2014年12月17日水曜日


=総選挙の結果について=
総選挙で
最も議席を増やしたのは共産党だった

五十嵐 仁 
     (元法政大学教授)
安倍政権の「作戦勝ち」
 突然の解散・総選挙によって与党は絶対多数を維持し、「安倍一強体制」はさらに強まったかのように見えます。突然の解散で有権者が寝ぼけているうちに景気回復という美味しそうな餌を掲げて票をかっさらう。今回の総選挙は、このような安倍首相の「作戦勝ち」に終わったように見えますが、しかしそれだけでしょうか。
 景気回復に期待を寄せた人は自民党に、安倍首相につけあがって欲しくないと思った人は民主党や公明党に、きっぱりと「暴走」をストップさせてほしいと望んだ人は共産党に投票したように思われます。なかでも、暴走ストップを願う人は最も多く、比例代表で自民党の2倍以上も得票を増やして躍進したのは共産党でした。
 「亡国の政治」が加速
自民党は291議席となって解散前より2議席減らしましたが、4議席増で35議席となった公明党と合わせれば与党全体で326議席となり衆院の3分の2を超えました。安倍首相はこれまで進んできた「この道」が信任されたと強弁するにちがいありません。「暴走」する「バス」に「給油」するような結果となり、安倍首相による「亡国の政治」が加速される危険性が高まっています。
野党第1党の民主党は73議席になって11議席増やしましたが、当初予想されていたほどの議席回復にはなりませんでした。海江田代表は落選して議席を失い、辞任に追い込まれています。政権交代しても国民の期待を裏切り、政策の一致なき野合のような選挙協力に望みをかけ、自民党と対抗することも対案を提起することもできない民主党としては、当然の結果だったと言えます
前回の総選挙で躍進した「第三極」も振るいませんでした。維新の党は解散前から1議席減の41議席でしたが、前回総選挙での54議席獲得からすれば大きな後退です。みんなの党は分裂し、一部は結いの党を結成して日本維新の会と合流、残りは解散して渡辺喜美前代表は落選しました。維新の会から分かれた次世代の党は一挙に17議席も減らして2議席となり、同じく2議席にとどまった生活の党とともに存亡の危機を迎えています。
気を吐いた共産党 
このようななかで、一人気を吐いたのは共産党です。解散前の8議席から2倍以上の21議席となって躍進し、議案提案権も獲得しました。今度の総選挙で最も議席を増やしたのは共産党で、比例代表の得票数も237万票増と自民党の104万票増を2倍以上、上回っています。
消費税の10%への引き上げ中止を掲げて「安倍暴走政治」に真正面から対決しただけでなく、増税に頼らない別の道があるとして具体的な対案を掲げてきた実績が評価されたわけです。今後の「安倍一強体制」のもと、野党内での発言力が高まった共産党の役割はさらに大きなものとなるでしょう。
 しかも、沖縄の小選挙区での選挙協力に成功し、赤嶺候補の当選を実現させました。辺野古での新基地建設を許さないという「一点共闘」に基づく画期的な勝利です。今後、このような「沖縄方式」を広げていけば小選挙制の壁を突破できる展望を生み出した点でも、貴重な経験であったと言えるでしょう。
 「暴走」には厳しいしっぺ返し
今回の総選挙で安倍首相はアベノミクスによる景気回復の一点に争点を絞り、集団的自衛権行使容認、原発再稼働、TPP参加、改憲など他の重要政策課題については徹底した争点隠しに終始しました。自民党への投票は「アベノミクスで景気が良くなるなら、もう少し様子を見てみよう」というもので、一種の「執行猶予」による支持であったと思われます。
この先、景気が回復せず、消費不況や物価高で生活が苦しくなれば、この「猶予」はたちまち解除され、安倍首相には「実刑判決」が下されるにちがいありません。それを「白紙委任された」などと勘違いして、集団的自衛権行使容認の法改定や川内原発の再稼働などで新たな「暴走」を始めれば、その時には大きなしっぺ返しを食らうにちがいありません。すでに、自民党が全滅した沖縄の小選挙区では、そのような前例が生まれているのですから……。



0 件のコメント:

コメントを投稿