2024年7月23日火曜日

日米首脳会談は何を示しているか?


 日本平和委員会事務局長 

            千坂 純

 「平和国家」を根底から覆した

  日本国内で支持率最低を更新し続けている岸田文雄首相は、米バイデン大統領に国賓として招かれ、410日に日米首脳会談を行い、日米共同声明を発表した。これは、安倍晋三元首相の後援を得て首相になれた岸田首相の下で、とんでもなく危険な方向に強化されてきた日米軍事同盟を、またさらにとんでもなく強化するものなのだ。その中身を見てみよう。

 ところで、戦後歴代首相で国賓として米国に招かれたのは、中曽根康弘、小渕恵三、小泉純一郎、安倍晋三首相の4人しかいない。なぜ、岸田首相が国賓としてもてなされたのか?

 その理由を端的に表したのが、訪米前の45日にエマニュエル駐日米大使が産経新聞に語ったこの言葉だ。

「岸田政権は2年間で、70年来の(日本の安全保障)政策の隅々に手を入れ、根底から覆した。防衛費のGDP(国内総生産)比2%への増額、反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有、そのための(米国製トマホークの)購入に踏み切った。防衛装備品の輸出にもめどをつけた」(ゴチックは筆者。以下同じ

 首相就任後わずか2年余で、戦後、日本国憲法第9条と国民のたたかいによってつくり出してきた、「平和国家」としての様々な制約の「すみずみに手を入れ、根底から覆した」――その実績が評価されたのである。

 その「功績」は、日米共同声明でも賞賛されている。

 過去3年間を経て、日米同盟は前例のない高みに到達した。我々がこの歴史的な瞬間 に至ったのは、我々がそれぞれ、そして共に、わずか数年前には不可能と思われたような方法で、我々の共同での能力を強化するために勇気ある措置を講じたためである。」「米国は、日本が自国の国家安全保障戦略に従い、2027日本会計年度に防衛力とそれを 補完する取組に係る予算をGDP比2%へ増額する計画、反撃能力を保有する決定及び自衛隊の指揮・統制を強化するために自衛隊の統合作戦司令部を新設する計画を含む、防衛力の抜本的強化のために日本が講じている措置を歓迎する。これらの取組は共に、日米同盟を強化し、インド太平洋地域の安定に貢献しつつ、日米の防衛関係をかつてないレベルに引き上げ、日米安全保障協力の新しい時代を切り拓くこととなる

 日米同盟が世界規模で機能

  国会にも諮らず、閣議決定だけで、「平和国家」の政策を覆す岸田自公政権を、こう絶賛した上で、日米共同声明は、日米軍事同盟を次のように位置付ける。

「我々のグローバルなパートナーシップの中核は、日米安全保障条約に基づく二国間の防衛・安全保障協力であり、これはかつてないほど強固である。我々は、日米同盟がインド太平洋地域の平和、安全及び繁栄の礎であり続けることを確認する。バイデン大統領は、核を含むあらゆる能力を用いた、同条約第5条の下での、日本の防衛に対する米国の揺るぎないコミットメントを改めて表明した。岸田総理は、日本の防衛力と役割を抜本的に強化し、同条約の下で米国との緊密な連携を強化することへの日本の揺るぎないコミットメントを改めて確認した。」

 日米同盟をインド太平洋地域を中心に、「グローバル・パートナー」として、世界規模で機能するものに強化する。米国は核を含むあらゆる戦力を投入する。一方、日本は大軍拡をおしすすめ、役割分担を拡大する――というわけである。 

日本は米国の戦争にも共にある 

 米国と共に世界規模で行動する――そのことを、もっと直截に、平易な言葉で語ったのが、日米首脳会談の翌日行われた、米議会での岸田首相の演説だ。「日本の国会では、こんな拍手に迎えられることはない」などと、赤面するようなはしゃぎぶりを見せながら、彼はこう宣言した。

「『自由と民主主義』という名の宇宙船で、日本は米国の仲間の船員であることを誇り に思います。 共にデッキに立ち、任務に従事し、そして、なすべきことをする、その準備はできて います。 世界中の民主主義国は、総力を挙げて取り組まなければなりません。

