2026年3月2日月曜日

 自治体の使命を投げだし暴走する小池都政

政研究家 末延渥史 

 小池都政は「稼ぐ東京」を掲げ都内の再開発を急速に進め、環境の悪化、都民生活の破壊が進み、庶民が住めない街になってきています。小池都政の現状について寄稿して頂きました。

 2月23日、東京では「春一番」が吹き、東京都内で観測史上はじめて、2月に「夏日」を迎え、全国でも今年最多の16地点で「夏日」が観測されています。

 このような異常気象は日本列島全体で常態化しており、スキー場のある内陸・山間部で積雪が少なく、その一方で、日本海岸沿いの平野部が大豪雪に見舞われ、物流トラックの立ち往生が発生。また、「過去に経験をしたことがない」という風水害が相次いで発生。2018年の西日本豪雨、2019年の台風19号災害、昨年9月の東京を襲った記録的豪雨など甚大な被害がもたらされています。

 これらの現象は「地球温暖化」によるものですが、この100年の間の世界の平均年間気温が0.7度、日本では1.2度。さらに東京では全国の3倍にあたる3.2度上昇しており、2023年には気温が30度を超える真夏日が過去最高の年間90日に達し、熱中症搬送数(5月~9月)は8118人、熱中症死亡者(同・23区)は263人にも達しているのです。

 また、2020東京オリンピックでは17日の大会期間中、「日常生活における熱中症予防指針」による危険(「高齢者においては安静状態でも(熱中症)が発生する危険性が高い」)が9日、厳重警戒が6日、警戒が2日という安全な日が一日もない危険と背中合わせの状態が発生していました。

 SDGs、成長管理への転換 

 このような地球温暖化とそれに起因する異常気象は何によってもたらされているのか。その元凶は、産業革命を契機とする工業化社会、近代都市のもとで使用される化石燃料から排出される二酸化炭素(CO2)を主因とする温暖化物質の急増にあります。

 これに対して国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)が日本が議長国となった1994年の京都会議で温暖化物質の削減を掲げた「京都議定書」を策定。さらに二酸化炭素を含む温室効果ガスの「排出量」と「吸収量」を均衡させるカーボンニュートラルを提起。2015年に国連が持続可能な社会づくり=SDGsを策定するなどの温暖化阻止の取り組みが世界的規模ですすめられています。

 こうしたもとで東京都と並び世界都市とされるロンドンやパリでは超高層ビル開発を規制。また、ロンドン市は都市の成長を管理する「ロンドンプラン」を策定、ロンドンオリンピックにあたって高層ビルを低層の住宅に建て替えるなど持続可能な社会づくり、都市の成長管理政策を展開しています。

 一方、日本では歴代自民党政権が「経済との調和」を第1原則として京都議定書の実現に背を向けつづけ、二酸化炭素の排出削減の方策の第1に原発を掲げて原発再稼働に固執しつづけています。

 また、東京都では石原都政から小池都政に継承されてきた都市再生・東京大改造による超高層ビル再開発が爆走で加速させられ、2000年からの四半世紀の間に高さ100mを超える超高層ビルが441棟も建てられ、その延床面積は千代田区・港区・中央区の行政面積を超える42・3haにも達し、膨大な二酸化炭素を排出。深刻な温暖化とヒートアイランド現象をもたらしているのです。

 東京の二酸化炭素排出量を見ると、大規模なオフィスビルや超高層マンションなどの業務・家庭部門が東京の二酸化炭素排出量を増加させ地球的規模での温暖化を加速させているのです。

 温暖化防止は化石燃料から再生エネルギーへの転換を図ることは当然ですが、東京の場合、なによりも・東京大改造路線を転換し、都市の成長をコントロールする政策への転換が不可欠です。

 ところが小池都知事は、地球温暖化対策を言い訳程度の対処療法的なものに止め、根本対策である二酸化炭素発生源の対策については何らの方策をとらないばかりか、官邸主導・トップダウンの国家戦略特区のなどの東京大改造=「稼ぐ都市」を推進。かつて都民の台所と呼ばれた筑地市場を廃止しそこに統合型リゾート施設(IR)の要件を満たした超高層ビルによる再開発や新宿駅・品川駅周辺、日比谷公園を取りこんだ再開発、神宮外苑地区再開発などの大規模再開発、さらには北区赤羽地区や私鉄沿線での同時多発的な再開発、全国的に知られた板橋区ハッピーロード大山商店街を分断し超高層ビルを建設する都市計画道路特定整備路線、2兆7625億円もの事業費の外かく環状道路建設などを加速させているのです。

  困窮を重ねる都民生活 

 こうした大企業・多国籍企業と一握りの富裕層のための「稼ぐ都市」・東京大改造のもとで環境破壊だけでなく、貧困の増大と格差の拡大、都民生活破壊は止まるところを知りません。こうしたもとで小池都知事は現在、開催されている都議会2026年第1回定例会に一般会計が5年連続過去最高額の9兆6530億円、特別会計を加えた全会計ではスイスの国家予算を上まわる18兆6849億円に達する巨額の2026年度予算案を提案しました。

 そして小池都知事はこの予算案につい、記者会見や都議会の施政方針演説でも、物価高騰に苦しむ都民に寄りそうことも、貧困という言葉も格差という言葉も発することはありませんでした。その一方で小池都知事は「世界から選ばれる都市へと進化を続けて国際都市・東京のプレゼンス」を「一層高めていく」という、「稼ぐ都市」まっしぐらの決意を表明したのです。

