2022年3月31日木曜日

布施祐仁さんん講演

 アメリカの対中国包囲網形成

米軍戦略 日本が戦場となることが前提


3
12日三多摩革新懇総会があり、ジャーナリストの布施祐仁さん(前平和新聞編集長)が「敵基地攻撃能力保有と9条改憲がもたらすもの-ウクライナ情勢にも触れてと題して講演。その要旨をご紹介します。
 

ロシアの侵略、世界史的分水嶺

ウクライナ事態に触れた上で本題に入る。

 プーチンがウクライナに何を求めているかというと、NATOに入らないだけでなく、併合したクリミア半島の主権をロシアに認めろ、親ロシア派が実効支配しているドンバス地方の独立を要求、つまり領土拡張。いかなる理屈でも正当化できない。第二次世界大戦以降の国連憲章に基づく国際秩序への挑戦だ。これが崩壊すると、力の論理が支配する世界になる。これを許すか否か、世界史的分水嶺だ。

 国連緊急特別会合、国連出来て11回しか開催されてない。国連安保理が機能しない場合に開催。すべての国に発言権があり100人以上が発言。小国の発言が非常に印象に残った。小国は力じゃ守れない。国連憲章というルールにもとづく国際秩序あってこそ安全守れる。本当に自分たちの国の問題だと141ヵ国の賛成で国連憲章守ろうとの決議案を採択。自国にとり非常に重要だということを示している。

 中国が、アジアでやるんじゃないかと不安になっている人多い。国家体制として非常に中央主権的でかつ一方的に押し付けることがある。

 プーチンの侵略を失敗させることができれば、中国に対してもやるなという力が働く。文字通り大きな分水嶺になっている。 

日米同盟のための集団的自衛権

 ウクライナ侵攻で、安倍元首相は、憲法9条なんかじゃ守れない、アメリカと核共有すべきだと主張。今後、強くなっていく一つの論点が、敵基地攻撃能力。

1950年の鳩山内閣の見解は、ある国が宣戦布告をして、日本にミサイルを打ってくる。それを阻止するために他に手段がない限り、発射される前に、ミサイル基地をたたくことは法理的にはできるという憲法解釈。他に手段がないとは、1956年の防衛庁長官の答弁では、国連の援助がない、日米安保条約がないという、仮定の話だ。その危険があるからと他国に脅威を与える兵器をもつことは、憲法の主旨とすることではないと答弁。

昨年1215日の安倍元首相の講演、敵基地攻撃をアメリカだけに委ねたら、アメリカの若者だけが危険を冒さなければならない。日本も一緒に行かなければ同盟として機能しない。これまでの政府見解とは全く違い、日米同盟のためにとなっている。

2015年に集団的自衛権の閣議決定のときも、アメリカが攻撃されたときに、日本が戦わないでは日米同盟は機能しないと主張。

さらに重大なのは、北朝鮮のミサイルに対して言ってきたが、安倍は中国に応用できると言っている。対中国に本当のねらいがある。

日本が戦場になることを前提の米軍中国封じ込め

アメリカは21世紀に入った安全保障戦略の中心は中東だった。その間に中国が軍拡してきた。中国こそ脅威と、中国とロシアに対抗することへ切り替えていくのが2010年頃。中東で米兵が沢山死に、戦争はこりごりとの感情が国民の中に広がった。なので中国と仮にぶつかったときも、なるべく米兵が被害を受けないようにする。核戦争までエスカレートしないよう、なるべく中国と正面からぶつかることは避ける。中心は、中国から離れた海上封鎖をして、中国がそれ以上戦えないところにもってゆく考え方だ。

2017年に「紛争環境における沿海作戦」というパンフレットが出て、中心は第一列島線、九州南部から奄美大島、沖縄、先島諸島、台湾、フィリッピン諸島に連なる島々の線、ここに海兵隊が対艦ミサイルをもって分散展開し、島を臨時の遠征前進基地とし、そこから中国の艦船を攻撃し、制海権の獲得に寄与するとの作戦構想だ。

アメリカ国防総省に近いシンクタンクの構想だ。中国が太平洋に出てくる出口をふさぐ中国封じ込め作戦だ。中国の艦船が太平洋に出て行ってしまうと、台湾有事のときに、米軍が兵士や補給物資を送り込む際の補給線、西太平洋が中国軍によって脅かされてしまう。これに呼応するように出てきたのが南西諸島への自衛隊ミサイル部隊の配備だ。2019年奄美大島、2020年宮古島、2023年までに石垣島。沖縄本島にも配備しようとしている。

日本政府は、島を守るためのミサイル配備だと言っているが、その上にアメリカの戦略がある。アメリカインド太平洋軍が、2020年に米議会に提出した資料に「第一列島線に沿って同盟国が地上配備型兵器を増強させた上で、これらの兵器による残存性の高い精密打撃ネットワークを必要とする」としている。アメリカから見れば、自衛隊を盾にして中国軍を封じ込める。海兵隊は、島から島、島の中でも移動を繰り返し、中国軍の攻撃をかわしながら攻撃を続ける。南西諸島が主戦場なることを前提にした作戦だ。

アメリカ軍は、これだけでは不十分だと、中国本土の空戦力やミサイル、指揮系統、軍と政府の拠点とかを攻撃しないと勝てないという風になってきている。米軍は、2023年以降、中国本土を攻撃できる、開発中の超音速兵器の中距離ミサイルLRHW、音速の5倍の速さ、変則で飛び迎撃できないと言われる。アメリカ本土に配備しても意味がない。受け入れてくれるのはどこか、日米安保条約を結ぶ日本を第一にしている。

