2026年4月24日金曜日

東京革新懇総会川田忠明氏記念講演 トランプ追随の大軍拡では日本の安全守れない!

 トランプ追随の大軍拡では日本の安全は守れない 

 ―イラン攻撃と世界秩序―

 


日本平和委員会常任理事 

    川田忠明さん

 

315日の東京革新懇総会の川田忠明さん講演要旨を紹介します。情勢と切り結び、軍拡支持の人々と対話のヒントなど大好評。多くの方に広げて頂くことを呼びかけます。

 

トランプ政権のもとでの歴史的岐路

トランプ政権の登場により、平和の世界秩序を守り再興していくのか、覇権主義が跋扈する世界を許すのか問われる歴史的岐路にある。

アメリカの基本戦略である国家安全保障戦略が昨年末に発表された。西半球は、敵対的な外国勢力の侵入、重要な港湾など所有を許さない、重要な供給網を支える地域にするとしている。アメリカが19世紀にヨーロッパとアメリカ大陸は干渉しあわないという政策のモンロー主義をもじりドンロー主義と言われる。干渉はアメリカ大陸にとどまらない。イランについては、イスラエルの安全を守ることはアメリカの核心的利益とし、実際、攻撃にふみきった。アメリカの支配層の中にはユダヤロビーという勢力があり、トランプ支持基盤に福音派というキリスト原理主義がある。

これは戦後のアメリカの政策の大転換といわれる。アメリカは様々な軍事干渉をやってきたが、民主主義や人権、自由を建前にしてきた。トランプは自分たちにとって何がいいかで判断すると言っている。アメリカ外交問題評議会という権威ある団体の名誉会長リチャード・ハースは、米ソの対立がなくなって以来の最大の方向転換と言っている。

同盟国も、これまで法の支配や自由と言うアメリカの口実を支持してきたが、イラン攻撃では、カナダのカーニー首相、フランス・マクロン大統領も国際法の枠外で容認できないとし、イギリスのスターマー首相はイランへの作戦には参加しないと表明。これに対し、高市首相は、法的な評価は出来ないと国連憲章違反を批判できないのは、まことに恥ずべきことだ。

 

平和秩序か覇権と戦争の世界か

ヨーロッパの国々ではアメリカが頼りにならないなら自分たちで軍拡やると危険な方向が出ている。これは、実際には戦争を準備するものだし、国民負担も増えるし、未来のある道ではない。それに対してもう一つの方向がある。国連憲章違反があればそれを守れと団結するということだ。グローバルサウスと言われる第二次世界大戦後に植民地から独立した国々、中小の国々は、共通のルールがあって自分たちは守られてきたという意識があるから、ヨーロッパとかカナダ、日本を含めて団結できれば新しい世界秩序が可能だと思う。その選択を左右するのは、世界の世論と運動だ。平和の秩序か、覇権と戦争の世界か―正面から問われる歴史的局面にある。

私も日本平和大会でご一緒したことがある元フィリピン下院議員のウォルデン・ベリョさんは「グローバルサウスにとっては好機でもあります。今は国際秩序の過渡期です。国際法に基づく秩序が崩壊しているというのは欧米のプロパガンダで、実際は米国が君臨してきた秩序が何か別のものに変わるということです。グローバルサウスは国連で多数派です。困っているのはむしろ、日本や韓国、西欧でしょう。彼らは批判の声を上げることができない。わずかな批判で米国の支援を失うことになるからです」(「朝日」2026.2.16)。

今の状況は重大な危険はあるが、新しい可能性あることを私たちは見ていかなければならない。

 

帝国主義時代への逆行か世界の本流

 一部のメディアや専門家には、帝国主義時代に逆行するかのような論調があるが、今の世界の本流を見れば19世紀と根本的に違うことが分かる。一例が主要20カ国首脳会議G20だ。アフリカ連合、EUヨーロッパ連合もふくめ、5大陸の主要な国々が入っている。ここの宣言は満場一致で採択される。宣言の一部を引用すると、国際法、国連憲章および紛争の平和的解決の原則に従って行動する、領土取得を追及するための武力による威嚇または武力の行使は慎まなければならないとしている。パレスチナ占領地およびウクライナにおける公正で包括的かつ永続的な平和に向けて取り組むと言っている。ロシアも反対していない。国連憲章の立場には誰も反対できない。

