一つは市政を重視。28人の市議で10人読者。総選挙当選の立民の五十嵐衣里さんも読者。市民連合など要求実現のネットワーク重視。代表世話人会で情勢、団体交流、革新懇運動を議論。平均76歳、若返りをめざす。 

児玉紀子(足立革新懇)


要求運動をつなぎ、統一戦線を前進させる議論している。公共交通の問題で、社会的弱者を含め交通不便を解消の課題で自民まで賛成し決議し進んでいる。選択夫婦別姓でも自民議員含め取組。平和の問題でも共同で宣伝。121日には原水協と共同で、核兵器禁止条約批准で署名がいつになく集まっている。22日笠井亮さんの市民と野党の共闘を発展させる講演会。322日総会で川田忠明さんの核兵器禁止条約に参加の日本へと講演予定。都議選、参院選に向け、政党に呼びかけ宣伝行動進める。会員は100人突破。ニュースも普及したくい。

皆内マサ子(東京母親大会連絡会) 


1954年ビキニ環礁での被爆をきっかけに、核戦争から子どもの命を守ろうと母親大会を開催してきた。今年は70年の節目で東京で開催。28日は分科会、29日は全体会を国際フォーラム5000人の会場を一杯をめざす。有原誠二さんに「命の砦をわたさない」の絵を描いてもらい、ポストカード、一筆箋にして販売。シールを10万枚、東京で5万枚、要求を書いてもらい絵とともに会場に虹をつくる。協力を。 


角倉洋子(人間講座 

人間講座第29夜を討論の途中だ。山田洋二監督がビデオメッセージを寄せてくれる。被団協がノーベル平和賞を受賞、ノーベル委員会の委員長は、この問題は「人間の責任」ということで決めたと話している。革新懇の方針提案、一つ一つ人間の責任としてやらなければと痛感する。亡くなった小中陽太郎さんはずっと人間講座を応援してくれた。 


磯崎四郎(日野革新懇)

 413日投票で日野市長選。現職が出ず自公陣営からは23人が出る。私たちは候補者選考委員会でやっており2月に発表。選挙争点の全戸ビラを作成中。争点は一つは毎年黒字なのに財政非常事態宣言を出し市民に我慢を強いる市政から、積極的に市民に貢献する市政の実現。二つに副市長の不正問題の解明。三つが三井不動産が進めるデータセンター建設問題。巨大な建物が住宅地に接して建設。市条例では大型開発は住民合意が必要だが、市は建築基準法上問題ないとしている。頑張れば勝てる。都議選は定数2。前回は立民の応援も受け共産党清水さんが当選。市長選で勝利し、土台に勝ちたい。 

蟻坂静夫(三鷹革新懇

 215日小田川全国革新懇事務室長の「激動する世界と日本、共同目標の実現めざして」の講演会計画。革新懇を続けるのは困難。結成し37年。110人会員が70人を切った。高齢化で亡くなったり施設に入ったりと減少。一昨年6人、去年6人増やした。世話人で対象を挙げ、何回か訪問活動している。あと3年で40年、上向きになるよう努力したい。

新田裕也(民青同盟都委員会) 

「朝日」の出口調査で20代は自民党に前回42%、今回20%と総選挙で厳しい青年の審判。民青は歴史的な情勢に突入していると議論。青年は政治の変革の確かな選択肢に行きついていず、模索は続くと考えて活動。民青が大企業本位、アメリカ追随の二つの異常を伝えると噛み合ってくる。民青は、昨年の大会で全国3000人、東京は1000人の目標突破。その510倍と対話している。うねりのような動きが広がりつつある。 


桜井孝政(西武革新懇)

 西武鉄道が、駅無人化を秩父線に続き飯能、狭山、入間市内の池袋線で実施。無人化した駅では、インターホンやカメラで対応。聴覚・視覚障碍者やホーム等での転落に対応できない。駅員は、休憩中、仮眠中でも対応迫られる。人員削減での利益拡大だ。23年度の経常利益324億円、内部留保3282億円。入間市で駅の無人化を考えるシンポを50数人の参加で開催。無人化への利用者、市民の意見が噴出した。駅はまちづくりに大きな役割を果たしてきた。職場革新懇の役割重要となっている。

千田昇(町田革新懇) 

臨時国会での山添拓参院議員の企業団体献金禁止をめぐる論戦は説得力があった。石破首相は半世紀前の八幡製鉄所判決で企業も政治活動の自由を持つを引き、献金も合憲と答弁。山添議員は、判決は企業団体献金の弊害と立法政策にすべきとの内容を指摘。原発企業が10年で70億円も献金し発注額は18兆円。ゼネコンも10年で20億円献金し発注額は27兆円。消費税をめぐっても同様。自民等曖昧にする動き。。国会内と結び、街頭宣伝も強め廃止をめざす。

 岸本正人(東京平和委員会) 

横田基地のオスプレイが一昨年墜落、5機のCV22オスプレイが飛び回っている。米軍は22年中の10機体制が出来なかった。地元の運動ともに米軍自体信用できない飛行機になっている。配備撤回に追い込む糸口がある。横田基地機能強化では、横田基地の自衛隊総体司令部と米太平洋軍の航空作戦センターが標準運用手順協定に調印。戦術作戦レベルの連携強化をめざすもの。衛星等から得た情報から戦闘部隊に指示する機能をもち、自衛隊は米軍指揮下で動くことになる。トランプは日本に軍事費GDP3%を要求、年間16兆円。ますます危険な戦争への道をいくことになる。 

田辺良彦(共産党都委員会) 

