2026年3月2日月曜日

 自治体の使命を投げだし暴走する小池都政

政研究家 末延渥史 

 小池都政は「稼ぐ東京」を掲げ都内の再開発を急速に進め、環境の悪化、都民生活の破壊が進み、庶民が住めない街になってきています。小池都政の現状について寄稿して頂きました。

 2月23日、東京では「春一番」が吹き、東京都内で観測史上はじめて、2月に「夏日」を迎え、全国でも今年最多の16地点で「夏日」が観測されています。

 このような異常気象は日本列島全体で常態化しており、スキー場のある内陸・山間部で積雪が少なく、その一方で、日本海岸沿いの平野部が大豪雪に見舞われ、物流トラックの立ち往生が発生。また、「過去に経験をしたことがない」という風水害が相次いで発生。2018年の西日本豪雨、2019年の台風19号災害、昨年9月の東京を襲った記録的豪雨など甚大な被害がもたらされています。

 これらの現象は「地球温暖化」によるものですが、この100年の間の世界の平均年間気温が0.7度、日本では1.2度。さらに東京では全国の3倍にあたる3.2度上昇しており、2023年には気温が30度を超える真夏日が過去最高の年間90日に達し、熱中症搬送数(5月~9月)は8118人、熱中症死亡者(同・23区)は263人にも達しているのです。

 また、2020東京オリンピックでは17日の大会期間中、「日常生活における熱中症予防指針」による危険(「高齢者においては安静状態でも(熱中症)が発生する危険性が高い」)が9日、厳重警戒が6日、警戒が2日という安全な日が一日もない危険と背中合わせの状態が発生していました。

 SDGs、成長管理への転換 

 このような地球温暖化とそれに起因する異常気象は何によってもたらされているのか。その元凶は、産業革命を契機とする工業化社会、近代都市のもとで使用される化石燃料から排出される二酸化炭素(CO2)を主因とする温暖化物質の急増にあります。

 これに対して国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)が日本が議長国となった1994年の京都会議で温暖化物質の削減を掲げた「京都議定書」を策定。さらに二酸化炭素を含む温室効果ガスの「排出量」と「吸収量」を均衡させるカーボンニュートラルを提起。2015年に国連が持続可能な社会づくり=SDGsを策定するなどの温暖化阻止の取り組みが世界的規模ですすめられています。

 こうしたもとで東京都と並び世界都市とされるロンドンやパリでは超高層ビル開発を規制。また、ロンドン市は都市の成長を管理する「ロンドンプラン」を策定、ロンドンオリンピックにあたって高層ビルを低層の住宅に建て替えるなど持続可能な社会づくり、都市の成長管理政策を展開しています。

 一方、日本では歴代自民党政権が「経済との調和」を第1原則として京都議定書の実現に背を向けつづけ、二酸化炭素の排出削減の方策の第1に原発を掲げて原発再稼働に固執しつづけています。

 また、東京都では石原都政から小池都政に継承されてきた都市再生・東京大改造による超高層ビル再開発が爆走で加速させられ、2000年からの四半世紀の間に高さ100mを超える超高層ビルが441棟も建てられ、その延床面積は千代田区・港区・中央区の行政面積を超える42・3haにも達し、膨大な二酸化炭素を排出。深刻な温暖化とヒートアイランド現象をもたらしているのです。

 東京の二酸化炭素排出量を見ると、大規模なオフィスビルや超高層マンションなどの業務・家庭部門が東京の二酸化炭素排出量を増加させ地球的規模での温暖化を加速させているのです。

 温暖化防止は化石燃料から再生エネルギーへの転換を図ることは当然ですが、東京の場合、なによりも・東京大改造路線を転換し、都市の成長をコントロールする政策への転換が不可欠です。

 ところが小池都知事は、地球温暖化対策を言い訳程度の対処療法的なものに止め、根本対策である二酸化炭素発生源の対策については何らの方策をとらないばかりか、官邸主導・トップダウンの国家戦略特区のなどの東京大改造=「稼ぐ都市」を推進。かつて都民の台所と呼ばれた筑地市場を廃止しそこに統合型リゾート施設(IR)の要件を満たした超高層ビルによる再開発や新宿駅・品川駅周辺、日比谷公園を取りこんだ再開発、神宮外苑地区再開発などの大規模再開発、さらには北区赤羽地区や私鉄沿線での同時多発的な再開発、全国的に知られた板橋区ハッピーロード大山商店街を分断し超高層ビルを建設する都市計画道路特定整備路線、2兆7625億円もの事業費の外かく環状道路建設などを加速させているのです。

