2022年10月1日土曜日

10月1日東京革新懇学習交流会

 中野晃一上智大学教授の講演

「改憲と壊憲の危機にいかに抗うか」   

101日に開催しました東京革新懇学習交流会での中野晃一さんの講演をご紹介します。大変好評でした。          

          講演②
 明文改憲について 

今日お話しするのは、一つは明文改憲。もう一つは憲法を壊してしまう壊憲です。

 小泉時代から自民党は明文改憲をやろうとしたけど出来ずに来て、あの安倍さんも衆参両院で改憲派が3分の2超えてもやれなかった。

 岸田さんが何をやりたいか正直分からない。安倍さんがいなくなって一番困っているのは岸田さん。魂の面を埋めてくれていて、それで岸田さんが動く材料になっていた。

 2009年に民主党が勝った選挙以来の5回の選挙で、全有権者のうちどれだけ小選挙区で自民党に投票したか見ると、動いていなくて25%程度。民主党にはガッカリしたが、安倍さんがまたやるのかと、投票率が10%、15%下がったまま。自民党は勝ち続けているが、本当に民意の支持があるかというとない。安倍さんのときも岸田さんも、重要政策は国民の理解が深まるほど不人気になっていく。安倍さんが殺されて国葬まで2ヶ月半も時間をつくってしまった。こちらが反撃する機会を持った結果、国民の理解が深まり世論の反発が出てきた。国民投票はそこが怖い。発議したら、法の定めで少なくとも2ヶ月は間を開けて国民投票になる。その間に国民の理解が深まって、おかしいとなる可能性が有る。国民投票は日本でやったことないが、世界的に見てもロシアンルーレットと言われる。EUの統合に関し、国で勝てると思った国で、国民投票で否決され大慌てした。政権にノーを突きつける場にもなる。電通を使い電波を乗っ取って、芸能人もCMに動員し、何となくいい雰囲気で通せると考えていると思うが、リスクは高い。

憲法を壊す中国封じ込めへの片棒担ぎ 

今日お話ししたいのは、大きな政治の話しで憲法を壊す政治。米中対決、台湾有事に、代理戦争、戦場になることに志願している日本政府の動きである。日米安保村と言っているが、政治家、官僚、学者、財界に、日米同盟を国是と位置づけている人達がいて、アメリカとの関係を緊密にし、アメリカ軍と自衛隊の一体化、アメリカが選んだ戦争を日本が一緒にやっていくことを推し進める人達が、政権の中枢からメディアの主流派としガチッといる。これを押し返していくことはかなり大変だ。

 国葬やった2つの理由があり、一つは国内の理由で党内右派を懐柔するという小さな目的。もう一つの大きな方は、安倍さんは、アメリカ・西側諸国に対しては、日本も自衛隊を外に出しますと言ってきた。国内では、集団的自衛権によって日本は安全安心の国になりますと言った。国外、国内で言っていることが全く違う。それを岸田さんは、外務大臣として一緒にやってきて、私が正当な後継者として引き継ぐからご安心をということで国葬をやった。弔問外交としてめざしたのはそこだ。ただ、蓋を開けるとかなりショボいものになった。対外的に見ても、大きく反対したことは大きな意味があった。

 日中国交正常化50周年の年に、中国をアメリカと一緒になり武力で脅すことで平和が出来ると思うことは何事か。ワシントンから見れば、極東で限定的に戦争が起こればウハウハかもしれない。武器は使われる、武器は買われる、中国の国力はそがれる、日本が戦場になり世界第2位、第3位のライバルの国が失墜していく。

中国はアメリカまでミサイル飛ばせない。今のアメリカとロシアの関係と同じで、大国同士のエゴは互いに戦争はやらない。代理戦争をやらせ、台湾、日本、南西諸島が戦場になる。中国から見ればケンカを売ることになる。

 米中対立を煽り、台湾有事を煽り本当に危ない。敵基地攻撃能力だ、中枢攻撃能力だ、防衛費2倍だ、核共有だと騒いでいると、米中対立の真ん中に日本が入っていく。 

公明党の動向 

 明文改憲はすぐには動けない。政権体力が弱っていることもあるが、自民党だけでなく公明党も相当弱っている。セクハラで公明党議員が辞職。公明党は政権慣れしてきて、自民党並みの腐敗をやるようになった。遠山清彦議員の貸金業法違反もあった。

もともと公明とかいって、腐敗に反対する、福祉の党、平和の党とか言って来たが、自民党と一緒になり、山口那津男さんがとても交代できる状況でなくなった。

 9条改憲することに公明党は、今年の参議院選挙においても、基本的に反対する姿勢を崩していない。乗れば衰退する。参院選で公明党は票も議席も減らした。党勢立て直す点でも、9条の妥協は簡単には出来ない。 

自民改憲案は何を壊すか 

 明文改憲の論点から言うと、自衛の根拠が9条に書かれているわけではないことが大事な点だ。9条は、どう防衛するか書いている訳ではなく、軍事力を持たない、戦争を放棄することを書いている。政府は、どこに自衛の根拠を見出してきたかというと、かなりこじつけであるが、憲法前文と13条で、平和的生存権と生命、自由及び幸福を追求する権利があるから、国が完全に覆され人権が守れなくなる事態を許している訳ではなく、9条の範囲内で専守防衛で最低限日本を守ることが出来るという論理付けになっている。この論理付けは、集団的自衛権を突破したときでさえ踏襲した。9条は突破されたが、前文と13条が体を張ってとめた形になっている。防衛省のホームページでさえ同様の言い方をしている。「限定的集団的自衛権」と言っているのはこれが理由だ。