都議選は613日告示。臨時国会では部分的譲歩で補正予算通過。流動的情勢で国民の願い実現する歴史的チャンスだ。選択的夫婦別姓など国民要求で政治動かせる実感持てる情勢をつくりたい。共産党都議団が都議会自民党の裏金づくりの資料暴露。企業団体献金禁止まで行けるか歴史的課題をやり遂げたい。個々の課題とともに、大企業中心、日米軍事同盟絶対の自民党政治の二つのゆがみに切り込んでこそ、大本からの転換が可能だ。革新懇の3つの共同目標と合致する。野党は自民政治延命に手を貸すのか、根本的転換をめざすのか、分岐せざるを得ない。共産党も全力を尽くす。 

戸田 清(目黒革新懇) 

昨年ジェノサイドに関する本を出版した。イスラエルのガザ軍事行動はジェノサイドの様相だ。国際司法裁判所はジェノサイド防止の判決。原爆は典型的なジェノサイドだ。日本は、世界でも珍しいジェノサイドの被害国と加害国。原爆投下と東京大空襲では被害、南京大虐殺、東学党の乱などは加害。194811月、アメリカはソ連の70の主要都市に133発の原爆を投下し、推定死者は1000万人程度との立案したが実施せず。冷戦時代には米ソ核戦争で5億人の死者が想定された。核兵器は、ジェノサイド兵だと強調することが重要だ。


2024年12月12日木曜日

 アメリカの世界戦略の破綻と、市民・グローバルサウスによる平和 その②

今こそ東アジアの共同を広げよう 

青山学院大学名誉教授

世界国際関係学会アジア太平洋前会長

   羽場久美子

 

 横田市民集会での羽場久美子さんの講演の後半部分の要旨をご紹介します。11月号に掲載しました講演前半部分は大変好評でした。

 

自民党政権の腐敗と全国へのミサイル配備

裏金問題が自民党全体に広がり、3つの補選で自民党は候補を出さないか敗北し、立憲民主党が3地域を制した。防衛省の不祥事も明らかになっている。

ミサイル配備は沖縄・琉球列島から、四国、青森、北海道まで、日本全国がアジア大陸に対する戦争のフロントになりつつある。

中国脅威論で、日本全国にミサイル配備して、戦争が始まれば、国民が犠牲になる。日本の利益にならない。日本の民主主義を、市民から、地域から、取り戻し、絶対に戦争させてはならない 

台湾有事と日本の位置

アメリカは、自らは戦争しない。東アジアでも中国と戦争するのは、台湾、日本だ。台湾は戦争しないと言っている。日本は目と鼻の先の巨大経済大国、中国に特攻隊のように飛び込んで玉砕するのか?

 アメリカの東アジアの同盟戦略は4つ。

①日米豪印4カ国の軍事同盟QUAD(クワッド)、②QUADプラス韓国、ベトナム、ニュージーランドプラス台湾、③米英豪のAUKUS(オークス)、④ファイブアイズ(5つの目);米英豪加ニュージーランド。これにはヨーロッパ大陸が入っていない。米英アングロサクソンは、ヨーロッパ大陸:独仏伊なども信用していない。

 インドはアメリカの戦略を見抜いて、QUADもやる気がない。しかしどちらにもつける戦略をとっている。ASEANも同様だ。アメリカにべったりで自国利益も守れないのは日本だけだ。

 日本は、衰退するアメリカとの軍事同盟により近隣国の中国・北朝鮮・ロシアに対抗するのではなく、近隣国と共に平和と経済的安定、繁栄を作ることが国益にかなう。国民も犠牲にしない。 

自治体、市民の重要性!

 いま議会にもかけず閣議決定で、地方自治体の反対も無視し、沖縄、九州、四国、新潟、青森までミサイルが着々と配備されている。地下司令塔を、2024年までに全国10カ所に作る計画が政府から地方自治体に通達されている。いまほど自治体が重要になっているときはない。市民の命の危機を守るのは自治体だ。沖縄のように、「今日のガザは明日の沖縄」「今日のガザは明日の日本」と考え、自治体と市民から平和を作る、世界に向けて日本は「平和立国」、憲法9条がある国なのだということを伝えていくべきだ。

 日本列島はアジア大陸の極東に散らばる幾千もの島々だ。しかし地図を90度西に倒すと明らかな様に、日本列島は大陸から太平洋に出ていくのを封じ込める壁・盾となる。3千キロに渡る壁が、北はロシア極東地域から北朝鮮、北京・上海・福建省という中国最大の経済圏から太平洋に出るのを押しとどめる(アメリカにとっての)自然の要塞になっている。日本列島の使い道は、中国・ロシアが海に出ていくのを封じ込める役割なのだ。

 しかし全国各地に配備されつつある数百基のミサイルを大陸に向けて撃ち出したとしても、5倍返しどころか10倍返し以上の形でミサイルが日本列島に降ってくる。そんなことはやれないとすると何のためのミサイル配備か。最初から負け戦だ。

 20231月の日米安全保障協議委員会(22)で、日本は従来のアメリカが矛、日本が盾という専守防衛から盾と矛になることを自ら提案し、米に歓迎された。アメリカに飛んでいくミサイルを日本が撃ち壊す役割を負ったのだ。アメリカが日本を守るのではなく、日本がアメリカを守るのだ。

韓国の研究者によれば、台湾有事と朝鮮半島有事が同時に起こる(起こす)可能性があるといわれている。

 それは、戦争でなくとも、「事故」としても起こりうる。「事故」であっても、東アジア経済圏は壊滅する。チェルノブイリから35年後(当時)、スウェーデンやノルウェーの野生のトナカイの肉から致死量の放射線が出て欧州で大問題となった。距離はチェルノブイリから1200km以上だ。これを東アジアに当てはめるなら、例えば北朝鮮のニョンビョンの核施設が何らかの事故でチェルノブイリ級の爆発が起これば何十年もの間、ほぼ1200キロの領域が汚染されてしまう。東アジアは狭い。網走、沖縄を除く日本列島のほぼ全域、北のウラジオストク、南北朝鮮、北京・上海・福建省、即ち東アジア経済圏のほぼ全域が1発の核事故で数十年にわたり汚染されてしまう。

 地政学的に見れば、この地域の放射能汚染は、米欧に何の影響もない。イギリスの得意とする「漁夫の利」を得るには、東アジアでの戦争は、極めて欧米に有利だ。戦争の危険、甚大な被害、東アジア経済圏の崩壊。我々はそれでも中国や北朝鮮に対抗すべきだろうか? 

