都議選で問われているものは何か
都議選が迫ってきました。今回の都議選は、都政に大きな影響を与えるとともに、参議院選挙に直結し、自民党政治の転換も展望する重要な政治戦となっています。末延渥史さんに寄稿していただきました。
6月13日告示、同22日投開票で東京都議会議員(定数127名)選挙が実施されます。
今回の都議選は昨年実施された衆議院議員選挙での自公政権与党の過半数割れという激動の政治情勢のもとでたたかわれるとともに、連続してたたかわれる参議院議員選挙とあわせて、歴代自民党政権のもとですすめられてきた消費税大増税、社会保障の連続的改悪、徹底した雇用破壊、さらには自民党の底なしの金権腐敗政治、そして昨年来の異常な物価高騰など、政治の責任がおおきく問われる選挙となります。
また、都政においては小池都政9年目を迎えましたが、
果たしてこの9年の間に
①都民の暮らしは改善されたのか
②東京のまちは住みやすく、地球に優しい都市に変わったのか
③都政が「都民の声が届く」身近な自治体に生まれ変わったのか…が厳しく問われなければなりません。
まず、都民のくらしが改善されたのかです。
いま、東京の就業者人口の半数以上が年収「300万円以下」に置かれ、東京の非正規雇用者は233万人に達し全雇用者の32.6%を占めるに至っています。さらに都民の貧困率は20代で2割近く、高齢者では3割に達する状況で、私たちのくらしは苦しくなる一方で、国土交通省が発表した「豊かさ指標」(可処分所得ー基礎支出ー通勤機会費用)を見ると、東京都の順位は全国47都道府県の最下位で、東京の格差と貧困の拡大は止まりません。
ところが小池都政は石原都政が「福祉は贅沢だ」といって都民と革新都政が築き揚げた福祉施策に大ナタを振うとともに、教育、環境、住まい、中小企業対策などあらゆる分野の都民施策を根こそぎにした路線をひきつぐとともに、財界の要求に応えて、さらなる新自由主義、市場原理、自己責任の徹底と公的責任の放棄をおしすすめています。
こうしたもとで革新都政が全国に誇った高齢者・障害者福祉施策は後退させられ、高齢者施策では、石原都政以前には高齢者一人当たり13万5000円もあった老人福祉費=高齢者福祉費が8万8000円に半額され、障害者福祉手当は28年間も1円も引き上げられていません。
少子化対策では、選挙対策を意図したパフォーマンス予算が話題を呼んでいますが、小池都知事は最初の都知事選挙で「待機児ゼロの実現」を公約に掲げて当選しましたが、実際は、「ゼロ」どころか2024年度の保育所待機児(注1)は1万5112人にも及んでおり、公約違反のりは免れません。くわえて、小池都知事は公約が守られていないという都民的批判をうけて2022年から「待機児解消市町村支援事業」を開始しましたが、当初220億円あった予算は32億円まで削減され、開始時のわずか15%に後退させられているのです。(注1:旧基準=認可保育所を希望しながら入所できなかった児童)
医療では新型コロナ対策で命の砦といわれた都立・公社病院の地方独立行政法人化を強行。すでに医師・看護師の退職があいつぎ、病棟閉鎖や病床削減がすすんでいます。
教育では全国で小中全学年での35人数学級が大きく前進、東京都より財政力が格段に低い県でも30人以下学級などのとりくみが始まっているというのに、小池都知事は国基準(小学校全学年途中学校1年で35人学級)に止め、学校の教員の絶対的不足が恒常化し校長や副校長、さらには80歳を超えた退職教員まで教壇に立つという事態が生まれているのに何の対策もとろうとはしていないのです。
住まいの分野では住宅に困窮している低所得者や年金生活者、若年層などが切望している都営住宅の新規新築建設を拒み、26年間新規建設ゼロとされています。このため都営住宅の管理戸数はピーク時から1万6000戸も削減、公募をおこなわない空き室が2万戸もつくられるなど、異常な狭き門となっています。
異常な物価高騰問題でも小池都知事が提案した対策はほとんどが国の予算の枠内というケチケチ予算となっており、経営難に陥っている商店街対策予算も9年間連続据え置きです。また、第2回都議会定例会に提案された物価高騰対策の補正予算はわずか362億円で4ヶ月間の水道の基本料金の無料化の1つだけ。一番求められている物価引き下げのための対策や低所得者のため生活支援、困窮する中小企業への経営支援などは棚上げされたままです。
地球環境破壊の東京大改造
第2に地球に優しい都市に変わったのかです。