 自民党は、条文イメージ(たたき台)を2018年に出した。9条はそのままにして、9条の2として「前項の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず……自衛隊を保持する」を加える。9条を無効化するだけでなく、前文も13条も無効化してしまう。国という言葉の後に国民が出てきて、今までは国民の権利を守るための自衛と言う建付けになっていたが、我が国を守るために国民は犠牲になれと容易に転化する形に変えようとしている。

9条は二つの仕方で日本を守ってきた 

9条で国が守れるのかという人がいるが、9条で国を守るとは誰も言っていない。9条は二つの仕方で日本を守ってきた。一つは、日本が世界8位の軍事大国になり、比類なき軍事大国のアメリカと同盟関係にあるにも関わらず、中国は最近まで日本が攻めてくると思っていない。北朝鮮も日本が攻めてくると思っていない。かつて朝鮮半島を植民地化し、中国を侵略した歴史にも関わらず、9条によって戦争を放棄し、軍事力を持たないと言っている。自衛隊の存在にクエスチョンマークが付いているが、ブレーキがかかっていることがあり、専守防衛という国民の意思がかなり強いことも理解されていて、中国側は日本が攻めてくるという前提に立たずに来ている。逆にアメリカと一緒に台湾有事で戦争するとなったら、こちらもそれで作戦立てるといことになる。すでにそうなり始めている。安全保障に資するどころか真逆になる。

 もう一つは、アメリカの戦争に巻き込まれることを防いできた。軍事同盟のジレンマで、結果的に他国とのいらない戦争に巻き込まれ、かえって被害が及ぶことがあり得る。それを防いできたのが9条だ。日本は、朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラク戦争にも直接関与していない。韓国は、9条がなくベトナム戦争に参戦しなければならなかった。同盟に対する認識があまりに甘すぎるかなり怪しい人達がいる。 

どう運動を大きくするか 

 締めくくりに、どうやって運動を大きくするのか考えてみたい。

 国葬に対しかなり運動が盛り上がり、だいぶ足元を固めることが出来た。それがなかったら私たちはもっと危ない状況にあった。ただ敷布団が戻ってきたところだ。若い人や無関心だった人達、シールズあるいはママの会に代表されるような、掛布団と言われる人々を次の段階で呼び覚まさなければならない。

 憲法を壊し、平和外交を捨て、力で中国を封じ込めるという、馬鹿げた考えを許してはいけない。そんなところにお金を使わず、生活や命にお金を使っていく。そのために、どうやってより大きく運動を広げていくのか、知恵を絞り工夫し、いままでやれていないことをめざす。生まれ変わるタイミングでもある。

 私も、2014年から私なりに走ってきた感じで、課題があると思いながら、正面から対処してこなかった思いがある。次の世代にもっとまともな日本をバトンタッチしたいとやっている訳だから、運動主体もバトンタッチしていかなければならない。

 その時に思うことは、世代による違いだ。組織や運動に対する経験や実感が、今日ご参加の方とだいぶ違う。右肩上がりの日本を覚えていたり、運動にかかわって成果を上げた経験がある、個人の成長や自己実現、もっと言うと自分の解放と社会の変革に取り組むことが割と一致してきた人達が今も声を上げている人たちに多いと思う。それは素晴らしいことだ。

 ところが若い人達は、組織は自分をすり減らすものという体験が多い。大学もだいぶ変わり、非常勤の人達を沢山抱えるようになる。若い人達は、運動、組織に参加して自分が成長するという体験が圧倒劇に少ない。

 キーワードはエンパワーメントだ。パワーを注入するということだが、私達の運動が誰もがエンパワーする運動になっているのか問われる。入っていない人たちもエンパワーする組織じゃないと入ってこない。何となく使い捨ての感じがする。あるいは当たり前とか周辺的なことをやればいいと思われたりする組織や運動になっていると今いる人たちで終わってしまう。

 市民連合の議論もこれからだが、もっとプラットホームとして、若い人達に機会が与えてくれる、参加するメリットがあるような運動のつくり方を考えていなかければならない。デザインのスキルや動画をつくり流す、ツイッターを使うとか、そういうことが出来ればもっと多くの人に届くのに、どうしても怒れる中高年の集まりにしか見えない運動からの脱却が求められる。

 ノウハウを持っている若い人や女性にアプローチし、どこからどう変えるか教えてもらう。講師に呼んだりワークショップやったり。デザイナーに正当な対価を払って来てもらったり、次の世代にバトンタッチしていける作り方をめざす。

 誰もがエンパワーされるものなっているのか、発言の順番、ものごとの決め方、役割の分担など、中に入ってこんなスキルを身に着けることが出来た、社会変革に貢献しているという感じだけでなく個人として成長出来た、新しいことを習得出来たということを、みんなで工夫して広げていけると思う。

 常にたたかっていて余裕がない。とりあえずの体制でやるしかないと来たわけですが、それを変えて行くことを少しずつでもやり、層が変わってくると思う。

続いて参加者の発言
岸本東京平和委員会事務局長         
内藤利治杉並革新懇事務局長発言「岸本聡子新区長所信表明に200人の参加」
五十嵐仁代表世話人の閉会挨拶