中国・インドの地域協力

 他方で、中国やインドでは今何が起こっているか。この1年間、欧州、インド、アセアン、中国、韓国の各国を回った感想として、これらの国は欧米の軍事化とは異なり、対照的なことをやっている。

アジアの経済地域協力だ。中国では「一帯一路(BRI)」で西安を起点に欧州に向けて地球を半周する100年経済開発計画を企画し、インフラと投資が行われてきた。

今年が一帯一路10周年で、150カ国の加盟国中140か国、30関連団体、1万人を超える人々が北京に集まった。カンボジア、ラオス、スリランカ、ミャンマーなどの貧しい国々の大使たちが、「一帯一路」により道路や鉄道、橋などインフラ整備がなされたことに深く感謝していた。

 東京でも一帯一路10周年の国際シンポが開催された。中小企業、経団連、三菱UFJ銀行、メデイア、建設業界などが参加し「我々も一帯一路に参加したい。一帯一路の起点を日本にしたい」と言っていた。中国との連携は日本も経済回復させるのだ。

昨年、今年と中国北京大学・精華大学、中国社会科学院からの招聘講演に際しては、中国側から、「上海、福建省から経済界の若者を派遣できる。自治体間の協力により、日中を平和と繁栄に向け再建しよう!沖縄と中国は歴史的友好関係がある。沖縄の人たちと交流し日中友好を」と訴えられた。また日中3千人の若者交流や民間交流も呼びかけられた。

 インドも14億の民を抱えながら、国の東西の貧しい国々と連携して地域協力を推進している。特に周辺はアフガニスタン、バングラデシュ、ブータン、スリランカ、(インドと抗争中の)パキスタンなど、貧しい小さな国が多い。しかしインドはこれらの国の若者を「南アジアSAARC大学」に迎え無料でIT/AI・医療や国際関係の教育をし学位を与えて戻している。彼らは帰国後、政府官僚や経済界のトップとなり国を興し南アジアを発展させている。ASEAN10か国で広範な地域協力と「優れた統治Good Governance」を進めている。 

地域・自治体外交の重要性。沖縄を平和のハブに!

 日本で先進的なのは沖縄だ。「今日のガザは明日の沖縄」「沖縄を平和のハブに!」を掲げ、それを中韓台湾、また国内でも九州、四国、神奈川、石川、北海道などの自治体と結び、大きな動きに発展している。それを政府と司法が一体となり、沖縄の平和の動きと辺野古新基地見直し要求を違法として弾圧。日本は三権分立も確立していないことが明らかとなった。昨年11月には「新たな戦争NO!」を掲げた1万人を超える基地反対・平和の大集会が、全国から人々が集まり、小さな魚が群れをつくって大きな魚を追い払う「スイミーバイ」を形作り、大成功を収めた。沖縄・琉球は、東南アジア、台湾、中国、韓国との距離が近く、それらの国と戦争せず、文化交流、経済交流を実現してきた歴史がある。沖縄は、東アジア20億人の巨大な経済ネットワークの中心になれる。

多民族・多彩で豊かな文化を持つ沖縄の美しい島々が、米軍や自衛隊のミサイル基地、地下施設で汚染されようとし、他方で米軍はグァムに撤退している。米軍に代わって近隣国と戦争をする役目は返上するべきだ。軍事費43兆円は、逼迫している国民生活の悪化、少子高齢化対策などに使うべきだ。 

自治体から、市民から、若者から、平和外交を

 沖縄の玉城知事らは、自治体、市民から平和を作る、命を守り繁栄を作るという動きを強めている。沖縄の自治体外交、市民外交をぜひ日本全国に広げていただきたい。

 昨年NEAR北東アジア自治体連合に招聘されて講演をさせていただいた。現在、6か国(日本、中国、韓国、ロシア、モンゴル、北朝鮮および、ベトナム・ホーチミン市)で、現在81+日本3自治体が参加する(沖縄、山口、宮城の3自治体が今年オブザーバー参加。沖縄は来年正式参加)自治体協力関係が存在する。ASEAN10か国のような対話と協力組織を自治体レベルで実現している。まさに下からの民主主義的平和・文化組織だ。現在、日本からも14自治体が参加しているが、ぜひこれに多くの自治体が参加し、若者交流、文化交流、環境問題、経済問題、平和の問題で、交流してほしい。

注:日本からの参加は青森・秋田・山形・新潟・富山・石川・福井・京都・兵庫・鳥取・島根の各府県

 また、沖縄を先駆的事例として、各自治体から、ぜひ平和と繁栄を作っていだきたい。近隣国と結び、「東アジアでは絶対に戦争をしない」動きを、沖縄・広島・長崎など各自治体から「非核地帯宣言」を広げてほしい。

 「即時停戦と平和」を要求するグローバルサウス、成長するアジア、アフリカ、ラテンアメリカと結び、近隣諸国・市民とのホットラインをつなげよう。

6か国・81+3自治体にさらに自治体を追加し、学生、老若男女、老いも若きも、積極的に近隣国に出かけ友人を作り、自治体から、メディアから、市民から、平和を作り出そう。

このまま放置していれば、台湾有事、北朝鮮での紛争、「事故」が起こる可能性がある。偶発的な事件を引き金に戦争に進めないため、またそれを避けるためにも、戦争のない、平和な未来を、私たち市民の手で着実に作っていく必要がある。それが本当に憲法を守り、平和をつくる、戦争をさせないことだ。皆さんも、一人一人の場で平和と安定と、対話と共存、幸せを実現していきましょう。

