2018年2月28日水曜日

五十嵐仁法大名誉教授の記念講演要旨 2月4日  東京革新懇総会

政治の現状と安倍9条改憲阻止の展望
 24日の東京革新懇総会での五十嵐仁法政大学名誉教授の記念講演の要旨をご紹介します。

昨日の新聞を見るとアメリカが小型核開発を表明。トランプ大統領が、核を使うかもしれないリスクが現実のものになろうとしている。3つの問題がある。一つは、唯一の戦争被爆国で核廃絶の先頭に立つべき責務を放棄している。2つは、武力をちらつかせるアメリカと100パーセント同じ立場にあるとの表明自体が、憲法9条の武力による威嚇の禁止の侵害だ。3つは、北朝鮮に対しては核を廃棄しろと言いながら、日本はアメリカの核に頼っている。完全なダブルスタンダード。これでは全く説得力はなく朝鮮半島の危機は解決できない。
日本の政治は、末路と活路がせめぎ合う、危機突破ができるかが問われる一年になるのではないか。9条改憲について、国民の多くが反対だ。たたかいをつうじて安倍暴走政治をストップさせるだけではなく、安倍政権を打倒していく、そういうチャンスではないか。

安倍暴走政治の行きついた先-危機の拡大
危機が拡大している。「平和は守られるのか」「民主社会は維持できるのか」「地球環境は守られるのか」「景気は回復するのか」「生活は良くなるのか」「社会は維持できるのか」「未来は明るいのか」、残念ながらすべてノーだ。最後の「未来は明るいのか」ついて、安倍さんは、少子高齢化を取り上げて国難である言っている。日本人がいなくなる、危機そのもの。日本の人口は2010年がピークでその後減少。15歳から64歳の生産年齢人口は、1995年がピークで減少。働く人が減少し人手不足が生じている。どう解決するのか、子どもを生んで育てられる条件を整備するしかない。長時間労働を防ぐ、結婚しても家庭を維持できる収入を保障する。働き方改革は逆行。安倍政権には、日本社会の持続可能性を実現する能力がない。

危機を生み出した背景と要因
日本だけじゃないなく世界中に危機の状況が氾濫。戦後の世界は、公権力が政治、経済、社会、特に経済社会に介入する第一段階から、規制を緩和し「官から民へ」という、新自由主義的な改革の第二段階へ移ってきた。貧困と格差を拡大し、政治から取り残された人々を大量に生み出した。日本では政治改革、行政改革、構造改革取り組まれ、貧困と格差が増大、危機を生み出した。末路の継続か、活路を生み出すのか、世界も日本も問われている。
アメリカの大統領選では、末路を象徴するトランプが当選。これに対抗する形で民主党のサンダース、イギリスでも労働党のコーリンが善戦し一定の活路を示して、若者の支持を集めた。日本では活路をどう切り開くか問われる。

9条改憲をめぐる激突の情勢
安倍さんは去年の5月3日、9条の1項2項をそのままにして自衛隊を書き加えると突然言い出した。ところが、通常国会で、森友、加計学園疑惑を追及されて、内閣支持率がどんどん下がった。都議選では歴史的惨敗。森友、加計学園疑惑から逃亡を主たる目的として突然解散総選挙。小池さんや前原さんのある種のサポートを受けて、自民党は284議席、現状維持に成功。改憲勢力は、3分の2以上83%、これならばうまくいくかもしれないと陣営を巻き直して、アクセルを踏んだ。
9条改憲は、戦争をする国に向けての総仕上げで提起されてきている。戦争できる国にするためには、3つが必要だ。政治制度を変える。特定秘密保護法、戦争法、共謀法、国家安全保障会議と、戦争を遂行・指導する仕組みを着々と作っている。
2つは、戦争を遂行主体の自衛隊、防衛費が5年連続増額、専守防衛の枠を越える質的な変化。巡航ミサイル、空中空油機、オスプレイ、いずもの空母への改修等、戦える軍隊に変貌させようとしている。
3つは、第一次安倍内閣で教育基本法を変え、第二次安倍内閣では、道徳の教科化という教育を大きく変えてきている。戦争をするための人材育成。それを社会が支えるような状況を生み出そうとしている。
マスコミに対する懐柔、管理統制、マスコミの論調も変わってきている。北朝鮮は叩くべきであるとか、平然というような人が生まれてきている。 