78日「朝日」は、米国防総省関係者のコメントとして「軍事作戦上の観点から言えば、北海道から東北、九州、南西諸島まで日本全土のあらゆる地域に配備したいのが本音だ。中距離ミサイルを日本全土に分散配備できれば、中国は狙い撃ちしにくくなる」と語っている。日本全体戦場になることを前提にしている。

ロシアは、ウクライナ侵攻初日、100発のミサイルを撃ち込んだ。アメリカがイラク侵攻したとき、2日間でミサイルを400発撃ちこんだ。これが現代の戦争だ。アメリカと中国が戦争になったら、中国は数百発のミサイルを撃ち込んでくる。在日米軍の横須賀、横田、三沢、岩国など。超高額の艦船とかステレス戦闘機とか、緊張が高まるとやられる前に一旦日本からグアム西に引き上げる。ミサイル部隊は残し、移動を繰り返しながら中国を攻撃する考え方だ。日本全体が攻撃されることが前提になっている考え方だ。アメリカはそれでいい。アメリカ本土にミサイルが飛んで来るわけじゃないから。日本がどれだけ被害を受けようと、最終的に有利な形に持ち込める。

 専守防衛の放棄と大軍拡

日本の国土が戦場になるわけだが、日本政府はアメリカに追随する道を選び、ミサイルを配備。地対空とか、地対艦とか、射程が約150キロ~200キロぐらい。島と島の間をうめられるかどうかの距離。それを900キロにのばす。奄美大島とか宮古島から900キロというと、中国本土に届く。さらに1500キロにのばす。九州北部に置けば北京まで届く。さらに川崎重工が開発している地対艦ミサイルは2000キロまでのばす。陸上自衛隊と航空機、海上自衛隊の艦船から発射できる。事実上、敵基地攻撃能力に踏み出している。

日本が国是としてきた専守防衛を放棄し戦後の安全保障戦略の大転換になる。

日米と中国、ロシアとミサイル軍拡競争を招くことは間違いない。中国、ロシア包囲するから、相手もさらに強化する。互いに軍拡を招き、緊張を高め、戦争のリスクを高めてしまう。

抑止力論は、相手より強い軍事力を持てば、相手は手を出してこないということ。それは本当か。ウクライナ政府は、ロシアの脅威に対してNATOの力を借りようと加盟申請し、NATOと合同訓練やってロシアを牽制。侵攻をNATOの軍事力で抑止できなかった。むしろ緊張を高めることとなった。今回に限らずよくあることだ。安全保障のジレンマと言って、自国の安全を確保しようと軍事態勢を強化すると、相手にとって脅威になるので互いに緊張を高める。結局、戦争の引き金になってしまう。

戦争にならなかったとしても、軍事費の大幅な増大を招く。自衛隊の兵器体系が変わる。専守防衛の兵器体系から、敵基地攻撃能力にもとづく違うコンセプトになる。例えば中国本土のどこを攻撃するのか、基地だけでなく移動式のミサイル、目標を決めるには監視しなければならない。衛星による監視だが、とてつもない金額がかかる。アメリカに頼ることになる。航空自衛隊幹部が言っていたが、情報はアメリカに頼る。アメリカは2つ要求する。金を出せ。もう一つはアメリカの指揮下に入れと。結局、日本の軍事費が膨大に膨張し、GDP2%、12兆円規模に増やしていく。国民生活予算が圧迫され、消費税も増税。そして、戦場となるのは日本だ。

重大なのは、2014年の憲法解釈の変更によって、集団的自衛権も自衛のための必要最小限に含めてしまった。台湾有事が始まって、日本が攻撃されていない段階でも、米軍と自衛隊が中国本土を攻撃することを法律上は出来ることになる。

すると中国は、日本に数百発のミサイルを撃ち込む。故に、米軍は艦船とか高額兵器は日本から引き上げる。自衛隊は頑張ってくださいということになる。更に9条を改憲すると、文字通り集団的自衛権が条件なしにフルスペックで使用が可能になる。

米中紛争の可能性がどれほど高いのか、アメリカ元高官のジョセフ・ナイは、9月に「読売」で「米中間には経済で相互依存関係がある中で、戦争に至る可能性は低い。中国の貿易統計では、最大の輸出国は、アメリカ、2番目は日本、3番目はドイツ、5番目はインド。今中国政府が一番重視しているのは経済発展。多くの国民を統治していくためには、国民に豊かさを提供していかなければならない。中国がアメリカと戦争することは、自殺行為だ。合理的に考えればやらない」。

ロシアはEUに天然ガスを輸出している。必ずしも国は合理的思考で行動するわけではない。小さい違いはかなりあり、危険性がある。

日本はどういう道を歩むべきか。日米軍事同盟を強め、中国と軍事的に対抗していけば、軍拡競争を招き、緊張を高め、結果的には戦争のリスクを高めてしまう。本当に戦争になったとき、戦場になるのは日本だ。これだけは日本として避けなければならない。

最後に、講演ではASEANの平和の努力、1978年の日中平和友好条約「両締約国は、そのいずれも、アジア・太平洋地域においても又は他のいずれの地域においても覇権を求めるべきでなく、また、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国又は国の集団による試みにも反対することを表明する」(同じ文章が米中国交樹立の時の共同コミュニケにも入っている)の立場で、中国にもアメリカにも、覇権を求めないように求めていく外交を強調しました。

0 件のコメント:

コメントを投稿