 

 

2024年10月30日水曜日

羽場久美子講演 世界の大転換期―アメリカの衰退と戦争

 アメリカの世界戦略の破綻と市民・グローバルサウスによる平和①

世界の大転換期―アメリカの衰退と戦争

        青山学院大学名誉教授

       世界国際関係学会元副会長 羽場久美子

 


 105日に福生市民会館で開催された横田市民集会での羽場久美子さんの講演の要旨を2回にわたりご紹介します。

 

いま、世界は大転換期だ。世界中で戦争が起こっている。なぜ、この21世紀、人権の時代に戦争が起こっているのか。

戦争をとめようとする国際世論と国連は動いている。国連の78割の国々が、パレスチナ戦争およびウクライナ戦争の即時停戦に賛成している。国連は機能している。それをただ1票の拒否権で、停戦を押しとどめ、紛争地に武器を送り続けているのがアメリカだ。

いま、日本列島も、沖縄から北海道まで、中国に向けてミサイル配備を進めている。アメリカは2022年に、6年以内に中国が台湾に侵攻すると煽っている。なぜか?このままではアメリカのGDPが中国に追い抜かれてしまうからだ。アメリカの都合で、東アジアで戦争をさせてはならない。

なぜ戦争か?そのからくりを考えるために本日講演をさせていただきたい。

 

データで見る大転換期の世界と私たちの課題

世界をリードするアメリカは、なぜ武器を世界中に送り続け、戦争の火種を作っているのか。その背景をデータで見たい。重要なのは、世界人口の変遷とGDPの推移だ。

<データ11に人口。国連事務次長を務めた明石康氏の国連研究会のデータによれば、2100年に世界人口は、アジアとアフリカで8割になる。米欧は1割を切るとされる。しかし現在でもアジア・アフリカ・ラテンアメリカを合わせると人口は8割。米欧はすでに15%にすぎない。重要なことは20世紀においては人口の多さは貧困の象徴だった。しかし21世紀IT/AIの時代に、教育を受けた人口はIT人口になりうるということだ。中国のIT人口は10億、インドのIT人口は65000万。米欧日のIT人口8億とすると中印は米欧の2倍のIT人口。米欧による軍事力支配は早晩終わりになる。

<データ22に経済の歴史的長期波動。世界のGDPを西暦0年から2030年まで世界最速のメガコンピューターで数理統計解析した人物がアンガス・マディソンだ。この統計は40数か国に翻訳され経済統計ブームを巻き起こした。それによれば西暦0年から1820年まで1800年間、世界経済の過半数を占めていたのは、インドと中国。欧米は1820年から2030年までの200年しか世界経済の中心を担っていない。それも植民地の収奪により成長した。統計では2030年には中国がアメリカを抜くと2007年に試算した。それが現実になりつつある。

<データ3中国のGDP2010年に日本を抜き、この14年間で日本の4.5倍になった。PPP(購買力平価)ベースのGDPでは、既に中国は2014年にアメリカを抜いている。世界銀行やIMFは、PPPベースのGDPは、20年後、30年後の名目GDPになると予想している。 

<データ4アメリカ最大の金融機関ゴールドマン・サックスによる将来のGDP予測が202212月に出た。それによると2050年には中国がアメリカを抜き1位(実際には2035年といわれる)、インドがアメリカに迫り3位、日本はインドネシアやドイツに抜かれ6位に転落。既に日本はドイツに抜かれ、来年・再来年にはインドに抜かれる。2075年には日本は12位まで転落、中国やインドが12位、アメリカ3位、インドネシア、ナイジェリア、パキスタン、エジプト、ブラジルがトップ8に入る。一人当たりGDP2024年世界 ランキングでは、日本は、すでに韓国、スペイン、スロベニアに抜かれ38位に沈んでいる。

 20世紀のアジアは貧困のアジアだった。21世紀のアジアは、経済成長とAI教育先端のアジアだ。ITAIの成長により、勤勉でモノづくりにたけたアジアは、あと2050年で世界の頂点に躍り出る。それがアメリカに脅威を与えている。

 経済で太刀打ちできなくなったアメリカが、世界各地で戦争を起こし、自らは戦わず、地域紛争を代理戦争に変えて、アメリカの支配を維持しようとしている。Make America Great Again!これが世界中で戦争が起きているからくりだ。トランプが政権についても、ウクライナ戦争は止まるかもしれないが、イスラエルの影響力は強まる。中国への弾圧も強まる。

イスラエルは、米英欧が19世紀にやってきたことの焼き直しであり、遅れてきた植民地政策だ。米英がイスラエルを支持しているのは、18世紀、19世紀に同様のことを米欧は、アメリカ、オーストラリア、ラテンアメリカ、アジアの原住民に対してやってきたからだ。しかし21世紀にはそれはもう許されない。

<データ5最後のデータは、日本の人口問題。総務省のデータによると、日本の少子高齢化対策の遅れの結果、あと40年で65歳以上の人口が全体の4割を超え、労働人口が半分になる。2100年に「8000万人国家」、うち半数が65歳以上だ。

人口問題は、高齢者就労、女性就労、移民受け入れの問題と直結する。観光だけではやっていけない。住み着いてくれる移民をきちんと人権を守ってもてなさねばならない。これが50年で日本のGDPは世界12位になるという実態だ。

そうした中、1000兆円の負債を抱えつつ、5年で43兆円を超える軍備を大増強し、ミサイル配備を全国に展開して、中国に対し戦争準備をしている場合か?むしろ中国・アジアとこそ結ぶ必要がある。

世界における戦争の継続、日本のアメリカの言いなりの背景には、100年間の「アメリカの世紀」の影響が大きい。しかしアメリカの世紀はたった100年!アジアの時代は数千年なのだ。

 