 世界の本流の力が発揮されたのが核兵器禁止条約だ。署名・批准した国は国連加盟国193の過半数を超える99カ国。禁止条約を作り上げたのは大国抜きの集団の力だ。その集団の力を発揮していくことが、トランプやプーチンの横暴を抑えていく一番の力だと思う。

80回国連総会で、赤道ギニア政府代表は「核兵器禁止条約は国際法と国連憲章の原則に合致し、国際システムの新たな規範的、倫理的、人道的な柱として中心的な役割を担っている」と発言。昨年の締約国会議でも、タイ代表は「禁止条約は単なる条約以上のものとなった。核兵器の断固たる拒否であるとともに、集団行動の力の証だ」と述べた。世界を前に動かすことができるとの自信に満ちている。

 

日本の安全に何が必要か

 次に、高市政権が進める大軍拡で日本を守れるのか、軍備=「抑止力」を増強して効果があったのか、と問いたい。

2015年に集団的自衛権の行使容認を閣議決定し安保法制を強行。この年の軍事費は約5兆円。23年に安保三文書を閣議決定し大幅な軍拡開始。この年は約7兆円。昨年度は8.7兆円、補正予算含めると9.5兆円。15年から当初予算だけで66兆円になる。

世論調査では、日本を巻き込んだ戦争の可能性があるという人は2262%。1550%から増大。抑止力は戦争を起こさないためのものだと政府は言ってきたが、事実の問題として国民の不安は拡大。防衛白書でも、時をへるごとに日本の安全保障は一層厳しさを増していると述べている。政府のやっていることは、まさにマッチポンプ状態だ。

宮城の革新懇シンポで志位さんが紹介しているが、何人かの専門家の研究では、1993年から2007年までの144カ国の軍事費のGDP比を調べたところ、他国の軍事費の増に対応して軍事費を増やすと際限のない悪循環に陥ることが明らかになっている。

もう一つは、1979年のカナダ・ブリティッシュコロンビア大学のマイケル・ウォレス教授の論文。軍拡競争を先行させる紛争の国々は28件中23件、82%が戦争までエスカレートした。軍拡競争を先行させなかった紛争は71件中戦争になったのは34%にとどまったとしている。1997年にオーストラリア大学平和研究センターのスーザン・サンプル氏が再度、新しい資料で5年かけ調べた結果、同様の結果だったと報告している。

世論調査では、軍事費増支持は多数だが、そうした人々でも納得できない例を示すことが大事だ。その一つが、アメリカの代理で軍事行動を行うことだ。アメリカ国家安全保障戦略では、第一列島線を防衛するために日本や韓国の軍事費を増やせとしている。日本の自衛のためではない。しかも、ヘグセス国防長官は、金出すだけでなく重要なのは「行動だ」としている。

日本の自衛でなくアメリカの要求が出発点というのも問題だ。元自衛艦隊司令官の香田洋二氏は「これだけの軍事費って日本を守るために積み上げたものなんだろうか」「砂糖の山にたかるアリ、金が出たものは何でも買っちゃう状況になっている」と表明(「朝日」 221217日)。

 アメリカからの武器の買い方も問題だ。アメリカの「対外有償軍事援助」は、値段も納期もアメリカ次第だ。会計検査院調査では、11400億円分が金を払っているのに5年経ても品物が来ていない。

 政府は「抑止力」が大事としか言わないが、「抑止力」が失敗するケースから話を始めることも大事だ。「新外交イニシャティブ」が2022年に政策提言を発表した。軍事力による抑止は相手に対抗策を招き、無限の軍拡競争をもたらすとともに、抑止が破綻すれば、増強した対抗手段によってより破滅的な結果をもたらすことになるとしている。

これは第3回核兵器禁止条約締約国会議でも議論され、会議の報告書は「核抑止が失敗する可能性があるという事実は議論の余地がない」と、ここを共通の土台にしている。実際、核戦争一歩手前まで行ったことは沢山事例がある。

 非核三原則の見直しの危険についても述べたい。アメリカの「核の傘」を有効にするには、核持ち込みを認めるべきというのが高市さんの持論だ。北朝鮮がアメリカに大陸間弾道ミサイルを撃つと着弾まで24分。その前に日本近くから撃つ方がよいというのはアメリカの考えであり、そうなれば日本はアメリカの核攻撃の前線基地になる。それらの基地は核攻撃の標的になる。