  困窮を重ねる都民生活 

 こうした大企業・多国籍企業と一握りの富裕層のための「稼ぐ都市」・東京大改造のもとで環境破壊だけでなく、貧困の増大と格差の拡大、都民生活破壊は止まるところを知りません。こうしたもとで小池都知事は現在、開催されている都議会2026年第1回定例会に一般会計が5年連続過去最高額の9兆6530億円、特別会計を加えた全会計ではスイスの国家予算を上まわる18兆6849億円に達する巨額の2026年度予算案を提案しました。

 そして小池都知事はこの予算案につい、記者会見や都議会の施政方針演説でも、物価高騰に苦しむ都民に寄りそうことも、貧困という言葉も格差という言葉も発することはありませんでした。その一方で小池都知事は「世界から選ばれる都市へと進化を続けて国際都市・東京のプレゼンス」を「一層高めていく」という、「稼ぐ都市」まっしぐらの決意を表明したのです。

 実際に予算案を見ると、都民世論を反映した若干の予算が見られるものの、都民の家計を直接潤すための物価高騰対策予算、国民健康保険や介護負担の軽減のための予算は見当たらず、切実な都民要求である都営住宅の新規建設、29年間も据え置かれている心身障害者やひとり親家庭への福祉手当の増額、9年間据え置かれている商店街振興予算の拡充、小学校の30人学級への移行と中学全学年での35人学級などは冷たく拒絶され、昨年度、1万3162人もの待機児(国発表)が残された保育所待機児童解消区市町村支援事業はスタート時には220億円あったものが来年度は1割の23億円にまで後退させられています。

 その一方で、東京大改造には惜しげもなく莫大な予算がつぎ込まれ、築地市場跡地や新宿駅前、品川駅周辺などの再開発には1500億円(2027年度以降も含む)、住民や商店街の反対で事業の進捗が見られない特定整備路線に建設局だけで370億円もの予算を計上。さらに、巨大クルーズ船のための総事業費650億円の臨海青海地区のふ頭延長工事にもしっかりと予算をつけ、無駄遣いの都庁プロジェクションマッピングに15億円と大盤振る舞いです。地方自治法が定める「住民福祉の増進」という使命を負う自治体の姿とはほど遠い都政です。

2026年1月30日金曜日

「だまし討ち解散による『クーデター』を許すな」五十嵐仁

 だまし討ち解散による「クーデター」を許すな

法政大学名誉教授 五十嵐 仁

 高市首相による突然の衆議院解散のもとで、東京革新懇代表世話人の五十嵐仁さんに緊急に寄稿して頂きました。 

 大義も何もあったものではありません。高市早苗首相はやらないと言っていたではありませんか。解散など考えている「暇」はないと。

 本人はだますつもりなどなかったのかもしれません。しかし、政治には結果責任が伴います。この結果に対して、高市首相は責任を取ることができるのでしょうか。それが無理だというのであれば、私たちの一票で責任を取らせるしかありません。首相官邸から追い出すことによって。

 自民党による高市総裁の選出、その後の自公連立から自維連立への組み換え、政権合意による政策の大転換、そして突然の衆院解散という一連の過程は、自民党内極右勢力と極右政党である維新の会による「権力の簒奪」であり、静かなる「クーデター」でした。

これによって自民党は変質し、貧困と戦争準備という「貧国強兵」路線に転換してきました。国民に気づかれないうちに、この「クーデター」を「追認」させ、「国論を二分するような大胆な政策、改革」に向けての「白紙委任状」を手に入れようとするところに、今回の衆院解散の本当の狙いがあります。日本の命運を左右する選択にきっぱりと「ノー」を突き付けることで、このようなよこしまな狙いを打ち砕かなければなりません。 

自己都合による大義なき解散 

 「自分のことしか考えていないんでしょうね、高市さんは」と思いました。突然の解散を知ったときです。このような時期に、このように慌てて、こんなやり方で、どうして解散するのでしょうか。

 連立の組み換えへの判断を問うのであれば、組み換え直後の臨時国会での解散がスジでしょう。なぜ、3カ月も経った通常国会冒頭での解散なのでしょうか。予算の年度内成立は遅れ、雪国での選挙は困難を極め、18歳の受験生は試験の準備に追われ、地方自治体も新年度に向けての業務に忙殺されているというのに。このような時期にどうして選挙なのか、納得できる国民はいないでしょう。

 なぜ、これほど急いで実施するのかも理解できません。選挙は2月8日投票となり、解散から16日しかありません。戦後最短の日程です。2月15日投票でも問題はなかったのに、どうしてこんなに急いで実施するのでしょうか。候補者や自治体などの関係者は大いに迷惑しています。できるだけ支障のない日程を選んで、関係者の負担を減らそうという配慮はなかったのでしょうか。

