2024年7月23日火曜日

「台湾有事」 無事への道は

東京革新懇代表世話人 新堰義昭

 

「台湾有事」に備えて政府は、沖縄・南西諸島に自衛隊基地を建設し、長射程のミサイル配備、要塞化が進んでいます。しかし「台湾有事」は米軍戦略の想定に過ぎません。

台湾の新しい総統に選ばれた民進党・頼成徳氏が就任式(5月20日)で、「傲慢にも卑屈にもならず、現状を維持する」と演説。これに反発した中国政府は、懲罰のために台湾を取り囲む形で軍事演習を23日、24日に強行。日本AALAの旅で遭遇した新堰義昭代表世話人に、その時の体験を寄稿してもらいました。

 

今回の「日本AALAの台湾・平和の旅」の目玉は、中国大陸から至近距離にある金門島の訪問であった。軍事演習は台湾でも大きく報道されており、中止はやむを得ないと考えていた。

ところが当日の朝、台北市内は平静であった。台北から金門島への飛行便(約1時間余り)はダイヤ通り、金門島の空港でも警備する警官も軍人も確認できなかった。あいにくの雨でアモイを遠望できなかったが、観光客で賑わっていた。どうも中国軍は軍事演習範囲を、民間航空機の飛行ルートを避けて設定したようだ。

金門島のガイドは、中国の軍事演習に馴れっこで、「直接攻撃するなら通報があると考えている。経済的に中国とは緊密な関係がある」と話してくれた。伊波洋一参議院議員は、「台湾では台湾有事との言葉はない。中国が台湾を攻撃してくるという思いもあまりない。しかし台湾が独立するとなると、中国は軍事力を使ってもそれを阻止することは常々表明している」(東京革新懇ニュース3月号)と述べている。

複雑な歴史的な経過があるとはいえ、中国の野蛮で恫喝的な軍事演習は絶対に許されない。軍事的対抗の応酬は、錯誤による「戦争」を招く危険がある。「台湾有事は日本の有事」「戦う覚悟が必要」(麻生太郎自民党副総裁の台湾での講演)など煽る発言も言語道断である。

 台湾は自主、大国とは友好的等距離

旅のもう一つの目玉は、総統府直轄の中央研究院における若い研究者との交流であった。

 王智明氏(欧米研究所研究員)は、「台湾人」と考える「アイデンティティの変容」など世論動向を報告。「一国二制度」については、支持53.5%、反対33.6%であるが、「独立不支持」(「不好」)54.6%、「独立支持」30.4%。このことから戦争を回避するために独立を急ぐべきではないというのが世論の多数と述べた。

続けて、昨年3月20日、台湾の学者・研究者グループ37人が発出した「反戦声明」について、盧倩儀氏(同上)から報告を受けた。台湾が蔣介石軍の戒厳令による40余年の暴力的人権侵害の歴史を乗り越え、研究者の「学問の自由」が保障されていることに刮目。「米中戦争は要らない、台湾は自主を、大国とは友好的で等距離の関係維持を」、米中戦争に巻き込まれないための真剣な探究に感銘を受けた。日本が果たすべき役割は「台湾有事」に備えることではなく、米国、中国を含む北東アジアの平和の架け橋であり、市民レベルの交流の重要性を痛感した。

「反戦声明」(抜粋)

「米中双方はすべての意見の相違を平和的手段で解決しなければならない。・・・台湾は自主独立の立場をとり、経済、環境、学術、文化など全人類の平等・ 福祉・平和を増進できる分野で各国と協力すべきであり、特に各大国とは等距離の外交関係を維持し、知恵のある戦略と手腕をもって台湾海峡両岸の安全を守るべきであって、アメリカ覇権主義の弟分や子分になるべきではなく、あるいは 逆に中国の「戦狼」の対抗関係の一環となるべきでもない。私たちは、紛争につながるいかなる意図的な挑発行為も非難し、挑発行為の停止がもたらす効果と利益が軍需産業や軍隊の駐留、あるいは武力による脅威や戦争の発動よりもはるかに大きなものであると信じている。」

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