2022年9月30日金曜日

農の危機

 進む世界と日本の食・農の危機

日本の基幹農業従事者20年で半減

 農民連事務局次長 岡崎衆史 


 世界と日本の食と農業の危機の状況と打開の方向について、農民連の岡崎衆史さんに寄稿して頂きました 

 「世界食料危機」が深刻化している。飢餓や食料不安に陥る人が急増し、食べたくても食べられない人の数は日本でも増えている。農業の危機が進行するなか、国連は、食料危機が新たな段階に到達すると警告する。一方で、食と農の仕組みを変えれば、持続可能な社会に大きく近づくことが期待されている。

 戦後最悪の食料危機 

 「第二次大戦以来で最悪」。ロシアのウクライナ侵略が引き金となった世界規模の食料危機について、国連世界食料計画(WFP)が今年3月にこう警告した。ロシアとウクライナは穀物の輸出大国で、両国合わせて世界の小麦輸出の3割、トウモロコシ輸出の2割、ヒマワリ油については約8割を占める。戦争でこれらが滞り、世界中に影響が広がった。

アメリカの国際食糧政策研究所(IFPRI)によると、ウクライナ危機後、最大時25カ国が食料輸出規制を行い、カロリーベースで世界の食料取引量の17%が対象になった。

パンなどの食品価格の高騰に怒る民衆のデモや、農業資材高騰への農民の抗議は、中東・北アフリカ、アジア、ヨーロッパ、アメリカ大陸など世界中に広がった。

国連によると、丸一日以上食事が全くとれない「急性食料不安」の数は新型コロナウイルス感染症拡大前は1億3500万人だったのが、コロナ後2億7600万人に倍増し、ウクライナ侵略後は、3億2300万人に増えた。

 国際社会は15年、持続可能な開発目標(SDGs)を採択し、30年までに飢餓をゼロにする目標を掲げた。しかし、15年に5・9億人だった飢餓人口は、21年の予想値で7・7億人に達した。飢餓ゼロに向けた取り組みはもともと難航していたが、コロナ・ウクライナ危機を受け、いっそう後退を強いられた。

 重大なのは、食料危機とともに、農業の危機が深まっていることである。

 WFPのビーズリー事務局長は7月、NHKとのインタビューで「ことしは食料価格の高騰が貧困層を直撃したが、来年は干ばつや肥料の不足によって食料がそもそも生産できずに、手に入らない問題が発生するだろう」と警鐘を鳴らした。同事務局長は経団連と懇談した際には、肥料不足がアジアの米の生産にも影響を与えると予想し、飢餓が深刻化した場合、社会が不安定化し、大規模な人口移動につながる可能性も示唆した。 

日本にとって他人事でない 

日本では、食料危機は他国の問題と考えている人が多い。果たしてそうか。

 帝国データバンクは9月1日、今年に入ってから8月末までに主要飲食料品メーカー105社の値上げが2万品目を超えたと発表した。9月には2424品目、10月には6532品目の値上げが追加されるという。これらが庶民の懐を直撃しないはずはない。

 2112月の内閣府の調査によると、過去1年間に食料が買えない経験があった世帯は全世帯の11%、低所得世帯の38%、ひとり親世帯の30%、そのうち母子家庭では32%に上った。

ひとり親家庭を支援するNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」には、「食費は子どもと2人で1日300円。人生で今が一番苦しい」「物価高で食費を切り詰めても追いつかない」といった悲痛な声が寄せられているという。また、NPO法人キッズドアが生活に困窮する家庭を対象に夏休み前にアンケートをしたところ、「夏休みの食事に不安がある」と答えた世帯は81%に上った。食事のバランスが悪くなった世帯は64%、60%が食事のボリュームが減ったと答えた。

食料を求める人々の切実な声は各地で支援活動に取り組む農民連のもとにも届いている。 

危機の大本にあるのは 

現在の食と農の危機は、「多重危機」と呼ばれ、ロシアのウクライナ侵略、新型コロナ感染症、エネルギー価格高騰、気候危機や異常気象と自然災害、生物多様性や土壌劣化を含む環境危機などさまざまな危機が相互に作用しあいながらもたらされた。

危機がここまで深刻化したのは、大本の食と農の基盤が脆弱だからである。巨大なアグリビジネスが主導し、農産物を安く大量に生産し、グローバルに広がる供給網で世界中で売りまくり儲けを最大化する。アグリビジネスは、生産や輸送にエネルギーを浪費し環境を破壊しても、安い農産物で地域農業を破壊して、格差・貧困・飢餓を押し広げても、気に掛けることはない。

 気候変動に関する政府間パネルによると、食料の生産から輸送、消費までを含むグローバル・フード・システムの温室効果ガス排出量は最大で総排出量の37%を占める。

ウイルスや紛争が、伸びきった供給網を寸断する恐れがあることは専門家の警告や歴史の教訓から予測でき、食と農の仕組みを国内・地域循環重視に転換させることで対策をとることは可能だった。しかし、こうした措置はとられなかった。たとえ危機が起きて人々が苦しんでもこの仕組みの方がアグリビジネスにとっては儲かるからである。

国際援助団体のオックスファムは5月23日、「痛みから利益を得る」と題した報告を出した。それによると、アグリビジネスは、穀物価格の乱高下などを利用して過去2年間で資産を45%(3820億ドル)増やした。 