 なぜ、こんなやり方をとったのかというのも大きな疑問です。解散を検討しているという記事が出たのは『読売新聞』でした。自民党の鈴木俊一幹事長にも相談しないでリークし、世論の反応を見たのでしょう。次第に解散風は強まりましたが、1月19日の記者会見まで正式な発表はありませんでした。10日間もの間、きちんとした説明なしに既成事実化がすすめられたのです。

 解散は国民に選ばれた代表の首を切るということですから、乱用は許されません。まして、前回の総選挙から1年3カ月しか経っていないのです。7条解散は「内閣の助言と承認」によって天皇が実施するもので、主体は「内閣」です。「首相の専権事項」というのは悪しき慣例にすぎず、憲法違反の無法行為です。

 本来であればやるべきではない、できないはずの解散を、高市首相は強行しました。内閣支持率の高いうちなら勝てるという打算で野党などの準備が整わないうちに奇襲攻撃をかけたのです。世界平和統一家庭連合(統一協会)との癒着などでの追及を避けたいという魂胆もあったでしょう。「台湾有事」発言への中国による対抗措置や円安・長期国債の金利上昇などで経済への悪影響が出る前に勝負をかけようという計算も働いたにちがいありません。

 しかし、どれも高市首相個人の思惑に基づく自分勝手な理由です。自己都合を最優先したもので、「党利党略」以前の「個利個略」、私利私欲に基づく権力の乱用ではありませんか。このような大儀なき自分勝手なだまし討ち解散を認めて良いのでしょうか。やる必要のない解散の強行自体が、総選挙の大きな争点として問われることになりました。 

政治腐敗・統一協会との癒着への無反省 

一連のプロセスを経て進行してきた「クーデター」の背景には、自民党政治の深刻な行き詰まりがあります。これまでのやり方では支配を維持することができず、新たに極右勢力に権力をゆだねることで、この行き詰まりを打開しようとしているのです。

国会での勢力は衆院で過半数ぎりぎり、参院では過半数を下回っていますから、高市首相にはやりたいことができないとの不満があったでしょう。このような行き詰まりに追い込まれた最大の要因は裏金事件をはじめとした「政治とカネ」の問題や統一協会との癒着などの政治腐敗にありました。しかし、高市首相はこれらの不祥事を「悪いこと」とは考えておらず、真相の解明や再発防止に取り組もうとしていません。自身にも政治資金についての疑惑があります。

裏金問題については、旧安倍派5人衆の1人で統一協会との癒着でも名前が挙がっていた萩生田光一元政調会長を幹事長代行に就けるなど、旧安倍派議員の復権に手を貸してきました。今回は裏金議員のうち43人の公認を決め、重複立候補も認めました。非公認で落選し、「みそぎ」が済んでいない下村博文元文科相まで公認しています。企業・団体献金の廃止はもとより、その規制強化についても公明党案を拒んで連立を解消されるなど後ろ向きのままです。

統一協会との癒着でも、新たな事実が明らかになりました。昨年末に韓国の新聞で報道された「TM(トウルーマザー)特別報告」という内部文書に、2021年の総選挙で自民党候補290人を応援したとの記述があったからです。高市首相自身の名前も32回登場しています。高市首相はこれらの疑惑についても口を継ぐんだままで、きちんと説明していません。 

 国民の生活苦は置き去りに 

 高市首相は国民の苦難について全く無頓着だという点でも抜きんでています。そもそも大変な生活苦に見舞われている最中に必要性が分からない解散を強行して予算の年度内成立を不可能にし、「政治空白」を生み出して物価高対策を先延ばししてしまいました。

 サナエノミクスと称して「責任ある積極財政」を打ち出している経済政策も、さらなる物価高を誘発して生活苦を増大する危険性を高めています。安倍元首相によるデフレ対策政策を継承していますが、物価高の下で円安によって輸入物価を上振れさせる恐れのある政策に合理性があるのでしょうか。

 物価高対策として各党が打ち出しているのが消費税の減税策です。高市首相も食料品の消費税を2年間ゼロにする政策を公約としました。しかし、「実現に向けた検討を加速する」と書かれているだけで、実施時期や財源については選挙後の「国民会議」に丸投げしています。生活苦を軽減することより、実施するポーズをとることで「争点つぶし」を狙っているのではないでしょうか。

 このような選挙目当てのバラマキ政策について常に問題になるのが財源です。高市首相が当てにしているのは国債の発行で、「責任なき放漫財政」による財政規律の放棄です。すでに、プライマリーバランス(PB)の単年度主義という枠を外しました。さらなる国債残高の増大によって財政への信頼が失われる恐れが高まるでしょう。