改憲の危険性
1つは、法律に後から書き加えられた内容は、矛盾した場合、後からのものが優先する。自衛隊が憲法に位置づけられれば、1項2項は空文化する。矛盾が拡大すれば、2項を削除する二段階目の改憲をする。自民党憲法推進本部長代理の船田さんは、安倍さんは、この二段階を狙っていると口をすべらせている。
2つは、安全保障法制により集団的自衛権行使が容認され、アメリカの戦争で共同作戦を遂行できる機能を持った自衛隊が書き加えられることだ。
3つは、朝鮮半島の危機のもとで、自衛隊を憲法で位置付けることは、日本はアメリカと一緒に攻めてくるつもりだと北朝鮮が誤解するかもしれない。戦争になれば、ミサイルは7分か8分で日本に着弾。1発でも原発に当たったらおしまいだ。誤ったメッセージを送ってはならない。

9条の国民に働いていた効能
1つは「戦争加担へのバリケード」。ベトナム戦争のときに、アメリカは、憲法の制約をしっており、自衛隊を送れと要求しなかった。韓国の4400人等、ベトナム戦争で多くの国が軍隊を送って戦死者を出している。
2つは、軍事費の量的限界をGNP1%、専守防衛を自らに課してきた。9条のお陰だ。財政を軍事費に浪費することなく、高度経済成長を実現できた。
3つは、「国際テロ」の問題。日本は平和国家だと、中東や世界の人々に受け取られていた。これがイラク戦争から変わった。高遠菜穂子さん達3人が、武装勢力に捕まり、小泉政権が要求を拒否したが3人は帰って来た。直後に捕まった香田証生さんは殺され、それから襲撃された日本人は殺されている。それでも、まだ日本国民は9条に守られている。アメリカは何回もテロが起きている。オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、ヨーロッパ諸国のほとんどでテロ事件が起きている。日本ではない。

9条改憲をめぐる激突の開始
改憲をめぐり大きく二つ分かれる。憲法96条に基づいて条文を改正するのは許される。ぶっ壊す壊憲、これは許されない。国民主権、基本的人権、平和主義という理念原則を壊すのは、新しい憲法を作るのと同じであり許されない。
「天皇元首」は、国民主権に抵触し許されない。「緊急事態による主権制限」は基本的人権を疎外するから駄目。「自衛隊の尊重」は平和主義に反するから駄目。
日本の憲法は条文が短く理念原則が述べられている。現実は変わっても対応性があり、中身が先進的で民主的だ。憲法は先人の英知がつまっている。

安倍9条改憲をめぐるたたかいの展望と課題
安倍改憲を孤立させなければならない。安倍改憲に反対54%、9条に自衛隊明記反対52%、自衛隊明記理解進まずと毎日新聞に出ている。
自民党でもまだ一致していない。原案3月までに出来るか分からない。一番大きな障害になるかもしれないのは公明党だ。総選挙で敗北し、安倍さんべったりであったと創価学会で批判が起きている。野党は、希望の党から共産党まで9条反対で足並みが揃う可能性が出てきた。原発問題でも野党の足並みが揃うかもしれない。働き方改革反対でも野党が足並みをそろえていく。こういう共同が進むもとで3000万署名にも取り組んでいただきたい。

むすび
9月の総裁選で安倍さんを引きずり降ろすために、それまでの運動、通常国会の内外で運動を高める必要がある。革新懇が、共同の橋を架ける、斬新な企画を提起し、ハブの機能を発揮し、地域デビューの場となる、これが革新懇の役割ではないか。
最後にシニアの責任。70年かけてつくってきた自由で、民主的な平和な社会、これを安倍がごときに壊されてなるものか。安倍首相よりも先には倒れない。

だんだんきなくさい臭いが漂いつつある世の中、まともな世の中に変えて次の世代に手渡せる、そういう政治や社会をつってから、安んじてお迎えを待つ、これが高齢者の姿ではないか。一緒に頑張りましょう。

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