農業破壊を徹底させる日本 

日本では、政府の新自由主義政策が雇用を不安定化させ、社会保障を削減し、ショックに弱い社会が作られてきた。コロナの下での経済活動の制限による所得減、ウクライナ危機が深刻化させた食料価格の高騰で最も被害を受けたのは、この政策が作り出した非正規雇用の労働者やひとり親家庭をはじめ多くの庶民である。

雇用と社会保障の破壊は、農業と農村を破壊する政策と並行して進められてきた。

日本政府は、農業予算の削減、農業を守る基盤の破壊を進めてきた。その下、農産物の価格保障や戸別所得補償制度を廃止し、農地制度、農協制度、農産物の輸入規制、種子制度、市場制度を企業有利に改悪してきた。

農産物の輸入自由化は、次々と締結されたTPP11、日欧EPA、日米貿易協定、RCEPなどのメガ自由貿易協定を通じて前例のない規模で推し進められた。

その結果、この20年余りに基幹的農業従事者が100万人以上消え、123万人となった。平均年齢は67歳を超える。農業経営体数は100万を割った。農地も20年間で50万ヘクタール近く減少し、農地荒廃や原野化が進んでいる(図1)。

ここに、コロナ・ウクライナ危機後、肥料、飼料、農業資材の高騰が襲い掛かった。生産費を大きく下回る低米価も続いている。政府は水田活用直接支払い交付金のカットも打ち出した。

農業はすでに苦境に追い込まれている。財務省は基幹的農業従事者について、40年には42万人に激減すると推計している。

日本の現在の食料危機は、食べたくても食品が高くて買えない所得の低い層を中心に影響を及ぼしてきた。農産物の生産が世界的に困難に陥るという新たな段階に移行すれば、食料が足りなくて手に入らない事態に至る。農業破壊が続いてきた日本の食料自給率は主要国最低水準の38%。食料が手に入らないとき、危機の深刻さは計り知れない。 

家族農業を守る政策 

いま求められるのは、家族農業を守り、国内増産を支援し、食料自給率を引き上げる政策である。

緊急に必要なのは、高騰する肥料、飼料、農業資材高騰に対して、農家の負担を軽減するための支援だ。また、水田活用直接支払い交付金の見直しは直ちにやめなければならない。EUは、資材コスト高の影響を受けた農家を補助金で支援すること、休耕地での食料、飼料用穀物増産の方針を打ち出した。

さらに抜本対策としては、農家の所得補償や農産物の価格保障を確立し、安心して生産できる環境を整備することが求められる。

農業を市場まかせにしている国でまともな国は存在しない。農業所得における補助金の占める割合は、ドイツ70%、イギリス91%、フランス95%、スイス105%に対し、日本はわずか30%(『国連家族農業10年』55ページ)。国民一人当たりの農業予算をみたとき、日本は、アメリカ、フランスの半分、韓国の3分の1に過ぎない。

政策的努力の結果1961年に42%だったイギリスの食料自給率は、2019年には70%に上昇した。同じ期間日本の自給率は78%から38%に下がっている。 

持続可能な社会をつくる力                  

家族農業を支援することによる食料自給率向上は、多重危機に対応し、持続可能社会をつくることにつながる。

国連は19年から28年までを家族農業の10年とし、家族農業支援を打ち出した。また。18年には農民と農村で働く人々の農民の権利宣言を国連総会が採択した。

国際社会はとりわけ、小規模・家族農業が主体となって進めるアグロエコロジーに期待している。

アグロエコロジーは、自然の生態系の力を活用し、可能な限り農薬や化学肥料の使用を抑え、健康にも環境にもよいものを生産し、地域や国内での消費と経済循環を進める。中南米で始まり、ヨーロッパやアメリカ、アフリカ、アジアでも進んでいる。日本にも農業近代化以前の循環型農業、その後の有機農業、自然農法、産直などアグロエコロジーにつながる伝統がある。取り組みの中で、多様性あるコミュニティ作りや民主的な話し合いを重視し、環境も社会も持続可能にしていくことを目指している。

アグロエコロジーについてFAOは、SDGs実現に向け食と農の仕組みを変革する「カギ」と位置付けている。アグロエコロジーを通じた持続可能な社会作りに、農民連も挑戦している。5月に改定された新婦人と農民連の産直運動4つの共同目標にもその推進が明記されている。

コロナ後、家庭菜園や市民農園、産直を始める人が増え、地方へ移住も増加しているという。東京では6410ヘクタールの農地で、9567戸が農業に従事。東京都が2009年に行ったアンケートによると、農業・農地を残した方がよいと思う人は85%。農産物供給加え、防災、景観、国土、環境保全、農業体験、農業理解の場として重視されている(『議会と自治体』第290号 東京農民連の武藤昭夫事務局長)。都市農業を通じた地域循環もアグロエコロジーである。

食と農の世界的危機の下、飢餓と食料不安が急速に広がっている。危機感を利用し、かつてのナチスドイツがやったように、排外主義と国家主義を結びつけて勢力を拡大しようという不穏な動きもでている。飢餓も排外主義も、国家主義も破滅への道ではないか。家族農業を支援し、食料自給率向上で食と農の盤石な基盤を築き、持続可能で公正な社会に進むことが求められる。そのための食と農の政策転換は待ったなしだ。

2022年9月27日火曜日

9月27日 国葬反対

     国葬反対国会前集会に15000人

今日から民主主義を取り戻すたたかいのはじまり

(4枚目から当日の政党スピーチの動画があります)

 

    菱山南帆子さんの迫力ある開会挨拶(動画)

    菱山南帆子さんのコール(動画)

   福島瑞穂さんのスピーチ(動画)

志位和夫さんのスピーチ(動画)
近藤昭一さんのスピーチ
(動画)
櫛淵真理さんのスピーチ
(動画)
国葬反対集会初めのコール
舞台前は超満員

2022年9月13日火曜日

消費税インボイス制度導入

消費税インボイス制度

事業者・一千万ともいわれるフリーランスなど甚大影響

 東京商工団体連合会事務局長 大内 朱史 

事業者はもちろん、一千万人ともいわれるフリーランスなど甚大な影響を与えるインボイス制度について、大内朱史さんに寄稿して頂きました。 

母、息子、祖父、父も課税業者に? 