 日米安保条約が大事と思っている人は多数だが、最近の世論調査では、「いざという時に米国は本気で日本を守ってくれない」と思う人が8割近くいる。トランプ政権下で、私達の運動にとって重要な条件が広がっている。

 

脅しから「安心供与」へ

脅威は三つの要素で成り立つ。攻撃する能力(軍事力)、攻撃する意思(国家指導部の認識)、攻撃する条件(国内外の情勢、国民の支持)。兵器があるだけでは脅威にならない。攻撃する意思は対話・外交が無ければ把握できない。日本政府は、北朝鮮は「これまで以上に深刻かつ差し迫った脅威」(防衛白書)としているが、対話ルートがない。中国は、軍事安全保障に関する意思決定プロセスの不透明だと言っているが、首脳会談すらできず、十分な対話がない。

 「抑止」は英語ではdeterrence、語源はラテン語の恐怖、相手に恐怖を与えることが本質だ。先に触れた「新外交イニシャティブ」は「戦争を確実に防ぐためには、『抑止』とともに、相手が『戦争してでも守るべき利益』を脅かさないことによって戦争の動機をなくす『安心供与』が不可欠である。しかし、日本においては、専ら抑止の観点からのみ安全保障を論じる傾向が強く、安心供与の概念はほとんど認識されてない」(202211月)と延べている。重要なポイントだ。

 

戦争は日本の破滅、対話の糸口は?

「安心の供与」という点では日本は大きな実績がある。憲法9条の国だし専守防衛と言ってきた、ヒロシマ・ナガサキのある国だ。これらを最大限活用すれば軍事費を増やすより遥かに効果の高い「安心供与」の政策を進めることが出来る。この「新外交イニシャティブ」は「抑止」を否定せず、「抑止と共に」と書いてあるところが重要だ。大軍拡を許さない対話のヒントになる。戦争は日本の場合は破滅的だ。中国は輸入も輸出も日本の最大の貿易相手国で約20%を占める。日本の海外物流の99.6%が海上輸送。原発密集地帯でもある。ここで核兵器が使われたら破滅以外にない。これを避けるということが、「抑止力」を肯定する人とも対話の糸口となる。

 二つ目は、軍事の否定から入るのでなく、「外交が足りない」から入る。外交がもっと必要だという指摘は、日米安保条約を肯定する人とも対話が可能になる。

 三つ目は、今の政府のやり方は、アメリカの要求が出発点になっているという点だ。軍事費を増やした方がいいという人でも、「日本を守る」ためでなく、アメリカのために、私達の税金が使われることには、納得がいかないだろう。

 

逆流を超える大きな可能性

最後に、今日の逆流を乗り越える大きな可能性があるということを述べたい。「戦争する国家づくり」の突風が吹き水面が波立っているが、その奥底に平和のゆるぎない底流がある。世論調査でも9条が日本の平和に役立っているは8割(NHK 2025年)。根底には世界的もまれな、国民的な戦争への拒否感がある。世界的規模の世界価値観世論調査では、「戦争が起きたら国のために戦いますか」との問いに、日本は13.2%(「戦わない」48.6%、「わからない」38%)、オランダ28.4%、アメリカ、ドイツ、韓国はだいたい57割近く。世界を見ると89割も珍しくない。日本は断トツで世界最低だ。なぜこれほど戦争が嫌いか。その土台に9条がある。読んだことがない人を含めて9条は何となく知っている。それは平和運動があり、労働組合や女性・青年の運動があり、民主教育の運動があったから。これが底流となっている。ここにゆるがぬ確信をもつことが大事ではないか。

 国会の今の力関係は危険だが、それを許さない根本の力は、国民多数の意思だ。市民と野党の共闘は困難な状況だが、新たな国民的共同の可能性が生まれている。憲法9条をはじめ、武器輸出、基地、沖縄、核兵器など様々な課題で、垣根を超えた共同が生まれつつある。そういう意味では革新懇の出番と言っていい。みなさん方の活動が更なる飛躍を遂げることを期待して私の話とさせて頂きます。               (文責 東京革新懇)

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