 皆様、日本は既に、米国と肩を組んで共に立ち上がっています。米国は独りではありません。日本は米国と共にあります。日本は長い年月をかけて変わってきました。第二次世界大戦の荒廃から立ち直った控えめな同盟国から、外の世界に目を向け、強く、コミットした同盟国へと自らを変革してきました

 これを聞いていたある米政府関係者は、朝日新聞に次のように語ったと言う。

 「考えて欲しい。首相のスピーチを聞けば、米議会は その言葉通りに受け止める。『日本は米国と共にある』 ということは、我々にとってみれば、最もつらくて過酷 な戦争という局面であっても、日本は米国と手を携えて一緒にやるということになる。しかも首相は『台湾有事だけは……』などと限定を付けなかったことにも驚いた。世界中の至るところで米国が関わる戦争に日本も グローバルに参加する決意があると受け止めることが できる。少なくとも米議会は間違いなくそう受け止めるし、首相演説を根拠に、これから日本にますますいろんな要求を強めるだろう」 (朝日新聞デジタル、4月20日)

 岸田首相は、米議会でとんでもない約束をしたことになる。だがそれは、今回の日米首脳会談の核心をズバリと言い表した言葉と言えるだろう。 

自衛隊の戦争加担へのメニュー 

 こうした「米国と肩を組んで共に立ち上がる」同盟国として、日本の役割をさらに拡大するために、日米首脳会談では「新たな戦略的イニシア」を打ち出した。

 その主なものは――

■より効果的な日米同盟の指揮・統制の枠組みの構築。  

■日本の敵地攻撃能力強化のための米国による支援

■地域パートナーとの関係強化…▸日米豪防空協力 ▸AUKUS諸国(米英豪)との連携(武器技術開発)▸日米韓(共同訓練)▸定期的な日米英3カ国共同訓練▸日米豪の無人機、自律性兵器分野の協力など

■日米の武器共同開発・生産の協力強化(ミサイル、次期ジェット練習戦闘機の共同開発、米艦船や軍用機の日本での整備・修理など)

■米国の拡大抑止(核威嚇態勢)の強化=日本の防衛力によって増進される米国の拡大抑止を引き続き強化することの決定的な重要性の確認

 ・・・などである。

 「より効果的な日米同盟の指揮・統制」(=司令部の一体化)については、次のように表現されている。

「我々は、作戦及び能力のシームレスな統合を可能にし、平時及び有事における自衛隊と米軍との間の相互運用性及び計画策定の強化を可能にするため、二国間でそれぞれの指揮・統制の枠組みを向上させる意図を表明する。より効果的な日米同盟の指揮・統制は、喫緊の地域の安全保障上の課題に直面するに当たり、抑止力を強化し、自由で開かれたインド太平洋を促進していく」

作戦と能力を「シームレスに(切れ目なく)」統合し、有事(戦争)における一体的な活動を可能にするため、指揮・統制機能の一体化を図るというわけである。

この具体化は、7月下旬に開かれる日米安全保障協議委員会で行われるということだが、方向としては、現在、戦争指揮権限を有しない在日米軍司令部(東京・横田基地)に、実際の戦争指揮権限を持つインド・太平洋軍司令部(ハワイ)の権限を委譲し、統合任務部隊司令部を設置。これが今年中に東京・市ヶ谷の防衛省内に編成される、自衛隊の統合作戦司令部と連携して、戦争を指揮する体制をつくるのである。

なぜ、日米の実戦司令部を一体化するのか? これは、岸田政権の下ですすめられている「敵地攻撃能力」の増強と密接な関係がある。

首脳会談に先立つ21日に、日米軍事同盟強化に強い影響力をもつ米国のシンクタンク「戦略・国際研究センター(CSIS)」から出された「日米同盟にとって重要な次のステップ:指揮統制の近代化」と題したレポートは、次のように述べている。

本が防衛強化に向けて急速に動いていることから、⽇⽶同盟変における次の ステップ、すなわち指揮統制構造の近代化の重要性がまっている本がより有能な軍事パートナーとなるにつれ、国と本はより運可能な同盟を援するための新たな構造を構築する必要がある。指揮統制構造の変は同盟の信頼性を幅にめ、東アジアにおける抑⽌⼒の強化に役つだろう。⽇本が計画している反撃能⼒の獲得は、この取り組みに特に緊急性を与えている。⽶国と⽇本は初めて、戦術的(標的の特定と訴追)と戦略的(紛争激化の管理)の両⽅で武⼒⾏使を調整で きる必要がある