 実際に予算案を見ると、都民世論を反映した若干の予算が見られるものの、都民の家計を直接潤すための物価高騰対策予算、国民健康保険や介護負担の軽減のための予算は見当たらず、切実な都民要求である都営住宅の新規建設、29年間も据え置かれている心身障害者やひとり親家庭への福祉手当の増額、9年間据え置かれている商店街振興予算の拡充、小学校の30人学級への移行と中学全学年での35人学級などは冷たく拒絶され、昨年度、1万3162人もの待機児(国発表)が残された保育所待機児童解消区市町村支援事業はスタート時には220億円あったものが来年度は1割の23億円にまで後退させられています。

 その一方で、東京大改造には惜しげもなく莫大な予算がつぎ込まれ、築地市場跡地や新宿駅前、品川駅周辺などの再開発には1500億円(2027年度以降も含む)、住民や商店街の反対で事業の進捗が見られない特定整備路線に建設局だけで370億円もの予算を計上。さらに、巨大クルーズ船のための総事業費650億円の臨海青海地区のふ頭延長工事にもしっかりと予算をつけ、無駄遣いの都庁プロジェクションマッピングに15億円と大盤振る舞いです。地方自治法が定める「住民福祉の増進」という使命を負う自治体の姿とはほど遠い都政です。

2026年1月30日金曜日

「だまし討ち解散による『クーデター』を許すな」五十嵐仁

 だまし討ち解散による「クーデター」を許すな

法政大学名誉教授 五十嵐 仁

 高市首相による突然の衆議院解散のもとで、東京革新懇代表世話人の五十嵐仁さんに緊急に寄稿して頂きました。 

 大義も何もあったものではありません。高市早苗首相はやらないと言っていたではありませんか。解散など考えている「暇」はないと。

 本人はだますつもりなどなかったのかもしれません。しかし、政治には結果責任が伴います。この結果に対して、高市首相は責任を取ることができるのでしょうか。それが無理だというのであれば、私たちの一票で責任を取らせるしかありません。首相官邸から追い出すことによって。

 自民党による高市総裁の選出、その後の自公連立から自維連立への組み換え、政権合意による政策の大転換、そして突然の衆院解散という一連の過程は、自民党内極右勢力と極右政党である維新の会による「権力の簒奪」であり、静かなる「クーデター」でした。

これによって自民党は変質し、貧困と戦争準備という「貧国強兵」路線に転換してきました。国民に気づかれないうちに、この「クーデター」を「追認」させ、「国論を二分するような大胆な政策、改革」に向けての「白紙委任状」を手に入れようとするところに、今回の衆院解散の本当の狙いがあります。日本の命運を左右する選択にきっぱりと「ノー」を突き付けることで、このようなよこしまな狙いを打ち砕かなければなりません。 

自己都合による大義なき解散 

 「自分のことしか考えていないんでしょうね、高市さんは」と思いました。突然の解散を知ったときです。このような時期に、このように慌てて、こんなやり方で、どうして解散するのでしょうか。

 連立の組み換えへの判断を問うのであれば、組み換え直後の臨時国会での解散がスジでしょう。なぜ、3カ月も経った通常国会冒頭での解散なのでしょうか。予算の年度内成立は遅れ、雪国での選挙は困難を極め、18歳の受験生は試験の準備に追われ、地方自治体も新年度に向けての業務に忙殺されているというのに。このような時期にどうして選挙なのか、納得できる国民はいないでしょう。

 なぜ、これほど急いで実施するのかも理解できません。選挙は2月8日投票となり、解散から16日しかありません。戦後最短の日程です。2月15日投票でも問題はなかったのに、どうしてこんなに急いで実施するのでしょうか。候補者や自治体などの関係者は大いに迷惑しています。できるだけ支障のない日程を選んで、関係者の負担を減らそうという配慮はなかったのでしょうか。

 なぜ、こんなやり方をとったのかというのも大きな疑問です。解散を検討しているという記事が出たのは『読売新聞』でした。自民党の鈴木俊一幹事長にも相談しないでリークし、世論の反応を見たのでしょう。次第に解散風は強まりましたが、1月19日の記者会見まで正式な発表はありませんでした。10日間もの間、きちんとした説明なしに既成事実化がすすめられたのです。

 解散は国民に選ばれた代表の首を切るということですから、乱用は許されません。まして、前回の総選挙から1年3カ月しか経っていないのです。7条解散は「内閣の助言と承認」によって天皇が実施するもので、主体は「内閣」です。「首相の専権事項」というのは悪しき慣例にすぎず、憲法違反の無法行為です。

 本来であればやるべきではない、できないはずの解散を、高市首相は強行しました。内閣支持率の高いうちなら勝てるという打算で野党などの準備が整わないうちに奇襲攻撃をかけたのです。世界平和統一家庭連合(統一協会)との癒着などでの追及を避けたいという魂胆もあったでしょう。「台湾有事」発言への中国による対抗措置や円安・長期国債の金利上昇などで経済への悪影響が出る前に勝負をかけようという計算も働いたにちがいありません。

 しかし、どれも高市首相個人の思惑に基づく自分勝手な理由です。自己都合を最優先したもので、「党利党略」以前の「個利個略」、私利私欲に基づく権力の乱用ではありませんか。このような大儀なき自分勝手なだまし討ち解散を認めて良いのでしょうか。やる必要のない解散の強行自体が、総選挙の大きな争点として問われることになりました。 

政治腐敗・統一協会との癒着への無反省 

一連のプロセスを経て進行してきた「クーデター」の背景には、自民党政治の深刻な行き詰まりがあります。これまでのやり方では支配を維持することができず、新たに極右勢力に権力をゆだねることで、この行き詰まりを打開しようとしているのです。