アメリカの世界戦略、戦争戦略

アメリカが世界の頂点にのし上がったのは、20世紀の2つの戦争によるものであった。アメリカは2つの世界大戦のほぼ最後に参戦して次の時代の国際秩序を作ってきた。 

アメリカの2大巨頭の一人、ウイルソンは第1次世界大戦で、19172月のロシア革命によるバランスオブパワーの崩壊により参戦し18年末に戦争は終わる。1年半しか戦争に参加せず、しかも自国は戦場にならず、戦後国際秩序を提案しリードした。

ローズベルトは、第2次世界大戦で、日本のパール・ハーバー攻撃に対する反撃の形で参戦し、4人の警察官(米、英、ソ連、中華民国)を掲げて、国際連合を作り国際秩序をリード、戦後の覇権国、リーダー国となった。 

バイデン大統領は、20世紀の2大巨頭に学び、新たな世界秩序を「民主主義対専制主義」で作ろうとした。2大巨頭と違うのは国際連盟、国際連合がいずれも「中立的な国家共同の組織」として始まったのに対し、バイデンは、世界を民主主義と専制主義の二つに分け、衰退しつつある少数者の自分たちを正義としたことだ。これはトルーマン流の冷戦に似ている。だから「新冷戦」とよばれる。圧倒的多数の成長しつつあるアジアや新興国に対抗し、衰退しつつあるG7少数国を正義とする、歴史にも逆らう暴挙で歴史に耐えられないはずだ。

アメリカの世界戦略の特徴は、自国は戦争に参加せず、戦争末期に参戦して次の国際秩序を作るということだ。直接出ていったベトナム戦争、アフガン戦争、イラク戦争ではアメリカは常に負けている。だから出ていかずに、現地の紛争と対立をあおり、武器を送る。それがウクライナ戦争、パレスチナ戦争、そして台湾有事だ。

 

パレスチナ戦争

昨年10月に起こったハマスの攻撃に対し、すでに4万人以上がイスラエルの爆撃によって殺されている。3分の2が子ども、乳幼児、女性たちであり、瓦礫に埋もれた死体は1万人以上残るとされる。8万人を超える負傷者、子ども達がいるが、23ある病院はすべてつぶされ、医師は逮捕拷問され、南部に逃れた人々にも容赦なくイスラエルの爆撃が執拗に繰り返されている。食事や水を求めて並ぶ子ども達や学校をも攻撃している。まさにジェノサイドだ。国連事務総長グテーレスにより緊急に呼びかけられた「即時人道的休戦」に対し、昨年12153か国、国連加盟国の8割以上が賛成したにもかかわらず、米・イスラエル10か国が反対した。続く安保理でも、15か国中13か国が即時停戦に賛成したが、イギリスは棄権、アメリカだけが拒否権を発動し戦争継続を支持した。

今年1月のグテーレス事務総長の悲鳴に似た即時停戦の呼びかけで国連総会は153か国が即時停戦を決議したが、アメリカは拒否権を発動。さらに停戦交渉を行っていたハマスの最高司令官をイスラエルは殺害した。

ロシアのウクライナ侵攻にあれほど反対した“リベラル”諸国は、あまりにも非人道的なイスラエルやアメリカに、経済制裁や国際的非難を実行しないのか。イスラエルに対して、アメリカは武器を送り続けている。アメリカIT企業は、ウクライナとイスラエルに、AI兵器を送り続けており、アジアの戦争はもっと広範囲でひどくなるので、AI兵器が使われるであろうと述べている(朝日新聞3月末)。

 イスラエル問題のそもそもの発端は、イギリスのいわゆる「3枚舌外交」である。第1次大戦末期、フセイン・マクマホン協定でアラブ国家の独立をアラブに約束したにもかかわらず、翌年のサイクス・ピコ条約で英仏ロシアがこの地を分割支配するという植民地的な取り決めを行った。その翌年にバルフォア宣言でパレスチナにユダヤ人国家の建設を約束した。

それらは相互に矛盾しているだけではなく、あり得ないような植民地主義的な条約だ。米英は、戦後の植民地主義からの開放を見越して、中東の石油とアジア・欧州・アフリカを結ぶ地政学的要所に、イスラエルを建国し、アラブ世界にくさびを打ち込んだ。

2次世界大戦後には、国連で「2国間併存(イスラエルとパレスチナ)」が決議されたにもかかわらず、パレスチナ国家は戦後80年認められないまま、イスラエルが戦争で破壊し入植を続けている。21世紀のいま、「遅れてきた植民地主義」は終わらせなければならない。

 

ウクライナ問題

 ウクライナ問題は、2022224日のロシアの侵攻からではない。そもそもウクライナは、多民族国家であり、既に、2004年のオレンジ革命、2014年のマイダン革命が、西ウクライナ(西欧派)と東ウクライナ(ロシア派)の対立の始まりだ。西欧・アメリカは、西ウクライナを支援。他方で、東部ウクライナの3割を占めるロシア系マイノリティは、自治を要求し独立を宣言。2014年からポロシェンコ大統領が内戦を開始、アゾフ隊などを正規軍に編入した内戦でロシア系13000人が死亡。内部対立から始まったという歴史的な認識が必要だ。

 2022年のロシア侵攻直後から停戦交渉が始まり、ロシアとウクライナは「中立」に合意し、6月まで交渉は続けられていた。停戦交渉を中断させ戦争を続けさせたのは、イギリスのジョンソン首相とアメリカのバイデン大統領だ。

ゼレンスキーは、当初は停戦交渉に前向きだったが、やがて、戦争を続けるには武器が必要と、世界中に武器を求めて戦争を続けている。当初はウクライナ優勢であったが、徐々にロシア優勢になってきている。戦争継続を支援しているのは、G7および欧州(EUNATO)だ。中国・インド・グローバルサウスの多くは停戦を要求し、仲裁で動いている。イスラエル・ガザ戦争と同様の構図だ。ロシア・プーチン、アメリカ・トランプは、米ロが話し合えば、戦争は終わると述べている。

