参院選後の政治情勢とたたかいの方向
極右排外主義は多国籍企業が生み出した!
日本共産党参議院議員 大門実紀史さん
9月27日にラパスホールで開催した東京革新懇学習交流会での大門実紀史さんの講演の要旨をご紹介します。
右派・排外外主義とのたたかいへ
参議院選挙で自公は衆参で過半数割れになった。とくに極右政党の参政党の急伸に注目している。
参政党は街頭でヘイトスピーチをたびたび行ってきた。彼らの新日本憲法、天皇中心の国家に戻す、戦前のような国に戻す。国民主権が書いてない。愛国心教育、自衛軍を持つことを掲げている。
ヨーロッパでは十数年の間に、右派や極右勢力が伸びてきている。アメリカのトランプ政権もその一つだ。参政党は世界中で伸びている右派・排外主義の一つととらえる必要がある。参政党はこの間の地方選挙では、上位で当選すると状況になっており、非常に警戒する必要がある。
自民党も高市早苗氏が総裁に選ばれたように、右派への傾斜が強まっている。また維新、国民も右傾化し、改憲、軍事費の拡大を進める立場だ。外国人政策、スパイ防止法については、維新・参政・国民みんな言っており、今後、自民、維新、参政、国民が右派・排外主義の「反動ブロック」を形成していく危険性がある。日本でも右派・排外主義とどう対峙するかという局面に入った。
右派・排外主義とはなにか
右派・排外主義は、反グローバリズムを掲げ、外国人差別に誘導する。グローバリズムは、新自由主義で企業の利益を最大化することが目的だ。それで世界的に展開したのが多国籍企業だ。外国人労働者や移民を呼び込んだ。そうなるとその国の低賃金の労働者が増える。中間層が没落する。その不満を新自由主義に向けなければいけないのだが、外国人排斥に向かわせることが排外主義者の役割だ。新自由主義の延命に手を貸している。彼らが訴えるのは苦しい人たちだから、社会福祉主義的なこと、最低賃金を上げる、減税する、社会保障は給付すると言いながら、不満を外国人に向かわせる。極右を応援している人の中に企業家が多い。自分たちに矛先が向かないように排外主義勢力を利用している。
二つ目の特徴は、既存の概念・組織への反発を煽る。与党、野党を含め既存の政党を批判し、人権・環境など進歩的な価値観は裕福なエリート層が考えた発想だと批判。トランプも、それを活用しエリートたちの価値観で世の中動いてきたと否定する。もう一つターゲットは具体的なエリート層。安定している公務員、企業の中で安定している人たち。SNSは匿名社会だから人々の憎悪引き出す。
 三つ目の特徴は日本だけだが、復古主義。参政党の天皇制復活、大日本帝国憲法への回帰。ヨーロッパでは王政を倒して、共和主義になった国が多いので、今更王様の国に戻そうということはない。日本は戦争の問題や責任をきちっと総括もしてこなかったため、復古主義が生き延びてきた。
歴史的岐路
自民党政治を終わらせるということと、極右排外主義の台頭を許すのかどうか、日本もそういう局面に入ったという意味での歴史的な岐路だ。極右的潮流と正面から対決して、国民の暮らしを守る新しい政治の転換を目指すという流れとの関係で、新しい国民的・民主共同を作り、広げていく必要があるという局面だ。
排外主義とたたかうだけでなく、外国人の人たちとどう共生し日本をどうやって一緒に作るか、共生のビジョンを、つくり出していく必要がある。
ジャーナリスト・ユリア・エブナーは、ヨーロッパの極右組織の中に潜入取材して『ゴーイングメインストリーム』を書いた。そのなかでなぜ極右の台頭を許したかについて、民主主義勢力がバラバラにたたかってきたから。排外主義に対してすべての民主的な運動は力を合わせるべきだと言っている。
具体的なたたかい
当面二つの面での共同を発展させる必要がある。一つは軍国化・排外主義との対決。もう一つは、彼らは社会福祉主義でせめてくる故に、私達が一番取り組み政策を持っている点での取り組みだ。