国会での勢力は衆院で過半数ぎりぎり、参院では過半数を下回っていますから、高市首相にはやりたいことができないとの不満があったでしょう。このような行き詰まりに追い込まれた最大の要因は裏金事件をはじめとした「政治とカネ」の問題や統一協会との癒着などの政治腐敗にありました。しかし、高市首相はこれらの不祥事を「悪いこと」とは考えておらず、真相の解明や再発防止に取り組もうとしていません。自身にも政治資金についての疑惑があります。

裏金問題については、旧安倍派5人衆の1人で統一協会との癒着でも名前が挙がっていた萩生田光一元政調会長を幹事長代行に就けるなど、旧安倍派議員の復権に手を貸してきました。今回は裏金議員のうち43人の公認を決め、重複立候補も認めました。非公認で落選し、「みそぎ」が済んでいない下村博文元文科相まで公認しています。企業・団体献金の廃止はもとより、その規制強化についても公明党案を拒んで連立を解消されるなど後ろ向きのままです。

統一協会との癒着でも、新たな事実が明らかになりました。昨年末に韓国の新聞で報道された「TM(トウルーマザー)特別報告」という内部文書に、2021年の総選挙で自民党候補290人を応援したとの記述があったからです。高市首相自身の名前も32回登場しています。高市首相はこれらの疑惑についても口を継ぐんだままで、きちんと説明していません。 

 国民の生活苦は置き去りに 

 高市首相は国民の苦難について全く無頓着だという点でも抜きんでています。そもそも大変な生活苦に見舞われている最中に必要性が分からない解散を強行して予算の年度内成立を不可能にし、「政治空白」を生み出して物価高対策を先延ばししてしまいました。

 サナエノミクスと称して「責任ある積極財政」を打ち出している経済政策も、さらなる物価高を誘発して生活苦を増大する危険性を高めています。安倍元首相によるデフレ対策政策を継承していますが、物価高の下で円安によって輸入物価を上振れさせる恐れのある政策に合理性があるのでしょうか。

 物価高対策として各党が打ち出しているのが消費税の減税策です。高市首相も食料品の消費税を2年間ゼロにする政策を公約としました。しかし、「実現に向けた検討を加速する」と書かれているだけで、実施時期や財源については選挙後の「国民会議」に丸投げしています。生活苦を軽減することより、実施するポーズをとることで「争点つぶし」を狙っているのではないでしょうか。

 このような選挙目当てのバラマキ政策について常に問題になるのが財源です。高市首相が当てにしているのは国債の発行で、「責任なき放漫財政」による財政規律の放棄です。すでに、プライマリーバランス(PB)の単年度主義という枠を外しました。さらなる国債残高の増大によって財政への信頼が失われる恐れが高まるでしょう。

 高市政権によって、大企業への公的資金の投入という国家資本主義的政策、平和経済から軍事経済への転換なども進められようとしています。半導体企業のラピダスへの巨額の投資がなされていますが、昨年11月に設立された「日本成長戦略会議」でも半導体をはじめ、AIや造船業に加えて軍需産業など17分野への投資計画が打ち出されました。

 これに加えて、軍需産業の強化を目指す「防衛産業戦略」を、26年度中に策定する方向での調整も進められています。有事における弾薬の安定供給のために軍需企業を国有化して民間に委託しようというわけです。航空機や潜水艦など国内の軍需産業の基盤を強化するために「国営工廠」の設立がめざされ、軍需を基軸にした成長戦略によって、アメリカのような軍事経済への転換が始まっています。 

戦争準備に向けての暴走

 総選挙で問われるべきもう一つの大きな問題は戦争準備に向けての暴走です。これまでの自民党首相に比べて、高市首相による憲法の制約に対する軽視と軍事への傾斜は際立っています。

 これまでの自民党がかろうじて維持してきた「解釈改憲」路線はあっさりと放棄されてしまいました。高市首相は憲法の枠を踏み越え、安保3文書の改定によって「実質改憲」路線をさらに強めようとしています。

防衛費のGDP比2%への増額は今年度中(2026年3月まで)に達成され、さらに、3.5%から5%への増額がめざされることになるでしょう。「決して右傾化などではなく、普通の国になるだけだ」と高市首相は反論していますが、9条の制約によって平和主義を尊重する「特別の国」から、その枠をはみ出した「普通の国」への質的な転換です。これこそ「右傾化」そのものではありませんか。

9条の書き換えなき公然たる蹂躙であり、ひそやかな「クーデター」の最たるものです。集団的自衛権の一部行使容認によって専守防衛は放棄され、存立危機事態の認定によって先制攻撃の可能性が示唆されています。高市首相による「台湾有事」発言は、その危険性を暴露しました。

米軍とともに他国を攻撃するために、ミサイルや小型空母などの敵基地攻撃可能な長距離兵器の生産・取得・輸出に乗り出し、軍需産業を国有にして工廠の復活を図り、殺傷兵器輸出のために5類型を撤廃しようとしています。

さらに、原子力潜水艦保有の推進、「核抑止力」の強化のための非核3原則緩和による「持ち込み」、政府高官による核兵器の保有発言まで飛び出しました、まさに「地獄のフタが開いた」ような、軍事突出のオンパレードではありませんか。

 このようなハード面での戦争準備と歩調を合わせて、ソフト面での戦争準備も加速しています。これまでも特定秘密保護法や共謀罪法、経済安全保障推進法、能動的サイバー防御法などが制定されてきましたが、その総仕上げとして、「対外情報庁」(日本版CIA)の新設や「スパイ防止法」の制定が目論まれています。いずれも戦争に向けての世論の動員や反戦運動の取り締まり、思想統制などを目的としたものです。