ゼレンスキーは大量の武器を要求し続けているが、その半分は他の紛争地域に横流ししている。政権内部の腐敗と抗争も、欧州の「支援疲れ」に拍車をかけている。ポーランドのように最もウクライナを支援してきた国もウクライナの穀物輸出をめぐり国境を封鎖するなど、対立は中東欧全域に広がっている。

アメリカが武器を送らなければ、戦争は終わる。しかし停戦が準備される中、5月にアメリカ議会は、9兆円の兵器をウクライナに、3兆円をイスラエルに送ることを決定。戦争を継続し儲けているのは、アメリカの武器商人だ。

ウクライナ国民の間にも、厭戦気分は高まっている。2万人の脱走者がモルドヴァ国境を通り、西に逃亡している。5月に行われるはずだった大統領選挙でゼレンスキーは勝てない可能性を見越し、大統領選は延期され続けており、ゼレンスキーは任期切れのまま大統領にとどまっている。

次号に続く。(文責:事務局)

2024年10月2日水曜日

自民党政治サヨナラの大運動

 共闘の力で

自民党政治サヨナラの大運動を

         法政大学名誉教授 東京革新懇代表世話人 


    
五十嵐 仁

 

 自民党総裁選で石破茂氏が選出された翌日、928日に開催しました東京革新懇学習交流会での五十嵐仁さんの講演の要旨をご紹介します


歴史的なチャンスが巡ってきました。岸田首相が総裁選への立候補断念を表明したからです。危機に陥った自民党は総裁選でメディアジャックを図り、石破茂新総裁を選出して解散・総選挙での逃げ切りを画策しています。

 総裁選でイメージチェンジを狙い、国民の注目を集めて支持率を回復しようというわけです。そのために選挙期間を最長の15日間とし、候補者も過去最多の9人になりました。

 しかし、岸田首相の出馬断念の背景には、政権と自民党政治の深刻な行き詰まりがあります。それはテレビでの露出度の増大など小手先のまやかしで乗り切れるほど簡単ではありません。自民党による長年の悪政の積み重ねによるものだからです。

 安倍政権から続く菅・岸田という三内閣連続での政権投げ出しはこの国の土台の腐食に原因があり、かつては一流だとされた経済も政治とともに劣化への道をたどってきました。政権担当能力を失った自民党の総裁の椅子に誰が座ったとしても、立て直すことは不可能です。

 総選挙で決着をつけるしかありません。日本をぶっ壊してきた自民党政治の罪に対して、今こそはっきりとした罰を与えるべきでしょう。政権から追い出すという形での明確な罰を。 

 二重の意味での行き詰まり 

岸田首相を追い詰めたのは世論の力でした。内閣支持率は昨年暮れに3割台を切り、一度も回復しなかったからです。4月の衆院3補選、静岡県知事選や前橋市長選挙、小田原市長選などの首長選挙でも自民党は連戦連敗が続き、岸田首相はたとえ総裁に再選されても1年以内に実施される総選挙では勝利できないと判断したのでしょう。

 このような人気低落の最大の要因は自民党派閥の裏金事件と統一協会との癒着でした。いずれも岸田内閣以前からの組織犯罪です。裏金事件では、それがいつからどのような経緯で、誰が始めて何に使ったのか、いまだに明らかになっていません。再発防止策も小手先のごまかしに終始しました。統一協会と自民党との腐れ縁についても、再調査や実態解明がなされず、問題は先送りされたままです。

 岸田内閣は、三自衛隊の統合司令部新設のための改定防衛庁設置法、自治体を戦争に協力させる改定地方自治法、特定秘密保護を産業分野にまで拡大する経済秘密保護法の成立や殺傷兵器の輸出を可能にする次期戦闘機共同開発条約の批准などを強行し、安保政策の転換と大軍拡を推し進めてきました。

「聞く力」は形だけで国会軽視と強権姿勢は変わらず、安倍政治の拡大再生産にすぎません。辺野古新基地建設、インボイスの導入、マイナカードやマイナ保険証の強要、関西万博の推進、米兵犯罪の隠蔽など、民意無視も止まりません。

金権化・右傾化・世襲化という自民党の宿痾(持病)はますます悪化し、岸田政権になってから党役員や大臣などの辞任・解任は約30人に上ります。最近でも、広瀬めぐみ参院議員と堀井学衆院議員の辞職・起訴がありました。持病が全身を蝕むようになっているのです。

 私は27年前に『徹底検証 政治改革神話』(労働旬報社)を刊行して、「政治改革」のやり直しを提言しました。このとき政党助成金が導入されたにもかかわらず企業・団体献金が温存され、政治資金の二重取りによって自民党は焼け太りしたのです。そのツケが、今回回ってきたということになります。このとき企業・団体献金や政治資金パーティーを禁止していれば、今回のような裏金問題は起きなかったはずですから。 

総裁選で露呈した自民党の劣化 

 自民党の総裁選では12人が出馬の意向を示し、9人が立候補しました。あたかも派閥の縛りがなくなったかのような印象を振りまき、メディアでの露出度を高める作戦だったと思われます、一見すれば多士済々のようですが、売名のチャンスだと思い「我も我も」と手を挙げたにすぎません。

 9人も立候補したにもかかわらず、その主張に大きな違いはなく明確な共通性がありました。誰一人として触れなかったテーマがたくさんあるからです。それは裏金事件の再調査であり、企業・団体献金や政治資金パーティーの禁止であり、統一協会との腐れ縁の断絶という問題でした。