インボイス制度が導入された2023年10月のある家庭の風景。ヤクルト販売をしている母とウーバー配達員のバイトをしている大学生の息子、シルバー人材センターで働く祖父と通りがかかった父の会話。

母「今月からバイト代から消費税を会社が天引きするから5%も引くって言われたんだけど!大学の教材費足りなくなっちゃうじゃない!」、息子「俺も会社からインボイスの番号ないと、運賃10%カットって言われたんだけど、サークルの合宿費用払えないよ!番号って学生でもとれんの?」、祖父「シルバー人材センターでも番号ない人は単価下がりますって言われたぞ!趣味の釣りに行けなくなってしまうぞ」。父「そういえば東京電力から太陽光発電の買い取り価格、番号ないと10%下げるって通知きてたぞ!?」、母・息子・祖父・父「インボイスって何?」。

202310月から消費税のインボイス制度(適確請求書保存方式)の導入が予定され、すでに事前受付がスタートし、テレビやネットのCMも流されてます。この制度は、税務署に消費税の課税業者の選択を届け出し、インボイスの番号の申請をした個人事業主や法人に税務署が13桁の番号を発行します。その番号が記載された領収書・請求書がなければ消費税の経費として認めないという制度です。わかりやすく言うと、「売り上げの少ない中小業者・フリーランスに仕事を出していると、親会社は消費税の負担額が増えてしまう」制度です。現在年間の売り上げが1千万円未満の個人・法人は「免税業者」とされ消費税の申告・納税が免除されています。こうした事業者・フリーランスは全国で500万以上といわれ、こうした人たちが取引から排除されたり、単価引き下げなどの不利益をこうむる危険性が指摘されています。すでに都内でも「ホテルに花を納入している花屋が、ホテルから課税業者になることを求められた」「大学の講師が、インボイス番号のない人には消費税を払わない(10%減額)という通知を受け取った」など、取引先から働きかけを受けています。東京商工リサーチの調査では「免税業者との取引停止が1割」と報道されましたが、「検討中」が半分以上であり、今後こうした「免税業者はずしの動きが強まること」が危惧されると分析しています。

冒頭で紹介した三世代の家族は皆さん「アルバイト」という感覚で仕事をしているかもしれませんが、契約としては「業務請負契約」であり、税法上の区分としては個人事業主になります(労働者的な性格が強いので社会保障の問題も含めて本来は労働者として扱われるべきだと思います)。父・息子・祖父は課税業者ではないために会社・人材センターでは、それぞれに払った分が消費税の経費として認められないために「消費税相当分の10%の値引き」を受けています。

こうしたフリーランスと呼ばれる人たちは、現在400万人とも1000万人ともいわれていますが、今回のインボイス制度はいわゆるフリーランス、中小業者のほかに、太陽光発電の余剰分を電力会社に売電している、アパート・駐車場などを事業者(法人・個人)に貸している人なども関係してきますので、どれくらいの人が影響を受けるか国も国税庁も「わかない」のが現状です。 

負担に耐えられない中小業者・フリーランス 

 売り上げ1千万以下の事業者も消費税の課税業者を選択し、インボイスの登録番号を取得することは可能(冒頭の家族全員可能)ですが、その場合消費税を納める義務が発生します。売り上げ500万円の手間受け大工さんの場合は約20万円の消費税負担となります。一か月分の生活費に相当する税負担が発生することになります。ヤクルト販売をしている母が「バイト代の5%天引きされる」というのは、母が会社から消費税関係の届け出書などを渡され、年末調整の書類などと一緒にサインして会社に提出し、会社の顧問税理士が消費税の申告を代行している設定です。収入の半分経費とみなし残った分に10%かけて消費税の負担額(全体の5%にあたる)が出る計算をしています。来年10月以降には、こうした「よくわからいうちに課税業者にさせられてしまう」人がたくさん出てくるのではないかと思われます。

今、都内民商ではこうした試算運動を行っていますが、「消費税額を計算したら言葉を失った」という報告も多く寄せられています。「もともと消費税を受け取ってるじゃないか」「その分値上げしてもらえばいい」と言われることもありますが、多くの中小業者は大企業の重層下請け構造の最下層に組み込まれおり、価格決定権がなく、親会社の「言い値」で仕事をしています。本来であれば、かかる経費と自分の生活費を確保できる値段に消費税を上乗せして請求するのが商取引のあるべき姿ですが、現実は「この値段でやれないならほかに持っていく」と言われ、泣く泣く受けざるを得ないのが現実です。「お客さんから消費税を預かっている」というのは形式的に過ぎず、自分の生活費を削って消費税を納めているのが現状です。