 さらに、憲法9条2項の削除や緊急事態条項の新設に向けての「条文起草協議会」設置、国旗への棄損を罰する国章損壊罪の制定、国籍や土地取得への規制など外国人対応の強化、旧姓使用の法制化、男系天皇を維持するための皇室典範の改正、自衛隊の階級呼称の旧軍スタイルへの復帰などの動きもあります。いずれも、これまでなら考えられなかったような時代逆行であり、極右政策の一環にほかなりません。 

戦後憲法体制を覆す挑戦に審判を

  「内閣総理大臣としての進退をかける」、「高市早苗が内閣総理大臣でよいのかどうか、今、主権者たる国民の皆様に決めていただく」。

 こう述べて、高市首相は国民に対する選択を迫りました。「高市人気」を当てにしての挑戦状です。「重要政策の大転換」に対して、国民はどう答えるかが問われています。「イエス」か、それとも「ノー」か。

 高市首相の意図しているのは戦後憲法体制全体の転覆であり、クーデターそのものです。中曽根元首相がめざしていた「戦後政治の総決算」が、安倍元首相の「戦後レジームからの脱却」を経由して、高市首相による「新しい国の形」作りで完結しようとしています。

穏健保守層と決別し、憲法の制約をそれなりに意識してきた自民党から憲法を真正面から踏みにじろうとする自民党への変貌にほかなりません。「戦後憲法体制と民主主義の墓堀人」――それが高市首相の本質なのです。

戦後憲法体制を覆そうとする挑戦にきっぱりと審判を下しましょう。その「正体」を見抜き、固い決意を込めて高市首相に叩きつけようじゃありませんか、「白紙委任状」ではなく「絶縁状」を。                      (1月27日脱稿)

 

2025年12月16日火曜日

スパイ防止法

 「スパイ防止法」のもたらすもの

-監視と分断による臨戦態勢の社会-

 





自由法曹団常任幹事 田中 隆さん

 1130日開催の東京革新懇緊急講演会での田中隆弁護士の講演要旨を紹介します。

 

 



前史 2つの秘密法 

「スパイ防止法(国秘密法)の策動と

 自民党が準備を進めた1985年の「スパイ防止法」・国家秘密法の策動は、日米共同作戦体制の始動と中曽根康弘内閣の戦後政治の総決算が背景。国際勝共連合が中心の「スパイ防止法制定促進国民会議」によって、推進決議が27県2千数百の自治体で採択。

 徹底した処罰のための法律。戦前の軍規保護法と同じ秘密の指定を要さない実質秘で、「非公表の軍事・外交の情報はすべて秘密」というに等しい。外国への通報(知り得る状態にすることを含む)は最高刑死刑という、おそるべき重罰だった。

 85年6月に自民党の議員立法として提出され、中曽根首相は「日本はスパイ天国」と答弁した。野党の抵抗や国民的批判で12月に廃案。

 全野党が反対し、自民党の 12名の議員が反対の意見書を提出。日弁連や弁護士会、メディアもこぞって反対。国家機密法阻止各界連絡会議や地方連絡会議などがつくられ大きな反対運動を展開し、法案阻止の原動力となった。 

秘密保護法の強行と対抗

 2度目の秘密保護法は、アフガンやイラクに派兵していた日米共同作戦体制の中から 生み出された。2007年に調印された軍事情報包括保護協定で、秘密保護措置や取り扱い資格の明確化が要求された。第一次安倍晋三内閣だったが、安倍首相は参院選で惨敗し政権を投げ出した。

 09年に成立した民主党政権のもとで中国漁船と巡視船の衝突事件が発生し、衝突の映像がユーチューブに流れたことが問題化。有識者会議が設置され、報告書が秘密保護法の骨格になった。

 1212月、第二次安倍政権が成立して強行に突進した。

 国家秘密法案と違い、管理法制の性格が強い。行政機関が指定した秘密を保護する指定秘の考え方をとっているが、秘密の範囲は、テロや特定有害活動(スパイ活動)に拡大。国民にはなにが秘密にされたか分からない。

 公務員や企業の労働者に適性評価を行い、反対派をあぶり出して排除できる構造。秘密の漏えいなどを処罰する弾圧立法の性格も持っている。

 1310月に政府が提出。維新とみんなは修正で合意。政権時代に検討した民主に不安もあったが、反対で頑張った。反対の運動・世論が日を追うごとに高まり、短時間の審議で逃げるように採択された。

 日弁連と弁護士会がこぞって反対し、多くのメディアが反対の論陣を張り、市民運動 も大きく広がった。この時の運動の広がりが、翌14年から始まった戦争法制反対運動につながり、今日に至る市民と野党の共闘に発展していく。

 秘密保護法の罰則が適用された例はないが、メディアの取材などには大きな制約が生 まれていると言われる。

 その後、22年に安保三文書で敵基地攻撃能力導入などが強行された。24年には秘密保護法と同じ構造を持つ経済秘密保護法が制定。今年5月に能動的サイバー法が制定、ネット空間での先制攻撃の危険をはらんでいる。国民民主のみでなく立憲民主もこれらの法制には賛成した。

