2019年10月30日水曜日

新しい天皇就任儀式考えよう
―「即位の礼」「大嘗祭」の問題点―
  金子 勝 東京革新懇代表世話人・立正大学名誉教授

はじめに
 明仁天皇から徳仁天皇への天皇の交代に伴う儀式のうち、最も大きな意味を持つ「即位礼正殿の儀」が二〇一九年一〇月二二日に実施され、更に、「大嘗宮の儀」が一一月一四日と一五日に実施される。
 現代の天皇(全世界・万物を支配するという君主の呼び名)は、日本国憲法が設置した国家(一つの地域を統治する「公」的権力を持つ「公」的機関体)の一機関であるので、日本国憲法を超越した国家機関ではなく、日本国憲法に統制される国家機関である。
 日本国憲法は、国民を暴政から守るために、立憲主義を建てて、日本国憲法に違反する国家機関の行為は効力を有しない(第九八条)としているから、日本国憲法の観点に立って、「即位礼正殿の儀」と「大嘗宮の儀」の内容と実施方法が合憲性を有しているか否かを検討しよう。 
「即位礼正殿の儀」・「大嘗宮の儀」と日本国憲法 
「即位礼正殿の儀」とは、徳仁天皇が、三種の神器のうちの剣と璽及び国璽・御璽を携えて、「高御座」と呼ばれる皇祖・天照大神の神座を受け継ぐ玉座に昇り、天皇となったことを公に宣言する儀式であり、それは、徳仁天皇が天照大神から統治権を受けて神権天皇となったことを公に宣言する宗教的儀式である。
 「大嘗宮の儀」とは、徳仁天皇が、全国土を象徴する大嘗宮と呼ばれる「悠紀殿」(東京から東に当る地域を代表する建物)と「主基殿」(東京から西に当る地域を代表する建物)で、全国土から献上させた米等の新穀を天照大神及び天・地の神々に供え、それらの諸神と共に食する行為(悠基殿供饌の儀・主基殿供饌の儀)を行う宗教的儀式であり、この行為によって、徳仁天皇が天照大神の後継者として「霊威」を継承し、その霊威を以て全国土を服属させたとする宗教的儀式である。
 この二つの儀式は、大日本帝国を統治する天皇の地位とその権能(統治権=主権)は天照大神から承けたものであるとする大日本帝国憲法の観点を踏まえて制定(一九〇九年二月一一日公布)された「登極令」(一九四七年五月三日廃止)という神権天皇の交代儀式を定めた規範を踏襲したものであり、日本国憲法のもとでは、時代錯誤の儀式である。
 日本国憲法は、「国民主権」を宣言し(前文)、天皇の地位は主権者国民から与えられたものであるとしている(第一条)。それ故、徳仁天皇が、天照大神から統治権を与えられた神権天皇であることを公に宣言する儀式である「即位礼正殿の儀」を実施することは、また、徳仁天皇が霊威を獲得し、その霊威で全国土を服属させる儀式である「大嘗宮の儀」を実施することは、国民主権に違反し、許されない。
 更に、日本国憲法は、大日本帝国憲法のもとで、国家と天皇をまつる皇室神道を結合させて、天皇崇拝・天皇忠誠を強制する国家神道(国家宗教)が作られ、国民が天皇の戦争に強制されたこと、宗教の自由が弾圧されたことを反省して、「政教分離」原則を定め(第二〇条)、国家・自治体によるすべての宗教的活動の禁止(第二〇条)及び公の財産の宗教への支出禁止(第八九条)を定めている。それ故、宗教的儀式となる「即位礼正殿の儀」を徳仁天皇の「国事に関する行為」(第七条第一〇号)として実施することは、また、宗教的儀式である「大嘗宮の儀」に宮廷費(公の財産)を支出することは、「政教分離」原則に違反し、許されない。 
新しい天皇就任儀式を考えよう 
 現在のところ、日本国憲法によって生まれた天皇の就任儀式を定めた法令はない。天皇が存在する限り、日本国憲法に適合する天皇就任儀式が求められる。そうでないと、国家によって、国家や天皇に都合のいい天皇就任儀式が強行されるからである。
 例えば、国会において、新しく天皇になる人が、日本国憲法の上に手を置いて、主権者国民の奉仕者であること・日本国憲法を尊重擁護することを宣誓する。それを受けて、国会が、即位を承認する決議を行う、が考えられる。新しい天皇就任儀式を考えよう。

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