この間、日本漫画家協会、日本アニメーター・演出協会、SF作家クラブ、日本俳優協会などもインボイス制度に反対を表明していますが、こうした文化・芸術分野のフリーランスの方々は年収が200~400万円程度と非常に低い方が多く、製作・出版社等との関係でも弱い立場に立たされています。フリーランス・中小業者にとっては、「取引先を失うか」、「払えない消費税を負担するか」、「廃業するか」の地獄の選択肢しかありません。

 フリーランス・中小業者への影響がわかっているからこそ、当初は日本商工会議所連合会、日本税理士会連合会、青色申告会連合会などもこぞって反対を表明していました。この制度が導入されれば、フリーランス・中小業者が営業・生活できない国になってしまうことは明らかです。実際にインボイスが導入されているヨーロッパではどんな小さなお店でもインボイスの番号入りのレシートが出され、「非課税業者が駆逐されている」(湖東税理士)のが現状です。

 プライバシー侵害の危険性も

さらに「インボイス制度がプライバシーを侵害する」問題も明らかになりSNS上で話題になっています。すでに、インボイス発行事業者の事前登録申請が始まり、登録した法人名や個人事業主の氏名、登録番号が国税庁の公表サイトで公開されています。任意で登録する住所や屋号、通称、旧姓などの情報も公開の対象です。登録情報の利用規約は「複製、公衆送信、翻訳・変形等の翻案等、自由に利用できます。商用利用も可能」とし、公表サイトの運営方針は事業者情報の「検索機能」や「データダウンロード機能」を提供するとしています。国税庁は全商連に「ニセの登録番号が記載されたインボイスを受け取った場合、消費税の仕入れ税額控除は否認される」と答えながら、「最新の会計ソフトには、インボイス登録事業者かどうか検索できる機能も搭載される」と説明しました。こうしたソフトの開発・提供に登録情報がすでに利用されています。税理士法人などが顧客獲得に活用することも可能です。

 しかし、登録された事業者の情報は税制の変更によるものです。営利目的の企業に、制約なく利用させる政府の責任は重大です。受け取ったインボイスの登録番号で検索すれば、芸名やペンネームで仕事をしている人の「本名」を調べることもできます。それを公表される恐れを指摘すると、国税庁は「悪用されることは想定してない」と答えるだけでした。いったん登録し、公表されれば、その情報を守るすべはありません。日本漫画家協会は74日、「個人情報保護への懸念を抱く漫画家も少なからず存在する」と指摘し、現行のインボイス制度に反対すると表明しました。登録には個人番号(マイナンバー)の記載が必須とされていることも問題です。

 インボイスの狙いと廃止の展望 

 商売をつぶし、プライバシー迄危険にさらすインボイス制度ですが、なぜ政府・財務省はインボイス制度を導入しようとしているのかといえば、消費税のさらなる増税のための環境整備と納税者の管理・徴税強化のためにほかなりません。一足早く導入している韓国では複写式の領収書を発行し、自分と相手、税務署に一枚ずつ発行し、すべての商取引を税務署が把握しています(現在は電子化でペーパーレス化が進んでいる)。税金の申告期になると納める税額が記入された申告書が送られてきて「異議がなければ署名して提出するだけ」になっています。これは「自分の税額は自分で計算して納める」という近代税制の大原則を真っ向から否定するものです。日本の目指す消費税制の在り方の見本ともいわれています。「やましいことがなければいいのではないか」という人もいます。確かに税法等、基準となるものはありますが、税務署は多く税金を取る立場から経費を否認しようとし、納税者は税額を減らすために経費を認めさせようとします。立場が違うのですから自分に有利に解釈しようとするのは当然です。日常的な税務調査(犯罪強制調査ではない一般のもの)でも、そうした主張の違いは発生し、折り合わなければ最終的には裁判で決着するのが法治国家・民主主義国家の税制の基本であり、納税者の権利を守る制度が保障されています。インボイス制度の行き着く先はこうした先人が獲得してきた憲法が保障する国民の権利・制度を否定しかねません。

 今、この危険な制度に対して我々だけでなく、今までつながりがなかった人々からも反対の声があっています。フリーライターの方がネット上で始めた「インボイス中止を求める電子署名」は開始一週間で3万を超え、現在8万を超えています。

冒頭の祖父が仕事をしているシルバー人材センターも、会員である高齢者が消費税の課税事業者にならなければ、支払った代金が経費として認められず、シルバー人材センターが高額な消費税を負担しなければならなくなります。シルバー人材センターの新たな消費税負担が全国で年間約200億円、1センター当たり約1500万円に上ることが、日本共産党の宮本徹衆議院議員の国会質問で明らかになりました。熊本のあるセンターはホームページ上で「運営が成り立たなくなる」とインボイスの中止を求める意見を掲載していましたが(現在は削除)、全国で心配の声が上がっています。

地方議会からも、地域経済を根底から破壊しかねないと心配の声が上がり、インボイス中止・延期を求める意見書が全国各地の自治体の議会で採択される動きが広がっています。今年1月から7月に国に提出された意見書は400を超えています。東京でも小金井市、奥多摩町、西東京市で採択されています。

 こうした声は、野党共闘の前進もあり、国会議員も動かしています。先の国会には立憲民主、共産、れいわ、社民が共同で「消費税減税、インボイス中止」の法案を提出し継続審議となっています。私たちの国会議員要請行動では与党議員の中にも「インボイスは中小業者には負担が重い」と話す議員もいます。7月末までに税務署に届け出を出した事業者は見込まれる対象の7%にとどまっています。今後の世論・運動で実施延期・中止を勝ち取る展望は十分あります。全国民的な運動でインボイス制度の中止・廃止を勝ちとろうではありませんか。 