  動 パイ防ンテリェンス)強化 

「インテリジェンス」の絶叫

 「インテリジェンス機能強化」の絶叫が起こっている。内外に仕掛ける諜報すなわちスパイ活動と外国からのスパイ活動に対する防諜を合わせたものがインテリジェンス。

 自民と維新の1020日の連立政権合意に、インテリジェンス機能強化の組織整備と法制定が盛り込まれた。

 自民党は5月22日の提言で、諸外国と同水準のスパイ防止法の検討など提案。まとめた調査会の会長が高市早苗現首相だった。維新は、10月1日に中間論点整理を発表して公表した。多くは連立政権合意に盛り込まれている。

 国民民主は1026日に法案を提出し、3年を目途に法制上の措置をするとしている。参政は1025日に法案を提出。防諜に絞るが、市民を規制する内容も含まれる。 

考えられる法案と事態 区分して検討する。

1点目は処罰の拡大・強化。参政案は秘密保護法「改正」で外国への漏えいを特に重く処罰する。国家秘密法案のように指定なしに処罰できる実質秘を加えることも考えられる。

 2点目が、外国勢力の活動透明化を理由にした法整備。

 外国代理人登録法は、外国の利益を代表して活動する者に登録と活動や資金の報告を義務付け公開、規定違反は犯罪とする。スパイ活動は身分を隠してやるから、「それらしい活動」として、NGO、国際交流団体、友好協会などの活動に規制が及びかねない。

 ロビー活動を行う個人・団体に義務を課すロビー活動公開法も、国民が行う国会や 政府、行政機関に対する要請活動まで規制が及びかねない。

 アメリカなどに類似の制度がある。憲法との関係での批判的検証が必要だ。

 3点目は日本版CIAというべき中央情報機関の創設。維新は一番力点を置き、国民民主や参政も機構整備を言っている。

 維新は、諜報、防諜、非公然活動の3つの機能を持つ中央情報機関を創設し、人の観察や接触(ヒューミント)で情報を得ることを基本に据える。その組織と活動は、米のCIAに倣うとしている。

 「もぐりこみ」「たらしこみ」や「おとり」で不法に情報を得ていくことが公然と語られており、矛先は市民にも向けられる。そのために、専門の情報要員養成機関の新設、諜報要員すなわちスパイを保護するための「関係者安全保護法」制定も提唱されている。

 4点目。参政党の神谷宗幣代表は、「極左の考え方を持った人々を洗い出すのがスパ イ防止法」と演説した。あり得ない話ではない。

 適性評価を拡大して、政府に反対する者を政府・企業等から排除していくことは不可能ではない。「スパイ防止」が打ち出されれば、社会の中でスパイの監視、摘発が横行し、SNSなどで「〇〇はスパイ」が拡散されかねない。

 可能性のあるものをスケッチしてみた。なにが起こるか考えていただきたい。 

 本質・対抗 どう考え、どう向き合うか 

インテリジェンス強化・「スパイ防止法」が生み出すもの

 政府は、山本太郎議員の8 月1日付の質問主意書パイ天国」とは考えていないと答弁。これが政府の認識で、「スパイ防止法」を必要とする立法事実は存在しない。狙いが「スパイ防止」でないことは明らかだ。

 インテリジェンス強化の名のもとに諜報活動を拡大し、監視強化と国民の分断、「ス パイ」の烙印での反対勢力の排除を行うのが本質。40年前とは違い、SNSなどでの情報拡散にまで規制が広がるだろう。そんな事態が現実化すれば、基本的人権の知る権利、表現の自由が、国家的利益を口実に圧殺され民主主義が形骸化することになる。

 高市政権のもとで、安保三 文書や防衛装備移転三原則、非核三原則の見直しが進められ、軍事的緊張が高まり、軍需産業が膨張しようとしている。そのもとでのインテリジェンス強化は市民に向けられ、反対者、非協力者をスパイとしてあぶり出す臨戦態勢の社会に組み替えていくだろう。

 

監視・分断の社会を許さないために

 野党の検討が先行していることが、今回の策動の特徴。中国、北朝鮮などの現状や来日外国人の拡大に対する不安の拡大、市民の排外的感覚の広がりが背景に。これまでの策動に比べて底は浅いが、軽視はできない。

 国家のありようや外交関係に関わるから、政府での検討が不可欠で、アメリカなどとの調整も必要になる。全面検討には時間が必要で、検討・協議を続けて取りまとめていくだろう。その議論を検討し批判や反対を加えていく必要がある。政府サイドの「国家情報局創設の検討」など、「できるところからやる動き」も無視できない。

 「スパイ防止ならいい」「インテリジェンスってなに」となりかねない。どうすればいいか。問題を知らせ批判の声を広げる。分かりやすく訴える工夫し、市民をスパイにしたてる監視分断法であり、臨戦体制を作る制度だとの本質を広げる。

 もう一つが議員への働きかけ。法案完成前に、批判や反対を突きつけることが重要。今回の検討はたかだか1年で、維新や国民民主の議員でも本当に分かっているのか疑問。重視してほしいのは立憲民主議員。経済秘密保護法強化も組み込むから、揺さぶられる可能性がある。 

40年のときを経て 

  国家秘密法案提出の85年から40年、軍拡・戦争の道、世界を大資本の市場にするグローバリゼーションと新自由主義の道に反対してたたかい続けた40年だった。

 いま、その道の誤りは白日の下にさらけ出されている。

 自衛隊を派遣したアフガンやイラクの戦争が平和に寄与したことはなく、軍拡を続けた結果、今も各地で戦火が広がり続けている。大資本や富裕者が極限まで肥え太り、一般の国民・市民の生活や地方・地域が破壊され、格差と貧困が耐え難いところまで広がった。政治への批判が高まり、排外的感覚が生まれているのもその結果に他ならない。