その上で税財政の話になる。自民、維新、参政、国民は軍拡推進だ。税財政も社会保障もこれを許すと全部潰される。グラフは、アメリカからの兵器購入額のグラフ。後年度負担があるのでもっと増える。アメリカから買う兵器を増やすために軍事費を増やしてきた。さらに米国から突きつけられているのはGDP3、5%への軍事費アップだ。
暮らしを破壊する消費税
暮らしで焦点になっているのは消費税。世界では物価高騰等で115の国と地域で何らかの形で減税やっている。
消費税は社会保障の財源というのは真っ赤な嘘だ。消費税が最初に導入されるときに社会保障のためという言葉は一言もなく、直間比率の見直しで直接税の法人税、所得税を下げて、間接税を増せば投資にお金が回って経済が活性化する、財源は国民に広く薄く負担してもらうとの理屈で大キャンペーンをやった。5%にするときに、大企業、金持ち減税だと批判され、社会保障のためをくっつけた。それが続いているだけのことだ。法人税や所得税が減って、消費税が穴埋めをしている。
大企業優遇の仕組み
この間、企業の利益は上がり、税負担は減り、内部留保はどんどんたまってきた。法人税の負担率は、大企業よりも中小企業の方が負担している。なぜなら、大企業は研究開発とか優遇税制があって負担が少ない。企業の労働分配率もどんどん下がっている。
大企業は余った金を株主に配当し自社株を買っている。自社株買いは、例えば100株市場にある会社の株を自ら50株買うと、世の中に出回る株は50株になり株価をつり上げる。禁止されていたのが小泉政権で解禁され、株主を儲けさせる手段に使われている。
社会保障は大きな経済
日本は社会保障費が膨らんで大変だ、借金が膨らむ。社会保障を良くすると現役世代に負担がかかる。子どもや孫につけが回ると脅される。高齢者も肩身の狭い思いをし、活動家の中にも萎縮したりする部分が出てくるぐらいだ。
高齢者の皆さんもかつては若く、所得税を払っていた。その人の人生のサイクルだ。若い人と高齢者を分断する言い方は大間違いだ。こんなことを言っているのは日本だけだ。
このグラフは、GDP比に対する社会保障の割合だ。GDPは1年間国民が働いて稼ぎ出した総額。社会保障に回っている割合は、医療制度ボロボロのアメリカより日本は低い。
国会で、社会保障は権利だというと政府はお金の話をする。ではこちらもお金の話をしよう。
社会保障というのは国民の権利であるとともに、大きな経済だ。1年間国民が稼ぎ出すGDPの約4分の1、140兆円は社会保障の分野だ。
皆さんが医者かかり、払う分と保険から出るもので払う。それが病院や診療所の収入になり、医者、看護師、検査技師、事務員の雇用が生まれ、給料を払い消費に結びつく。
年金はイコール消費であり、年金減らすと消費が落ち込む。地方は特に顕著だ。社会保障は命と健康を守る大事な事業、裏を返せば全部お金だ。むしろ充実していけば、若い方々の雇用も増えるし、消費に繋がって、国内経済の停滞を打破することができる。
社会保障を充実させると経済よくなると遠慮せず攻勢的に捉える必要がある。
社会保障の最も大きな経済効果は、トランポリン効果だ。人生いろいろあり、失業、病気なっても、いろんなものが整っていれば元に戻って頑張れる。安心してチャレンジするためにはセーフティネットが重要だ。日本のようにボロボロだと人々が縮こまって経済が伸びない。
かつて私と竹中平蔵さんはかなり論戦した。竹中さんは新古典派経済学の論で「セーフティーネットは限りなく小さい方がいい。手厚くすると人々は怠けて頑張らなくなる」と主張。
私は、当時フィンランドの本読んでいて、「セーフティネットはきちっとしている方が安心してチャレンジできるから経済が伸びる」と論戦した。
そのときは机上の論戦だった。20年余経ち、今や実証的に証明されている。セーフティネットを整えてきた北欧は成長率3%~4%、日本はずっと頭打ちだ。

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