2022年7月25日月曜日

 日本を再び「戦場」にしないために


 
ジャーナリスト 布施祐仁 

 布施祐仁さんが5月に出版された「日米同盟・最後のリスク」が注目を集めています。ロシアと同様に中国が台湾に侵攻するのではないかとの懸念が生まれ、また、岸田首相や自民党は、台湾有事を口実に軍備増強や敵基地攻撃能力保有を進めようとしています。

アジアの状況をどう分析し対応すべきか、布施さんの了解も得て、本の6章を中心に、要点をご紹介します。ご購読も呼びかけます。

 中国が近い将来、台湾に侵攻する可能性は低い 

 中国が「レッドライン」としているのは台湾の「独立」です。「反国家分裂法」は、「台湾の中国からの分離をもたらしかねない重大な事変が発生したとき、または平和統一の可能性が完全に失われたとき」には、「非平和的方式」で領土保全を図ることができると定めています。

 台湾海峡の緊張が高まったのは、党綱領に「台湾共和国の建国」を掲げる民進党の蔡英文氏が2016年に総統になってからでした。ただ、蔡氏は「(公式に)独立国家を宣言する必要はない」「現状維持が方針だ。それが中国に対する非常に友好的な意思表示であると思う」と表明しています。

 アメリカは1978年の中国との国交樹立の際に、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを認め、中国は一つで、台湾は中国の一部であるとの中国の立場に異論を唱えないと約束しました。アメリカは現在も、この立場を変えていません。

 これに加えて、2つの理由で中国が近い将来台湾への武力侵攻を行う可能性は高くないと考えています。第一に、戦争になった場合の経済的な被害は甚大です。中国で共産党の一党支配を支えてきたのは、前例のない高度経済成長です。支えてきたのは、海外からの投資と国際貿易。輸出相手国の第一位はアメリカ、輸出総額の17.1%。以下、日本4.9%、韓国4.4%、ベトナム4.1%、ドイツ3.4%。いずれもアメリカの同盟国または友好国。中国が台湾に侵攻すれば、制裁で経済が致命的な打撃を受けるのは必至です。

 第二の理由は、中国が台湾を武力で統一するのは現実的に困難だからです。米軍のミリー統合参謀本部議長は2021年上院の公聴会で「中国が台湾全体を掌握する軍事作戦を遂行するだけの本当の能力を持つまでには、まだ道のりは長い」と証言しています。

台湾の202111月の世論調査では、中国による台湾侵攻がいずれは起きると思うかとの問いに、「そう思わない」64%、「そう思う」28%。

当の台湾の人々が有事は切迫していないと考えているのに、日本では政治家やメディアが、切迫しているかのように大騒ぎしています。危機を強調し、日米同盟強化、軍事増強を推し進める人たちがいるのです。

日本の軍事費をGDP2%に倍増することはアメリカの要求でもあります。 

アメリカと中国が戦争する可能性は自然として存在 

アメリカも中国も、一方で戦争を望まないとしながらも、軍事的に優位に立つための軍拡を続けようとしています。

ミリー統合参謀本部議長も「中国は今世紀半ばまでに米国より軍事的な優位性をもつ考えを公言している。強力な経済力をもち、徹底的に資源を投資するつもりだ。米国は平和と抑止を続けるために軍事的な優位性を維持しなければならない」(「朝日」202178日)と語っています。

ジョセフ・ナイ氏は、米中の間の経済などでの相互依存関係があり戦争は考えにくいとした上で、「同時に計算違いの可能性は常にあり、また『夢遊病者のように』破滅へと歩みを進めてしまう危険がある」と警鐘をならしています。

日本は「抑止力」強化でなく「仲介外交」の促進を 

 日米同盟は、「抑止力」という要素とともに、「アメリカの戦争に巻き込まれる」という大きなリスクがあります。

 日本は戦後、アジアは中東でアメリカが行ってきた戦争に基地を提供し協力してきましたが、直接的に戦争に巻き込まれることはありませんでした。それは、アメリカの交戦国に、海を越えて日本を攻撃する軍事力がなかったからです。しかし、米中戦争が起きた場合、通常弾頭のミサイル打ち合いでも、日本各地に甚大な被害が出ます。核戦争にエスカレートすれば、日本は文字通り焦土となります。

 日米両政府は、日本への中距離ミサイル配備など日米の軍事力を強化することで、中国の台湾侵攻を「抑止」しようとしています。しかし、それは中国の反発と軍拡を招き、地域の緊張を高めるでしょう。 

アセアンこそが「仲介外交」の最高の手本 

東南アジア諸国連合(アセアン)は、20196月に開催した首脳会議で、インド太平洋構想を採択、「対抗ではなく、対話と協力のためのインド太平洋地域」をめざすと宣言。「利害が競合する(米中の)戦略的環境の中で、アセアンは誠実な仲介者であり続ける必要がある」と強調。

アセアンは、1967年に反共色彩の強い地域協力機構として出発。ベトナム戦争終結後る東南アジア友好協力条約(TAC)を締結。地域の協力機構として発展します。に、平和共存の道を選択。1976年、主権尊重、内政不干渉、紛争の平和的解決を原則とす

紛争を予防するためには、域外の国々とも対話を通じて信頼醸成を促進するとして、1994年安全保障対話の枠組み「アセアン地域フォーラム」を立ち上げ、アメリカ、ロシア、中国、インドなどを招待。  