 とりわけ統一協会の問題では、総裁選中に組織的な癒着を示す新たな事実が明らかになりました。朝日新聞がスクープしたもので、統一協会や国際勝共連合の会長と安倍首相が総裁応接室で面談し、実弟の岸信夫元防衛相と側近の萩生田光一元経済産業相が同席していました。2013年の参院選公示の4日前で参院選比例候補だった元産経新聞政治部長への支援を確認するものだったといいます。自民党が組織ぐるみで反社会的なカルト集団と癒着していたことを明確に示す新たな事実でしたが、この問題について再調査して関係を断絶する意向を示した候補者は一人もいませんでした。

 また、各候補者はアベノミクスの失敗や消費税減税、物価高対策、お米の安定供給などについても口をつぐみ、明文改憲の推進や原発の容認、日米同盟維持など大軍拡・大増税の推進については足並みをそろえています。退陣が決まっている岸田首相が改憲促進を申し送って次期首相に縛りをかけましたが、これに異を唱える人はいませんでした。

岸田政権を支えてきた幹部の無自覚と無責任もあきれるばかりです。茂木敏充幹事長、林芳正官房長官、上川陽子外相、河野太郎デジタル相、高市早苗経済安保相などは、これまでとは異なった政策も打ち出していますが、その多くは野党の政策のパクリで、岸田政権を支えてきたことへの反省は全くありません。

若手とされる小林鷹之前経済安保相は選択的夫婦別姓や同性婚に反対するなど最も保守的な伝統的家族観を示し、小泉進次郎元環境相による解雇規制の緩和など「聖域なき規制改革」も、父親である小泉純一郎元首相が20年以上も前に掲げた「聖域なき構造改革」の焼き直しにすぎません。いずれも時代錯誤であまりにも古い自民党の体質を象徴するものでした。

大きな曲がり角にあり、「新たな戦前」に向かう「衰退途上国」としての日本をどう立て直すのか。国内総生産(GDP)でドイツに抜かれて4位になり、国民1人当たりGDPでは34位、国際競争力でもかつての1位から35位にまで後退している現状からどう抜け出すのか。東アジアの平和と豊かな日本の将来ビジョンを示している候補者も皆無でした。

グローバル・パートナーシップを掲げて地球規模でのアメリカ追随を深め、日米軍事一体化によって防衛(盾)だけでなく攻撃(矛)も担うとする「戦争する国」への変貌と専守防衛の放棄、攻撃的兵器の取得と輸出に前のめりで、米軍の尖兵として戦争に巻き込まれる危険性をどう防ぐのか、全く展望が示されていません。 

 活路は共闘にあり 

 「振り子の論理」による「疑似政権交代」を許さず、自民党政治への追撃戦によって政権の座から追い出さなければなりません。そのための唯一の活路は市民と野党の共闘にあります。自民党を政権から追いだすには野党第一党の立憲民主党の議席だけでは足りないからです。

 立憲民主党の新しい代表に選ばれた野田佳彦元首相は、一方では消費税減税に消極的で原子力発電の容認や日米同盟機軸などの「現実的政策」を掲げながら、他方では野党の最大化を図るとして「誠意ある対話」を呼び掛けています。自民党を離れた保守中道勢力を引き寄せるためだとしていますが、野党連携のあり方については大きな課題を残しています。

 いずれにせよ、自民党政治とサヨナラするためには、野党勢力が力を合わせて追い込むしかありません。改憲を阻止し、分断と裏切りを許さず、反腐敗包囲網を継続しつつ共闘を再建することが野党の側の課題です。

 裏金事件と統一協会との癒着は自民党の最大のアキレス腱になっています。総選挙でも主要な争点としなければなりません。野党が一致して自民党を孤立させ、これまで支持していた保守や中間層を離反させる可能性が生まれているのですから。

 維新など「第二自民党」のすり寄りや裏切りを許さず、共産党を含む幅広い共闘の再建をめざさなければなりません。裏金事件追及の突破口を開いたのは共産党の機関紙『赤旗日曜版』でしたし、統一協会や国際勝共連合と真正面から対峙してきたのも共産党だったのですから。

 この点で、立憲民主党の野田新代表が共産党と政権を共にしないという姿勢を示し、戦争法の違憲部分を「すぐに廃止できない」と表明しているのは大きな問題です。そもそも戦争法への反対は立憲民主党の立党の原点であり、野党共闘の出発点ではありませんか。そこに立ち返ることを求めたいと思います。

 市民と野党の共闘では、大きな実績を積み重ねてきた東京革新懇の役割は極めて大きくなっています。過去8年の間、62自治体で40の共闘候補を擁立し、先の都知事選も野党共闘でたたかうことができました。立憲民主党の都連は共闘を否定していません。この経験と条件を活かすことが必要です。

 来るべき総選挙は、国政から犯罪者集団を一掃するための貴重な機会となるでしょう。法の網の目をかいくぐって利益を図ったり目的を達成したりする悪弊は政治家や企業経営者を蝕み、不正行為は自衛隊にまで及んでいます。このような歪みを正し、立法府にふさわしい政党と議員を選ぶことでしか、政治に対する信頼を回復することはできないのですから。

2024年9月2日月曜日

PFAS汚染と血液検査

 多摩のPFAS汚染と血液検査

多摩地域の有機フッ素化合物汚染を明らかにする会 共同代表


       根木山幸夫
 

 米軍横田基地が汚染源とされ、発がん性等があるとされるPFAS、この問題で多摩地域の住民運動で奮闘されています根木山幸夫さんに寄稿して頂きました。

 

PFASとは 

PFAS(ピーファス)とは有機フッ素化合物の総称で約5000種類以上あり、人工的な物質です。水や油をはじく、熱に強いなどの性質を持ち、泡消火剤や半導体の洗浄のほか、こげつかないフライパンや防水衣服、ハンバーグの包装紙、化粧品などの生活用品に使用されています。