 高市政権によって、大企業への公的資金の投入という国家資本主義的政策、平和経済から軍事経済への転換なども進められようとしています。半導体企業のラピダスへの巨額の投資がなされていますが、昨年11月に設立された「日本成長戦略会議」でも半導体をはじめ、AIや造船業に加えて軍需産業など17分野への投資計画が打ち出されました。

 これに加えて、軍需産業の強化を目指す「防衛産業戦略」を、26年度中に策定する方向での調整も進められています。有事における弾薬の安定供給のために軍需企業を国有化して民間に委託しようというわけです。航空機や潜水艦など国内の軍需産業の基盤を強化するために「国営工廠」の設立がめざされ、軍需を基軸にした成長戦略によって、アメリカのような軍事経済への転換が始まっています。 

戦争準備に向けての暴走

 総選挙で問われるべきもう一つの大きな問題は戦争準備に向けての暴走です。これまでの自民党首相に比べて、高市首相による憲法の制約に対する軽視と軍事への傾斜は際立っています。

 これまでの自民党がかろうじて維持してきた「解釈改憲」路線はあっさりと放棄されてしまいました。高市首相は憲法の枠を踏み越え、安保3文書の改定によって「実質改憲」路線をさらに強めようとしています。

防衛費のGDP比2%への増額は今年度中(2026年3月まで)に達成され、さらに、3.5%から5%への増額がめざされることになるでしょう。「決して右傾化などではなく、普通の国になるだけだ」と高市首相は反論していますが、9条の制約によって平和主義を尊重する「特別の国」から、その枠をはみ出した「普通の国」への質的な転換です。これこそ「右傾化」そのものではありませんか。

9条の書き換えなき公然たる蹂躙であり、ひそやかな「クーデター」の最たるものです。集団的自衛権の一部行使容認によって専守防衛は放棄され、存立危機事態の認定によって先制攻撃の可能性が示唆されています。高市首相による「台湾有事」発言は、その危険性を暴露しました。

米軍とともに他国を攻撃するために、ミサイルや小型空母などの敵基地攻撃可能な長距離兵器の生産・取得・輸出に乗り出し、軍需産業を国有にして工廠の復活を図り、殺傷兵器輸出のために5類型を撤廃しようとしています。

さらに、原子力潜水艦保有の推進、「核抑止力」の強化のための非核3原則緩和による「持ち込み」、政府高官による核兵器の保有発言まで飛び出しました、まさに「地獄のフタが開いた」ような、軍事突出のオンパレードではありませんか。

 このようなハード面での戦争準備と歩調を合わせて、ソフト面での戦争準備も加速しています。これまでも特定秘密保護法や共謀罪法、経済安全保障推進法、能動的サイバー防御法などが制定されてきましたが、その総仕上げとして、「対外情報庁」(日本版CIA)の新設や「スパイ防止法」の制定が目論まれています。いずれも戦争に向けての世論の動員や反戦運動の取り締まり、思想統制などを目的としたものです。

 さらに、憲法9条2項の削除や緊急事態条項の新設に向けての「条文起草協議会」設置、国旗への棄損を罰する国章損壊罪の制定、国籍や土地取得への規制など外国人対応の強化、旧姓使用の法制化、男系天皇を維持するための皇室典範の改正、自衛隊の階級呼称の旧軍スタイルへの復帰などの動きもあります。いずれも、これまでなら考えられなかったような時代逆行であり、極右政策の一環にほかなりません。 

戦後憲法体制を覆す挑戦に審判を

  「内閣総理大臣としての進退をかける」、「高市早苗が内閣総理大臣でよいのかどうか、今、主権者たる国民の皆様に決めていただく」。

 こう述べて、高市首相は国民に対する選択を迫りました。「高市人気」を当てにしての挑戦状です。「重要政策の大転換」に対して、国民はどう答えるかが問われています。「イエス」か、それとも「ノー」か。

 高市首相の意図しているのは戦後憲法体制全体の転覆であり、クーデターそのものです。中曽根元首相がめざしていた「戦後政治の総決算」が、安倍元首相の「戦後レジームからの脱却」を経由して、高市首相による「新しい国の形」作りで完結しようとしています。

穏健保守層と決別し、憲法の制約をそれなりに意識してきた自民党から憲法を真正面から踏みにじろうとする自民党への変貌にほかなりません。「戦後憲法体制と民主主義の墓堀人」――それが高市首相の本質なのです。

戦後憲法体制を覆そうとする挑戦にきっぱりと審判を下しましょう。その「正体」を見抜き、固い決意を込めて高市首相に叩きつけようじゃありませんか、「白紙委任状」ではなく「絶縁状」を。                      (1月27日脱稿)