 弱者が奪い合い排斥し合うに等しい排外主義が問題を解決することはなく、「スパイ防止法」の策動は、問題をねじ曲げて一層深刻にする。

 平和と共生を実現して、格差と貧困を克服することこそ大道であり、「スパイ防止法」、 インテリジェンス強化を許さないたたかいも、その大道のなかにある。

 その大道が未来を開くことを確信して、向き合っていきたい。

 

近づく覇権主義国家アメリカの終焉 その②

アメリカの時代の終わりを告げる経済の状況





元外務省国債情報局
 孫崎 享さん

 

 920日の孫崎享さんの講演の要旨の後半部分をご紹介します。 




日本の戦後の出発点を改めて問う

1970年代、 80年代、日本の政治家も、そして外務省も考えていた。日本は戦争で、中国、朝鮮半島でこれらの国民を殺害し、国土を荒廃させた。この歴史的な事実を背景に、日本は戦後、賠償をどうしなければならなかったのか。日本の戦後の一番の出発点であったサンフランシスコ講和条約は、アジア諸国の被害が重大だから、日本は賠償を払わなくてはならない。だけど、今の日本の経済力ではすぐには払えないという事実も我々は認識する。だから今すぐに日本は賠償しなくてもいい。これが日本が国際社会に入る条件だった。

それに対して、周恩来は中国は賠償を求めないと言った。非常に重要なことだが、周恩来はどういう論理を組み立てたのか。中国国民は殺され、中国国土は破壊された。中国国民は怒ってる。賠償を取ればいいじゃないか。国連もサンフランシスコ講和条約で賠償取っていいと言っている。その時の説明は、中国国民と同じく日本国民も日本の軍国主義の被害者であった。だから、私たちは手を結ぶのは新たな日本国民である。だから、彼らに賠償を求めないと語っている。

靖国神社に A級戦犯の人たちが祭られた。そして日本の政治家がそこに行く。それは、日本国民と軍国主義者は別であるとの解釈を日本が自ら壊すことだ。その重みをどれくらいの政治家が知っているのか。靖国神社に行ってる人は何にも知らない。それくらい日本の言論界は壊れている。

賠償を払わなくていいと言った時に、中国が唯一日本にお願いしたのが、台湾は中国の一部である。この主張を日本側が理解し、実行することだった。

そして同じ約束は、ニクソンとキッシンジャーが中国と同じく交わしている。国連で、誰が中国を代表するかということになった時に、昔は台湾だったが、国連はそれは中国が代表するということで、今日まで来た。なぜ台湾有事が日本存続の危機なのか。

 日中共同声明 1972

前略-日本側は、過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについて責任を痛感し、深く反省する。―-略―

一 日本国と中華人民共和国との間のこれまでの不正常な状態は、この共同声明が発出された日に終了する。

二 日本政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。

三 中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。

五 中華人民共和国政府は、日中両国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する。

六 ―略―両政府は、右の諸原則及び国際連合憲章の原則に基づき、日本国及び中国が、相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決し、武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する。-略-

尖閣諸島問題を考える  

もう一つ、尖閣諸島問題がある。1945 815日、日本はポツダム宣言を受入れ戦争をやめた。降伏文書に署名したときから、日本の領土は本州、四国、九州、北海道その他の島々は連合国が決めると書いてある。尖閣諸島は沖縄だ。沖縄はどうなっているか。沖縄は国連の信託統治にして、アメリカが管轄すると書いてある。返す時にアメリカは領有権問題については、日本の立場も台湾の立場も中国の立場も取らない。どれが正しいということは、我々は言わない。だけど管轄は日本にするといった。だから、互い俺のものということを排除していない。

じゃあ、日本が管轄しているところに中国の船が入ってきたらどうするのか。日中漁業協定があり、尖閣諸島の海域に中国の漁船が入ったら、日本は漁業をやめ域外に出ていきなさいと言う。深刻な問題であれば、日中間で外交的に協議する。だから、国際法的には、日本が捕まえに行くのは少なくとも日中漁業協定違反だ。だけど、約束の当事者である私たちが、それを忘れていいという理由にはならない。だけど、ほとんど忘れている。映像を思い起こしてほしい。野田政権の時に、捕まえに行った。捕まえて日本に連行した。沖縄の裁判所で協議したが返した。日本の国民は怒りだした。捕まえちゃいけなかった。その時の首相は菅さんだった。

佐藤正久参議院議員(当時・元自衛官)が質問主意書を書く。そして、尖閣諸島に中国の船が入ってきたら、日本の国内法で対処する。これでよろしいかと聞いた。

その時に日本の国内法で対処すると回答。日本の国内法で対処するということは、日本の領域に来たら海上保安庁が捕まえるということだ。

 

購買力平価に見る大転換の世界

世界情勢を見て、もはやアメリカの時代が終わったということを明確に示すのは経済だ。為替レートが上がったり下がったりすると、円の価値が上がったり下がったりする。日本の GDP も上がったり下がったりする。日本の GDPは一定のものだから、為替で上がったり下がったりするのはおかしい。というんで、各国の経済力を測るのに、マクドナルドがそれぞれの通貨でいくらで買えるか、マクドナルド 1個分の単位で価値で調整するというのが購買力平価だ。

 CIA G7と非G7の購買力平価の合計のデータ。アメリカの GDP 24.7兆ドル、中国は31.2兆ドル。もう中国の方が上になってる。もう一つ重要なことは、G77ヵ国の合計が48.5兆ドルに対して、非G7の上位7ヵ国:中国、インド、ロシア、ブラジル、インドネシア、トルコ、メキシコ、合計63.8兆ドルに達している。もうG7よりは非G7の方が大きい。