 泡消火剤は1970年代から世界中の米軍基地に配備され、消火訓練に使用してきました。

PFASは環境中で分解されないことから、永遠の化学物質(フォーエバー・ケミカル)とも呼ばれ、河川・海水や土壌中に存在しつづけ、地下水や動植物を汚染しています。

 PFAS の主な3種類(PFOS、PFOA、PFHxS)は、その毒性から「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」で2009年、19年、22年にそれぞれ製造・保有・使用が禁止されました。 

血液検査と深刻な結果 

多摩地域の水道水の汚染について東京都は2020年1月に初めて公表し、府中市と国分寺市の二つの浄水所では1119年に国の暫定目標値の23倍の汚染が続いていたこと、0421年のデータでは約20自治体で汚染が高いことが明らかになりました。

多摩地域のPFAS汚染を明らかにする会(多摩PFAS会)は228月に、PFASの体内への蓄積を調べようと自主的な血液検査を呼びかけ、236月末までに多摩30自治体の791人の検査を実施しました。

 9月発表の検査報告(原田浩二京都大学准教授)では、主なPFAS4種類の血中濃度の合計値でみると、791人のうち365人(46%)が米国科学・工学・医学アカデミーのガイダンスの指標値を上回りました。この指標値は、臨床医が脂質代謝異常や甲状腺ホルモン、腎がん、潰瘍性大腸炎などの精密検査を勧めるべきという内容です。自治体別にみた場合、指標値を超えた人の割合が高い自治体は国分寺市85人中79人(93%)、立川市47人中35人(74%)など深刻な結果でした。 

健康影響評価と水質基準 

内閣府食品安全委員会は244月、PFOAPFOSの1日の許容摂取量を、それぞれ体重1キログラム当たり20ナノグラムとする健康影響評価書を了承しました。

欧州食品安全機関(EFSA)が20年に定めた許容摂取量は、PFOAとPFOSの合計で0.63ナノグラムです。日本の評価書はこれに比べると64倍です。また、米国環境保護庁(EPA)が23年に定めた許容摂取量はPFOAが0.03、PFOSが0.1ナノグラムです。日本の評価書はそれぞれ666倍、200倍となります。

今回の評価書でいけば、環境省で検討されている飲料水基準は暫定目標値(50ナノグラム/リットル)と変わらない(小泉昭夫京都大学名誉教授の試算)レベルになる恐れがあります。

世界保健機関(WHO)の専門組織である国際がん研究機関(IARC)は、PFOAの発がん性を「可能性がある」から2段階引き上げ、「発がん性がある」に定め、PFOSについては新たに「可能性がある」の分類に追加しました。ところが、評価書では国際的な発がん性評価を取り入れていません。

232月、欧州連合(EU)議会にデンマークなど5カ国が、1万種類以上のPFASをEU全体で禁止することを提案し、25年内に最終案をまとめ、可決されれば26年以降に禁止令が発効します。

米国EPAは22 6月、飲料水中のPFAS生涯健康勧告値をPFOSを0.02、PFOAを0.004ナノグラム/リットルと従来より約3千倍厳しい値にしました。それに沿って23年3月に飲料水規制・目標値案としてPFOS、PFOAそれぞれ4ナノグラム/リットルとしました。 

横田基地は重大な汚染源 

横田基地ではベトナム戦争当時から泡消火剤を使った訓練を定期的に実施してきました。放出された泡消火剤は空気中に拡散し、周辺土壌中に浸み込み、固着した土壌から長年にわたって地下水に浸み出していきます。

 横田基地での漏出事故について、ジャーナリストのジョン・ミッチェル氏は1812月、公開文書をもとに、〈1017年に泡消火剤が計3161リットル漏出、12年には3028リットルが貯蔵タンクから土壌に漏出。しかし漏出は日本側に通報されなかった〉(要旨)と報道しました。

横田基地内の飲料水は基地内の井戸水を使用していますが、米軍は飲料水品質年次報告書で検査結果を161820年に公表し、汚染の事実を認めています。

以上のことから横田基地が重大な汚染源であることは否定できない事実です。

一方、米政府はPFASを有害物質とし、水質や土壌汚染の規制を強化し、汚染除去にも取り組んでいます。しかし、これらの対策は米国内の基地・工場からの汚染が対象であり、日本にある基地については情報も示さず、汚染の事実を認めていません。

日米地位協定3条では米軍に排他的管理権を認め、日本側の立ち入り権が明記されていません。環境補足協定では「環境に及ぼす事故(すなわち漏出)が現に発生した場合」に立ち入り権を規定していますが、一部を除いて米側が通報していません。

 汚染源を明らかにしようと、多摩PFAS会は235月~8月、150カ所の井戸水などを調査しました。分析を担当した原田准教授の調査報告では、北多摩地域の広範囲の地下水が環境省の暫定目標値を超え、横田基地の南東側の立川市の浅井戸で暫定目標値の62倍のPFOSが検出され、東側にある国分寺市、府中市などの深井戸でPFOS、PFHxSが高い傾向がみられました。地質構造を考察すると、PFASに汚染された地下水が西部から東部へと移動していると推測されました。

 多摩PFAS会の声明では、調査結果からみて「横田基地が最大の汚染源」と考えられると指摘しました。 

米軍が漏出を認める 

 先述のミッチェル氏が報じた横田基地での泡消火剤漏出の事実をめぐって、236月から大きな展開がありました。

629日、日本共産党の国会議員らが横田基地での泡消火剤の使用について防衛省などから行った聞き取りの中で、防衛省の担当者は同基地で1012年に泡消火剤の漏出が3件あった事実を公式に認めました。

7月21日、防衛省は1812月の漏出報道を受け、191月に米側から報告書を入手した、公表内容をどうするか米側と調整を始めたが、米側から回答を得たのは2212月だったと説明。米軍が漏出の事実を初めて認めたことを明らかにしました。

2311月、多摩PFAS会は「横田基地への立ち入り調査を米軍に求めよ」と岸田首相・防衛大臣宛に要望書を提出しましたが、ゼロ回答でした。