2013年10月1日火曜日

 ピースボート共同代表 吉岡達也さんに聞く
  9条世界会議・関西、
           そして東アジアの交流
 
  9条世界会議・関西2013が、1013日国際会議、14日本集会で大阪で開催される。共同代表の吉岡達也さん(ピースボート共同代表)にインタビューを行った。

9条世界会議・関西の意義
 今回は、関西の実行委員会の方々が中心となっての開催となった。紛争の平和的解決や侵略戦争の禁止など平和条項を持つ憲法は世界的に増えてきている。その先頭を走っているのが日本国憲法9条であり、そのことをもう一度再確認する意義が今回の9世界会議関西にはある。また、日本の中でもナショナリスティックな改憲勢力である維新の会が急成長した関西で、もう一度世界的視野で9条の存在意義を訴えるという意味もある。

海外ゲスト、アンライトさんなど
 海外ゲストは、元米軍の将校で、イラク戦争で「この戦争は正義の戦争ではない」との思いから平和活動に取り組むようになったアンライトさん、韓国きっての9条の専門家イ・キョンジュさん、アラブの春の発端となったチェニジアのベルハッセン・エヌーリさんなどが参加する。
また、国連の呼びかけで生まれ、世界各国から1000以上のNGOが参加している国際紛争予防ネットワークGPPAC(ピースボートが東北アジア事務局を務める)からも専門家や活動家を招いている。このGPPAC2005年にニューヨークの国連本部で国際会議を行っており、そこで、東北アジア地域における紛争予防メカニズムとしての9条の価値が評価されている。

東日本大震災、原発と9
重要なことは東北の震災と9条のかかわりだと思う。なぜ東北は震災からの復興が進まないのか、そもそも東北の社会が抱えていた問題は何なのか、を考えることで9条が見えてくる。日本の中央集権的な政治、経済の一極集中、急速な格差社会の進行、脆弱な防災体制など東北は震災前から深刻な社会問題を抱えていた。医療の崩壊状況などを見ても、いわゆる「人間の安全保障」が脅かされている状況だったと言える。まさに憲法前文で言うところの「恐怖と欠乏」に東北の人々は直面していた。それはすなわち9条の問題につながる。そしてダメ押しが福島第一原発の事故だ。原発推進の裏には核兵器がある。これはまさに9条の問題だ。脱原発を進め、再生可能エネルギーに転換していくことが9条的な社会の実現につながる。ピースボートは、災害ボランティアセンターを立ち上げ、東北の被災地にボランティア約6万人を送り、脱原発世界会議も行った。それは脱原発や災害救援活動は具体的な9条の実践でもあると考えたからだ。9条的視点で震災復興と原発問題にどう取り組むのか。それを議論することも311を経ての9条世界会議の意義だろう。
韓国500人、日本500人の9条クルーズ
1018日~27日、ピースボートと韓国のNPO「環境財団」が共催して、「9条クルーズ」と銘打ったピース&グリーンボートという船を出す。博多を出港し、釜山、基隆(台湾)、上海、那覇を回る。アンライトさん、鎌田慧さん、前田哲男さんなどが乗り込まれる。今年6回目で、去年は脱原発クルーズとして行った。韓国人500人、日本人500人の参加で、非常にユニークな船旅だ。日韓の違いと同質性が船の上に同居する。竹島(独島)の話もやる。韓国の人の主張もわかる。同じ釜の飯を食いながら過ごすことで自然と信頼関係が醸成される。
在日の若い人たちがボランティア通訳をかって出てくれているのだが、船内でバイリンガルの彼ら彼女らはちょっとしたスター扱いだ。日本社会では差別というマイナス面があるが、船の上では両方の文化をつなぎ合わせる重要な存在となる。そして彼ら彼女は日韓関係の未来を左右する大事な存在なんだということに気付く。

9条と暮らしの問題
9条とくらしの問題を切り離してはダメだと思う。戦争を殺し合いという点だけで考えていてもダメだと思う。戦争の前の段階で戦争に向かう状態がつくられていく。その過程でこそ具体的に9条を活かしていかなければならない。「戦争を起こさないために9条が必要」と言っても戦争にリアリティを持ってない若者は遠い話だ。格差社会に若者はみな怒っている。学校でのイジメに苦しんでいる若者もいる。不幸にして苦しい思いをしている人たちが、今度は逆に弱い人たちを差別していく、外国人排除していくという構図も生まれつつまるある。歴史で繰り返されてきた話だ。一方でそういった、今、苦しんでいる若者たちともっとかかわり、もう一方で国境を超え、アジアの隣人たちとともに日本社会を変えていく努力をすることで、本当の意味での9条社会が実現するのではないだろうか。

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