 

研究論文トップテンで中国突出

次に研究論文トップテンの論文数というのを見たら、 1998年から2000年、米国、英国、ドイツ、日本、フランス、カナダ、イタリア、こういう順番だが、 2020年から 2022年にかけては、1位が中国64138本(35%)、米国34995本、英国、インド、ドイツ、イタリア、豪州、カナダ、韓国、フランス、スペイン、オランダの順で、日本133719本(2%)。日本は 4位から13位に。日本は、かつて世界で最も教育水準が高かった。だから日本が世界でGDP 2番目になった。今、日本は OECD 諸国で公的資源の非常に低い国になっている。

 

核心技術でも中国が圧倒

豪州の戦略政策研究所が発表した核心技術追跡指標では、 64部門中、中国が 57部門、米国が 7部門で現在一位。中国の一位はレーダー、衛星位置追跡、ドローン、合成生物学、先端データ分析等57分野。米国は量子コンピューティング、遺伝子技術、ワクチンなどの 7分野。明らかに量と質とで中国はリードする時代に入った。そしてインドネシアやインドやかつての発展途上国が、その恩恵で連携を取りながら進んでいる。

日本が今、経済安保で、いかに馬鹿馬鹿しい戦略、政策を取っているか。1998年から2000年、研究論文のトップは米国、英国、ドイツ、日本、フランス。10番の中に中国は入っていない。だから、日本の研究が中国の方に行かないようにする。困るのは中国で、日本は困らない。だから、当時は、経済安保、科学技術が中国に行かないようにするというのが正しい政策だった。

2020年から 2022年、1位が中国35%、2位は米国、日本は13位でわずか2パーセント。お互いにそれが軍事に使われたら困るということで、先端産業を止める。困るのは日本。しかし、経済安保っていうのを正しい政策と思ってる。そんなことをしたら、日本はどんどん科学技術で遅れる。我々が中国、中国という国民を好きか嫌いかは問題ではない。中国の技術を取り入れることが我が国の国策であるはずだ。

日本は、全く逆のことをやっている。それはアメリカの立場から見ると、やってほしいことだ。アメリカと中国はほぼ同等で、それに日本が 2%であっても要求する。経済安保は日本の国益から見たらよくない。アメリカに追随して日本の繁栄があり、日本の安全が高まると思い込んでいる。そういう幻想は捨てる時期だ。事実を見つめ、 10年、20年前にアメリカが一極支配をしていた時に正しかった判断も、今アメリカが衰退している時に、それは逆になっている。

我々は今、どの時代にも増して客観的にものを見なければならない時期きている。残念ながら日本のマスコミ、政治家、学会、ジャーナリズム、みんな壊れてしまっている。一人一人が真剣にどこに真実があるか、自分の目で、自分の指標を持って考えていく時代が来ているかと思う。

文責:東京革新懇事務局

2025年11月3日月曜日

参院選後の情勢とたたかいの方向 大門実紀史

 参院選後の政治情勢とたたかいの方向

極右排外主義は多国籍企業が生み出した! 

日本共産党参議院議員 

大門実紀史さん

 

927日にラパスホールで開催した東京革新懇学習交流会での大門実紀史さんの講演の要旨をご紹介します。

 



右派・排外外主義とのたたかい

参議院選挙で自公は衆参で過半数割れになった。とくに極右政党の参政党の急伸に注目している。

参政党は街頭でヘイトスピーチをたびたび行ってきた。彼らの新日本憲法、天皇中心の国家に戻す、戦前のような国に戻す。国民主権が書いてない。愛国心教育、自衛軍を持つことを掲げている。

ヨーロッパでは十数年の間に、右派や極右勢力が伸びてきている。アメリカのトランプ政権もその一つだ。参政党は世界中で伸びている右派・排外主義の一つととらえる必要がある。参政党はこの間の地方選挙では、上位で当選すると状況になっており、非常に警戒する必要がある。

自民党も高市早苗氏が総裁に選ばれたように、右派への傾斜が強まっている。また維新、国民も右傾化し、改憲、軍事費の拡大を進める立場だ。外国人政策、スパイ防止法については、維新・参政・国民みんな言っており、今後、自民、維新、参政、国民が右派・排外主義の「反動ブロック」を形成していく危険性がある。日本でも右派・排外主義とどう対峙するかという局面に入った。 

右派・排外主義とはなにか

右派・排外主義は、反グローバリズムを掲げ、外国人差別に誘導する。グローバリズムは、新自由主義で企業の利益を最大化することが目的だ。それで世界的に展開したのが多国籍企業だ。外国人労働者や移民を呼び込んだ。そうなるとその国の低賃金の労働者が増える。中間層が没落する。その不満を新自由主義に向けなければいけないのだが、外国人排斥に向かわせることが排外主義者の役割だ。新自由主義の延命に手を貸している。彼らが訴えるのは苦しい人たちだから、社会福祉主義的なこと、最低賃金を上げる、減税する、社会保障は給付すると言いながら、不満を外国人に向かわせる。極右を応援している人の中に企業家が多い。自分たちに矛先が向かないように排外主義勢力を利用している。

二つ目の特徴は、既存の概念・組織への反発を煽る。与党、野党を含め既存の政党を批判し、人権・環境など進歩的な価値観は裕福なエリート層が考えた発想だと批判。トランプも、それを活用しエリートたちの価値観で世の中動いてきたと否定する。もう一つターゲットは具体的なエリート層。安定している公務員、企業の中で安定している人たち。SNSは匿名社会だから人々の憎悪引き出す。