この点で小池都知事は石原都政以来の超高層ビル再開発による都市再生を引き継ぐとともに、あらたに「稼ぐ都市」といって東京大改造を「爆速」ですすめています。実際に、東京ではこの25年間に高さが100mを超える超高層ビルが400棟を超えて建てられ、その延べ床面積は千代田区、港区、中央区の行政面積を上まわるものになっています。このため東京の人口は同期間に220万人も増加。様々な分野で弊害と歪みをもたらすものとなっています。
その第一は、地球温暖化の加速です。実際に、この間に東京都で排出される二酸化炭素は増えつづけており、東京都の年間平均気温は、世界の気温が0・72度、日本の気温が1・19度の上昇であるのになんと3・2度、全国の3倍もの気温上昇を記録しているのです。このため真夏日が増え最低気温が25度を超える日が年間50日を超え、都市型ゲリラ豪雨や暴雨風など異常気象が急増。生活を脅かすものとなっています。
さらに小池都知事は、財界要求である「稼ぐ都市」づくりを邁進。ポストオリンピックの「東京大改造」として神宮外苑や都有地を提供する築地再開発、高さ390mの常盤橋地区をはじめとする東京駅周辺再開発、大井町駅周辺、赤羽駅北口再開発、外かく環状道路や特定整備路線などを「爆走」させているのです。
第3に「都民の声」が届く自治体に生まれ変わったのかです。小池都知事は2016年の選挙で「2020年オリンピックを見直す」「築地市場は守る」「全面的な情報開示を実施する」などの公約を掲げましたが、いずれも反故にして知らんぷりをしています。また、財界や一握りの富裕層の声・要求には熱心に耳を傾ける一方で、都民の切実な声と要求を冷たくあしらい、都立病院の独立行政法人化を強行してしまいました。
また、小池都知事はこの9年の間に本来、都民に奉仕することが使命である東京都の組織の変質、知事言いなりの組織への改造もすすめてきました。さらに新型コロナ対策での補正予算の専決処分(非常時など議会を開会できない場合などに認められる知事による予算の決定・執行)の乱発など庁内民主主義と議会制民主主義を否定する独断、専横の都政運営が大手を振ってまかり通っているのです。
問われるべき都議会
日本の地方自治体は首長と議員を住民の直接選挙で選ぶ二元代表制がとられています。その二元代表制は、権力が単一の機関に集中することによる権利の濫用を抑止し、権力の区別・分離と各権力相互間の抑制・均衡を図ることで、人民の権利や自由の確保を保障するための制度とされています。
また、議会は「住民自治の基盤であり、合議制の住民代表機関として、地域の民主的な合意形成を進め、民意を集約して団体意思を決定するという重要な役割を有している」とされ、また、「議会は、地方公共団体の意思を決定する機能及び執行機関を監視する機能を担うものとして、同じく住民から直接選挙された長(執行機関)と相互にけん制し合うことにより、地方自治の適正な運営を期する」(総務省)とされています。
さらに予算や条例、副知事人事などは議会の同意が得なければなりません。
この視点にたてば、現在の自公都ファに支配された都議会は小池知事を「監視」し、「地方自治の適正な運営」を果たす機関となっていないばかりか、これらの会派が小池都知事の付属機関か信任機関であるかのように振る舞い、小池都知事の暴政のパートナーとして、また、水先案内人としての役割を果たすことに汲々としていることは明らかであり、議員の適格性、資格が問われるものと言わざるを得ません。対照的に日本共産党都議団が都議会野党第1党の立場を生かして小池都政と対決し次々と都民要求を実現しているのは重要です。
今回の都議選は東京都議会を二元代表制としての議会を実現する大事な選挙です。
同時にこの間、都知事選挙、都議選、衆院選で着実に前進を遂げてきた市民と野党の共闘を発展させ、共闘の勢力が都議会の過半数を獲得し、小池都政を監視し、地方自治法に則った「適正な運営」による都民が主人公の議会を実現する選挙となります。
現在(5月30日)、都議選での市民と野党の共闘は3人以下の選挙区のうち26選挙区で立憲民主党、日本共産党、社会民主党、生活者ネット、緑の党による候補者の一本化が実現。4人区以上の選挙区でも共同の宣伝や学習会など共闘のとりくみがはじめられています。5月29日には「参院選・都議選 政治をかえよう!都政を都民の手にとりもどそう!呼びかけ人会議」が開催され、野党各党からメッセージもよせられました。
市民と野党の共闘で小池都政の転換を実現しましょう。