つまり、他国を攻撃するときに、ばらばらに攻撃しても効果はない(そもそも自衛隊単独で敵地攻撃をできる能力はない)。米軍の指揮・統制の下に米軍・自衛隊が役割を分担して、敵を攻撃しなければ戦争にならないというわけである。

このレポートは次のようにも言っている。

「これは政治的にデリケートな話題であり、特に本では軍隊に対する憲法上の制約 が依然として強く、軍紛争への巻き込まれへの懸念が根強く残っている。しかし、同盟の指揮統制をより層統合するという論理には議論の余地がない」

米軍の指揮の下に自衛隊が他国を攻撃する態勢をつくることは、日本国憲法上の問題があるし、米国の戦争に日本を巻き込む懸念を強める。しかし、それもお構いなしにこれをすすめるべきだ、というわけである。

ここにいま進められている日米軍事同盟強化と、その下での大軍拡の危険性が端的に示されている。この道を許してはならない。

「台湾有事」 無事への道は

東京革新懇代表世話人 新堰義昭

 

「台湾有事」に備えて政府は、沖縄・南西諸島に自衛隊基地を建設し、長射程のミサイル配備、要塞化が進んでいます。しかし「台湾有事」は米軍戦略の想定に過ぎません。

台湾の新しい総統に選ばれた民進党・頼成徳氏が就任式(5月20日)で、「傲慢にも卑屈にもならず、現状を維持する」と演説。これに反発した中国政府は、懲罰のために台湾を取り囲む形で軍事演習を23日、24日に強行。日本AALAの旅で遭遇した新堰義昭代表世話人に、その時の体験を寄稿してもらいました。

 

今回の「日本AALAの台湾・平和の旅」の目玉は、中国大陸から至近距離にある金門島の訪問であった。軍事演習は台湾でも大きく報道されており、中止はやむを得ないと考えていた。

ところが当日の朝、台北市内は平静であった。台北から金門島への飛行便(約1時間余り)はダイヤ通り、金門島の空港でも警備する警官も軍人も確認できなかった。あいにくの雨でアモイを遠望できなかったが、観光客で賑わっていた。どうも中国軍は軍事演習範囲を、民間航空機の飛行ルートを避けて設定したようだ。

金門島のガイドは、中国の軍事演習に馴れっこで、「直接攻撃するなら通報があると考えている。経済的に中国とは緊密な関係がある」と話してくれた。伊波洋一参議院議員は、「台湾では台湾有事との言葉はない。中国が台湾を攻撃してくるという思いもあまりない。しかし台湾が独立するとなると、中国は軍事力を使ってもそれを阻止することは常々表明している」(東京革新懇ニュース3月号)と述べている。

複雑な歴史的な経過があるとはいえ、中国の野蛮で恫喝的な軍事演習は絶対に許されない。軍事的対抗の応酬は、錯誤による「戦争」を招く危険がある。「台湾有事は日本の有事」「戦う覚悟が必要」(麻生太郎自民党副総裁の台湾での講演)など煽る発言も言語道断である。

 台湾は自主、大国とは友好的等距離

旅のもう一つの目玉は、総統府直轄の中央研究院における若い研究者との交流であった。

 王智明氏(欧米研究所研究員)は、「台湾人」と考える「アイデンティティの変容」など世論動向を報告。「一国二制度」については、支持53.5%、反対33.6%であるが、「独立不支持」(「不好」)54.6%、「独立支持」30.4%。このことから戦争を回避するために独立を急ぐべきではないというのが世論の多数と述べた。

続けて、昨年3月20日、台湾の学者・研究者グループ37人が発出した「反戦声明」について、盧倩儀氏(同上)から報告を受けた。台湾が蔣介石軍の戒厳令による40余年の暴力的人権侵害の歴史を乗り越え、研究者の「学問の自由」が保障されていることに刮目。「米中戦争は要らない、台湾は自主を、大国とは友好的で等距離の関係維持を」、米中戦争に巻き込まれないための真剣な探究に感銘を受けた。日本が果たすべき役割は「台湾有事」に備えることではなく、米国、中国を含む北東アジアの平和の架け橋であり、市民レベルの交流の重要性を痛感した。