1995年には、東南アジア非核兵器地帯条約を結びました。

1988年、南紗諸島の領有権めぐり、中国海軍とベトナム海軍が衝突、ベトナム軍兵士64人が死亡。1992年に中国が南シナ海の島嶼の領有権明記した「領海法」を制定すると、アセアンは「南シナ海に関するアセアン宣言」を発表し、平和的解決を求めました。2002年、アセアンと中国の間で「南シナ海に関する関係国の行動宣言」を策定、領有権問題の平和的解決と敵対行動の自制、軍関係者の相互交流、環境調査協力を進めることで合意。2003年には、TACに中国が域外国として初めて加入します。

201511月、「アセアン共同体」の設立を宣言。ホスト国のマレーシアのナジブ首相は「東南アジアはかつてアジアの『バルカン半島』として紛争の発信源だったが、いまや紛争の平和的解決の発信源のひとつに浮上した」と表明しています。

 アメリカの同盟国のフィリピンは 

 アセアンにはアメリカと相互防衛条約を結んでいるフィリピンも加盟。フィリピンのロレンザナ国防相は2019年「フィリピンはどの国とも対立しておらず、今後、どの国とも戦わない」「私が心配しているのは、(アメリカの)保証がないことではない。われわれが求めても欲してもいない戦争に巻き込まれることだ」と強調しています。 

安全保障の主流は軍事同盟から地域安全保障機構にシフト 

 東南アジアにも軍事同盟の「東南アジア条約機構」(セントー)がありましたが、東南アジア友好条約を締結した1977年に解散しています。

 南北アメリカ大陸にも、共産主義封じ込めを目的とする「米州機構」が1948年に結成。2011年に「アメリカから自立した地域統合」として「ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体」が中南米のすべての国が参加して発足。2014年に、ラテンアメリカ・カリブ地域を「平和地帯」とする宣言文書を採択しています。 

日本とアジアの平和な未来のための5つの提言 

 私は、日本も東アジア地域の対話を促進し、紛争を予防する外交をおおいに展開すべきだと考えています。そのために5つの提言をします。

①米中の衝突を防ぎ、覇権なきアジアを目指す仲介外交を

何より重要なのが、米中の軍事衝突を予防するための仲介外交です。米中双方に対して、軍事的緊張を高めるような行動を互いに自制するよう求めていくべきです。

特に中国に対しては、力で一方的に現状を変更するような行動は慎むよぅ、粘り強く求めていく必要があります。もちろん、日本も、アメリカと一緒に軍事的緊張を高めるような行動は自制しなければなりません。

日本と中国を拘束する日中平和友好条約(1978年締結)は、第1条で日中の恒久的な平和友好関係を発展させると確認しています。

私が特に重要と考えているのが第2条です。「両締約国は、そのいずれも、アジア・太平洋地域においても又は他のいずれの地域においても覇権を求めるべきではなく、また、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国または国の集団による試みにも反対することを表明する」。

米中が国交を樹立した際の共同コミュニケ(1978年)にも反覇権のまったく同じ文章が盛り込まれています。日本は、中国にも、アメリカにも覇権を追求しないよう求めなければなりません。

②尖閣での衝突回避を

201411月に日中両国政府が「双方は、尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していると認識し、対話と協議を通じて、情勢の悪化を防ぐとともに、危機管理メカニズムを構築し、不測の事態の発生を回避することで意見の一致をみた」と確認しています。領海警備を続けながら、対話と協議を粘り強く行っていくことが重要です。

③安全保障対話のテーブル 

 北東アジアには多国間で話し合う枠組みが存在しません。北朝鮮の核問題を話し合う6カ国協議では、2005年に「6者は、北東アジア地域における安全保障面の協力を促進するための方策について探求していくことで合意した」と確認。こうした安全保障対話のテーブルの定期開催を日本が提唱するのもひとつのアイデアです。

④核・ミサイルの軍備管理の枠組みを

核軍縮と共に重要なのが、核兵器使用の可能性を低減する努力です。そのひとつが核兵器先制不使用政策です。中国はすでにこの政策を採用、アメリカが採用すれば、核兵器をめぐる米中の緊張は緩和されます。バイデン氏が副大統だったオバマ政権のとき、核兵器の先制不使用政策の採用を検討しましたが、日本政府が反対しました。アメリカが同政策を採用するよう背中を押すべきです。

⑤北東アジア非核兵器地帯の提唱を

アメリカと北朝鮮は2018年の史上初の首脳会談で、朝鮮半島の非核化と恒久的な平和体制の構築をめざすことで合意。「北東アジア非核兵器地帯条約」は、非核化の対象地域を朝鮮半島から北東アジアに広げるものです。

 日本と韓国、北朝鮮の3カ国が「非核兵器地帯」となり、核兵器の開発、保有、実験、配備などを禁止。さらに核保有国のアメリカ、中国、ロシアに対しても「非核兵器地帯」内での核兵器の使用と威嚇を禁止します。 

このような外交を展開していけば、米中間の緊張を緩和し、日米同盟が内包する「日本がアメリカの戦争に巻き込まれるリスク」を低減できます。現在の日米同盟下で実行するのは容易ではありません。特に、アメリカ政府から強い圧力をかけられることもあるでしょう。これを克服できるかはひとえに国民世論にかかっています。国民の強い意志があれば、一歩一歩前に進むことはできると私は信じています。