 三つ目の特徴は日本だけだが、復古主義。参政党の天皇制復活、大日本帝国憲法への回帰。ヨーロッパでは王政を倒して、共和主義になった国が多いので、今更王様の国に戻そうということはない。日本は戦争の問題や責任をきちっと総括もしてこなかったため、復古主義が生き延びてきた。 

歴史的岐路

自民党政治を終わらせるということと、極右排外主義の台頭を許すのかどうか、日本もそういう局面に入ったという意味での歴史的な岐路だ。極右的潮流と正面から対決して、国民の暮らしを守る新しい政治の転換を目指すという流れとの関係で、新しい国民的・民主共同を作り、広げていく必要があるという局面だ。

排外主義とたたかうだけでなく、外国人の人たちとどう共生し日本をどうやって一緒に作るか、共生のビジョンを、つくり出していく必要がある。

ジャーナリスト・ユリア・エブナーは、ヨーロッパの極右組織の中に潜入取材して『ゴーイングメインストリーム』を書いた。そのなかでなぜ極右の台頭を許したかについて、民主主義勢力がバラバラにたたかってきたから。排外主義に対してすべての民主的な運動は力を合わせるべきだと言っている。 

具体的なたたかい

当面二つの面での共同を発展させる必要がある。一つは軍国化・排外主義との対決。もう一つは、彼らは社会福祉主義でせめてくる故に、私達が一番取り組み政策を持っている点での取り組みだ。

その上で税財政の話になる。自民、維新、参政、国民は軍拡推進だ。税財政も社会保障もこれを許すと全部潰される。グラフは、アメリカからの兵器購入額のグラフ。後年度負担があるのでもっと増える。アメリカから買う兵器を増やすために軍事費を増やしてきた。さらに米国から突きつけられているのはGDP35%への軍事費アップだ。 

暮らしを破壊する消費税

暮らしで焦点になっているのは消費税。世界では物価高騰等で115の国と地域で何らかの形で減税やっている。

消費税は社会保障の財源というのは真っ赤な嘘だ。消費税が最初に導入されるときに社会保障のためという言葉は一言もなく、直間比率の見直しで直接税の法人税、所得税を下げて、間接税を増せば投資にお金が回って経済が活性化する、財源は国民に広く薄く負担してもらうとの理屈で大キャンペーンをやった。5%にするときに、大企業、金持ち減税だと批判され、社会保障のためをくっつけた。それが続いているだけのことだ。法人税や所得税が減って、消費税が穴埋めをしている。 

大企業優遇の仕組み

この間、企業の利益は上がり、税負担は減り、内部留保はどんどんたまってきた。法人税の負担率は、大企業よりも中小企業の方が負担している。なぜなら、大企業は研究開発とか優遇税制があって負担が少ない。企業の労働分配率もどんどん下がっている。

大企業は余った金を株主に配当し自社株を買っている。自社株買いは、例えば100株市場にある会社の株を自ら50株買うと、世の中に出回る株は50株になり株価をつり上げる。禁止されていたのが小泉政権で解禁され、株主を儲けさせる手段に使われている。 

社会保障は大きな経済

日本は社会保障費が膨らんで大変だ、借金が膨らむ。社会保障を良くすると現役世代に負担がかかる。子どもや孫につけが回ると脅される。高齢者も肩身の狭い思いをし、活動家の中にも萎縮したりする部分が出てくるぐらいだ。

高齢者の皆さんもかつては若く、所得税を払っていた。その人の人生のサイクルだ。若い人と高齢者を分断する言い方は大間違いだ。こんなことを言っているのは日本だけだ。

このグラフは、GDP比に対する社会保障の割合だ。GDP1年間国民が働いて稼ぎ出した総額。社会保障に回っている割合は、医療制度ボロボロのアメリカより日本は低い。

国会で、社会保障は権利だというと政府はお金の話をする。ではこちらもお金の話をしよう。

社会保障というのは国民の権利であるとともに、大きな経済だ。1年間国民が稼ぎ出すGDPの約4分の1140兆円は社会保障の分野だ。

皆さんが医者かかり、払う分と保険から出るもので払う。それが病院や診療所の収入になり、医者、看護師、検査技師、事務員の雇用が生まれ、給料を払い消費に結びつく。

年金はイコール消費であり、年金減らすと消費が落ち込む。地方は特に顕著だ。社会保障は命と健康を守る大事な事業、裏を返せば全部お金だ。むしろ充実していけば、若い方々の雇用も増えるし、消費に繋がって、国内経済の停滞を打破することができる。

社会保障を充実させると経済よくなると遠慮せず攻勢的に捉える必要がある。

社会保障の最も大きな経済効果は、トランポリン効果だ。人生いろいろあり、失業、病気なっても、いろんなものが整っていれば元に戻って頑張れる。安心してチャレンジするためにはセーフティネットが重要だ。日本のようにボロボロだと人々が縮こまって経済が伸びない。

かつて私と竹中平蔵さんはかなり論戦した。竹中さんは新古典派経済学の論で「セーフティーネットは限りなく小さい方がいい。手厚くすると人々は怠けて頑張らなくなる」と主張。

私は、当時フィンランドの本読んでいて、「セーフティネットはきちっとしている方が安心してチャレンジできるから経済が伸びる」と論戦した。

そのときは机上の論戦だった。20年余経ち、今や実証的に証明されている。セーフティネットを整えてきた北欧は成長率3%4%、日本はずっと頭打ちだ。

社会保障をよくしてこそ経済もよくなる、このことを今こそ正面から訴えたい。