「反戦声明」(抜粋)

「米中双方はすべての意見の相違を平和的手段で解決しなければならない。・・・台湾は自主独立の立場をとり、経済、環境、学術、文化など全人類の平等・ 福祉・平和を増進できる分野で各国と協力すべきであり、特に各大国とは等距離の外交関係を維持し、知恵のある戦略と手腕をもって台湾海峡両岸の安全を守るべきであって、アメリカ覇権主義の弟分や子分になるべきではなく、あるいは 逆に中国の「戦狼」の対抗関係の一環となるべきでもない。私たちは、紛争につながるいかなる意図的な挑発行為も非難し、挑発行為の停止がもたらす効果と利益が軍需産業や軍隊の駐留、あるいは武力による脅威や戦争の発動よりもはるかに大きなものであると信じている。」

東京革新懇 都知事選声明(7月16日)

 声明

都知事選で広がった市民と野党の共闘をさらに発展させ、都政・国政の転換をめざそう

2024716日 東京革新懇代表世話人会

東京革新懇は、都知事選挙にあたり531日にアピール「自民党と二人三脚の小池都政を終わらせ、市民と野党の共同候補・蓮舫さんの勝利をめざすご奮闘をこころより呼びかけます」で奮闘を呼びかけた。

しかし、小池都知事が290万票を獲得し当選、石丸伸二氏165万票、蓮舫候補は136万票で3位の残念の結果となった。蓮舫さん勝利が政治変革の巨大な流れがつくることを恐れた勢力から、蓮舫さんの立候補表明以来、外国籍”“共産党が主導している、ジェンダー視点からのきつい等の攻撃がネット上で殺到した。

また、石丸伸二候補がSNSを活用し第2位となったが、TOKYO自民党政経塾塾長が選対本部長を担うなど、石丸候補への様々なテコ入れによる蓮舫候補への打撃が図られた。

短期間の選挙戦の中で、蓮舫候補の人柄、ボトムアップの政治、社会的弱者に寄り添った政策、神宮外苑をはじめ大規模再開発の見直しなどを都民に十分に届けきることが出来なかった。

一方、小池都知事は、コロナ禍では連日マスコミに登場し、都知事選も意識しながら、都民が要求していた学校給食の補助、高校授業料の無償化、子育て支援として18歳以下の子ども一人当たり月額5000円支給を実施し、小池知事はそれなりにやってくれているとの都民の一定の評価が広がりをみせた。しかし、小池都知事は“8年間の実績”を標榜しながら、テレビ討論を“公務”を理由に拒絶したところに、政府・大企業と一体になり大規模再開発を最重点にし、都民に背を向ける本質からくる弱点がものの見事に示されている。各分野・地域で都民の運動も広がり、小池都政と都民の矛盾は確実に広がっている。

また、首都東京の知事選において、自民党が候補者を擁立出来なかったばかりか、小池知事を表立って支持することすら出来なかった。さらに、同時に行われた都議補選においては、自民党は8人擁立し、現有5議席から2議席に後退したことも、自民党への引き続く都民の厳しい批判を示している。

2014年の集団的自衛権閣議決定とのたたかい以来の東京における市民と野党の共闘の発展の上に、宇都宮健児、前川喜平氏ら5氏、立憲民主党・共産党・社民党・新社会党・生活者ネット・綠の党・ミライ会議の7党会派、市民団体による候補者選定委員会の設置、都段階の取り組み、各地域の取り組みとかつてない市民と野党の共闘が広がった。このことを財産と確信にしなければならない。また、蓮舫候補の街頭演説にはかつてない人々が集まり、熱気に包まれた。「ひとり街宣」の自主的運動が広がったことも今後の財産である。

今回の都知事選において、全国革新懇の呼びかけで7波に渡る全国支援行動が取り組まれ、延べ269人の行動となった。暑い中の全国の支援にこころより感謝申し上げる。

東京革新懇は、都民本位の都政への転換をめざして一層奮闘するとともに、迫りくる総選挙に向けて、支配層が恐れる市民と野党の共闘をさらに発展させ、自民党政治を終らせ、国民本位の政治への転換をめざすものである。